第II部 国土交通行政の動向 

1 犯罪・テロ対策等の推進

(1)各国との連携による危機管理・安全保障対策

1)国際交通セキュリティ大臣会合
 平成13年9月の米国同時多発テロ以降、G8やAPEC等の国際的な枠組みにおいてテロと闘うための政治的な意志が繰り返し確認され、交通分野では、国際民間航空機関(ICAO)及びIMOを通じてセキュリティ強化のための措置が講じられてきた。しかしながら、テロの脅威は依然として存在しており、国際交通セキュリティを確保するためには、より積極的で広範囲にわたる国際的な協調が重要である。このような問題意識に基づき、我が国は、18年1月、東京において、主要国の交通セキュリティ担当大臣が一同に会する世界初の大臣会合である「国際交通セキュリティ大臣会合」を開催した。この大臣会合には、G8諸国、中国、韓国、シンガポール、インドネシア、マレーシア、オーストラリア、EC(欧州委員会)、IMO、ICAO及びWCO(世界税関機構)が参加し、海事、航空、陸上交通の各分野について「依然残るテロに対する脆弱性の克服」、「途上国等におけるテロ対策能力向上のための支援」、「セキュリティの強化と円滑な交通の両立」の課題について議論し、具体的な方向性を大臣声明として取りまとめ、また、各分野共通の事項について大臣宣言を発出し、テロとの闘いを継続する強い政治的メッセージを発信した。今後は、会合の成果をIMO、ICAO、G8、APEC等の国際的枠組みにおける議論に反映させていく予定である。

2)安全かつ容易な海外渡航イニシアティヴ(SAFTI)への取組み
 平成16年6月のG8シーアイランドサミットにおいて交通セキュリティ等の具体的な施策を行動計画として取りまとめた「安全かつ容易な海外渡航イニシアティヴ(SAFTI)」について、国土交通省はその策定段階から積極的に対応しており、航空保安の優良な取組事例集の作成等その実施に取り組んでいる。

3)海賊対策
 海上輸送路を東南アジア周辺海域に大きく依存している我が国にとって、その安全を図ることは重要な課題である。国土交通省及び海上保安庁では、平成12年に海賊対策国際会議において採択された「海賊対策モデルアクションプラン」、「アジア海賊対策チャレンジ2000」等に基づき、毎年、東南アジア周辺諸国へ巡視船・航空機を派遣し、連携訓練等を行い、沿岸国海上保安機関に対する人材育成、技術供与等の協力を行うなど、各国との連携・協力に努めている。
 また、日本関係船舶における効果的な自主警備対策の推進、緊急情報伝達体制の整備等を図っているほか、関係省庁及び民間関係者からなる連絡会議の開催を通じ、我が国全体としての取組みを一体的に推進している。最近では、平成17年3月に日本籍タグボートの乗組員誘拐事件が発生したこと等を受け、同年4月、「海賊・海上武装強盗対策推進会議」を設置し、7月の第3回会議において、これまでの対策の検証及び今後の対策の検討について中間とりまとめを行い、日本籍船以外の日本関係船舶(注)についても船舶警報通報装置による海上保安庁への通報を促すこととするなど、更なる対策の推進を図っている。

 
図表II-6-3-1 日本関係船舶に係る海賊及び船舶に対する武装強盗事件等発生地点(2004年)

2004年の日本関係船舶にかかる海賊及び船舶に対する武装強盗事件等の発生場所は、インドネシア、シンガポール、マレーシア、ブルネイ沿岸となっている。

 
図表II-6-3-2 最近の海賊及び船舶に対する武装強盗事件等の発生状況

海賊及び船舶に対する武装強盗事件の発生状況については、2004年は昨年よりも120件ほど少ない330件となっている。発生は東アジアで最も多く、年間173件となっており、インド洋、アフリカ、中南米では約40件から約70件である。
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4)海上におけるテロ対策・大量破壊兵器等の不拡散への取組み
 国際社会の平和と安定に対する深刻な脅威となっている大量破壊兵器、その運搬手段及びそれらの関連物資の拡散を阻止することを目的とする「拡散に対する安全保障構想」(PSI)は、参加国が単独で又は連携して、各国国内法及び国際法の枠組みの下で拡散阻止のための措置を検討する国際的な取組みであり、我が国もPSIの中核を担うコア・グループ国の一員として参加している。海上保安庁は、PSIの関係会合への出席や海上阻止訓練に巡視船や職員を派遣しているほか、ASEAN各国の海上法執行機関に対するアウトリーチ活動(連携の拡大に向けた働きかけ)を実施するなど、PSIに積極的に貢献している。
 また、平成17年8月には、シンガポール主催のPSI海上合同阻止訓練に巡視船「しきしま」を派遣し、各国と連携して大量破壊兵器等の拡散に関係する容疑船の取締り能力の維持向上を図った。さらに、IMOにおいてSUA条約(海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約)を改正し、船舶へのテロ行為に加え、船舶を利用した大量破壊兵器等の輸送を始めとするテロ関連行為を犯罪化し、当該犯罪に関連した公海上における乗船等に関する手続が定められたことから、同改正にのっとりテロ対策・大量破壊兵器等の不拡散への取組みの強化を図ることとしている。


(注)日本の船社が運航する外国船舶

 

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