第II部 国土交通行政の動向 

(3)海上保安体制の強化

1)巡視船艇・航空機等の緊急整備
 老朽・旧式化が進んだ巡視船艇・航空機の緊急かつ計画的な整備・高性能化を図るとともに、しょう戒等による情報を一元的に集約し分析・評価等を行うシステムの構築等を進め、巡視勢力の効率的・機動的な運用を図ることとしている。

2)テロ対策
 海上保安庁では、海上におけるテロの未然防止措置として、臨海部の米軍施設、原子力発電所、石油備蓄基地、液化天然ガス(LNG)・液化石油ガス(LPG)基地等の重要施設に対する巡視船艇・航空機による警備を強化している。特に原子力発電所の警備においては、関係事業者、警察等との連携を強化し、現場において情報交換を行うとともに事案発生時に的確に対応できるよう共同訓練等を実施している。また、繁忙期に国内の主要航路を航行する旅客船等への海上保安官による警乗等を実施するとともに、海賊対策のため東南アジア周辺海域に派遣している巡視船・航空機によるテロにも備えたしょう戒を実施し、我が国関係船舶の安全確保を図っている。
 さらに、高性能化により対応能力の強化を図った巡視船艇・航空機、装備・資器材の整備を推進するとともに、関係機関との連携を強化し、テロ対策に万全を期している。

3)不審船・工作船対策
 不審船・工作船は、我が国領域内における重大凶悪な犯罪に関与している疑いがあり、その目的や活動内容を明らかにするためには、確実に不審船を停船させて立入検査を実施し、犯罪がある場合の犯人逮捕等適切な犯罪捜査を行う必要がある。このため、不審船・工作船への対応は、関係省庁と連携しつつ、警察機関である海上保安庁が第一に対処することとなっている。
 海上保安庁では、これまでの不審船・工作船事案を踏まえ、立入検査を目的として不審船を停止させる際に行う射撃について、人に危害を与えたとしても違法性が阻却されるよう「海上保安庁法」を改正した上で、巡視船艇・航空機の防弾化や、より遠距離から確実に不審船に対応できる武器の整備、荒天下でも迅速に展開できる高速高機能巡視船の整備等を図っている。また、防衛庁との間で作成した共同対処マニュアルに基づき、早期の情報共有や、自衛隊との間で不審船対処に係る共同訓練を実施している。

 

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