第II部 国土交通行政の動向 

(5)海上犯罪対策の推進

1)国際組織犯罪対策への取組み
 国内における薬物・銃器犯罪、来日外国人による強盗やピッキング用具を使用した侵入等の多発は、国際犯罪組織が関与する密輸・密航事犯がその背景にあると考えられるため、国際組織犯罪の取締体制や洋上、港湾等における監視取締体制の強化による水際での阻止が重要である。
 政府においては、「犯罪対策閣僚会議」等により対策を講じてきたところであり、海上保安庁においても、犯罪情報の収集・分析、監視能力等を向上させた巡視船艇・航空機及び増員された取締要員による監視取締りを実施するとともに、警察、税関等の関係取締機関との情報交換、外国船舶に対する立入検査等を強化している。さらに中国、フィリピン、ロシア等の海上保安機関、薬物取締機関等と情報交換、定期協議及び海上取締合同訓練を積極的に実施し、効果的な密輸・密航対策を講じている。

2)悪質密漁事犯の根絶
 最近の国内密漁事犯は、暴力団関係者の関与や供用船舶の高性能化により、悪質・巧妙化の一途をたどっており、貴重な水産資源の枯渇を招くのみならず、莫大な犯罪収益が暴力団等の資金源となっている。そのため、関係機関等と連携協力して、その根絶に向け厳正に対処しており、全国各地において大規模な密漁事犯を多数摘発している。
 また、外国漁船による我が国領海及び排他的経済水域における違法操業は、我が国がその貴重な水産資源を枯渇から守るために設定した漁業秩序を著しく乱す行為であり、厳正な対処が必要である。近年では違法操業を行う外国漁船が高速・高性能化していることから、高性能化を図った巡視船艇・航空機の整備や取締装備の充実等を図りつつ、国内外の関係機関とも連携した監視・取締りを実施している。

3)悪質海上環境事犯の根絶
 近年は、海洋環境保全をめぐる動きが活発になってきている反面、廃棄物等の陸上処理場のひっ迫や、汚水等の処理費用の負担を逃れようとする者が後を絶たないことから、海域への廃棄物不法投棄、汚水の不法排出等の海上環境事犯が続発している。
 また、大企業の法令遵守が社会全体から改めて問われている中、海上環境事犯分野においても大手鉄鋼企業によるシアン化合物等の汚水排出事案等が発生しており、国民の生活環境悪化の防止に万全を期すため、なお一層関係機関等と連携協力して悪質事業者等に係る情報共有体制を構築するとともに、監視取締体制の効率化・強化を図ることとしている。

 

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