第2節 地域活性化を支える施策の推進 

3 地域特性を活かしたまちづくり・基盤整備

(1)民間投資誘発効果の高い都市計画道路の緊急整備
 市街地における都市計画道路の整備は、沿道の建替え等を誘発することで、都市再生に大きな役割を果たしている。このため、残りわずかな用地買収が事業進捗の隘路となっている路線のうち、地方公共団体(事業主体)が一定期間内の完了を公表した路線(完了期間宣言路線(平成20年4月1日現在113事業主体336路線))を国として重点的に支援し、事業効果の早期発現を図るとともに、適切な事業進捗管理に努めている。

(2)交通結節点の整備
 鉄道駅やバスターミナル等の交通結節点は、様々な交通施設が集中し、大勢の人が集まるため、都市再生の核として高い利便性と可能性を有する。このため、交通結節点改善事業や都市交通システム整備事業、鉄道駅総合改善事業等を活用し、交通機関相互の乗換利便性の向上や鉄道等により分断された市街地の一体化、駅機能の改善等を実施し、都市交通の円滑化や交通拠点としての機能強化等を図っている。平成20年度においては、交通結節点改善事業は高岡駅地区(富山県)等約150箇所、都市交通システム整備事業は大塚駅地区(東京都)等約40箇所、鉄道駅総合改善事業は京急蒲田駅(東京都)等6箇所で実施している。また、道路・都市事業と鉄道事業を同時採択し、鉄道駅及び駅周辺の効率的な整備を図る駅・まち一体改善事業を、野方駅(東京都)等3箇所で実施している。さらに、地方公共団体や鉄道事業者等で構成する協議会が策定した施設全体の最適計画に基づく事業に助成して、効率的な事業の実施を図る駅まち協働事業を三宮駅前南地区(神戸市)で実施しており、阪神三宮駅の駅施設利用円滑化事業と併せ、一体的整備を図っている。
 
図表II-3-2-3 交通結節点改善事業の例(高岡駅地区)

図表II-3-2-3 交通結節点改善事業の例(高岡駅地区)

(3)踏切対策の推進
 都市部を中心とした「開かずの踏切」(注1)等は、踏切事故や慢性的な交通渋滞等の原因となり、早急な対策が求められている。こうした状況の中、道路管理者及び鉄道事業者の協力の下、平成18年度に全国の踏切を対象に踏切交通実態総点検を実施し、「開かずの踏切」等の緊急に対策が必要な踏切約2,000箇所を抽出した。この結果を踏まえ、踏切を除却する連続立体交差事業等と踏切の安全性向上を図る歩道拡幅等を緊急かつ重点的に推進している。

(4)企業立地を呼び込む広域的な基盤整備等
 各地域が国際競争力の高い成長型産業を呼び込み集積させることは、東アジアとの競争・連携及び地域活性化の観点から大きな効果がある。このため、空港、港湾、鉄道や広域的な高速道路ネットワーク等、地域の特色ある取組みのために真に必要なインフラへ集中投資を行い、地域の雇用拡大・経済の活性化を支える施策を推進している。
1)空港の機能高質化
 国内外の各地を結ぶ航空ネットワークは、地域における観光振興や企業の経済活動を支え、地域活性化に大きな効果がある。特に、近年は、国際分業の進展等による経済のグローバル化に伴い、速達性に優れる航空輸送の重要性が高まってきており、貨物エプロンの拡充等による空港の機能高質化を進めている。
2)港湾整備
 近年、バルク貨物(注2)輸送における船舶の大型化の進展、物流における高機能化ニーズの増加、臨海部における企業立地の増加が進展している。このため、大型の貨物船が着岸可能な多目的国際ターミナルの整備や、バルク貨物等の輸送効率化を促進する「臨海部産業エリア」の形成等により、企業のニーズに応じた港湾機能の向上と臨海部産業の活性化、企業の立地促進を一体的に推進している。
3)鉄道整備
 全国に張り巡らされた幹線鉄道網は、旅客・貨物輸送の大動脈としてブロック間・地域間の交流を促進し、産業立地を促し、地域経済を活性化させ、地域のくらしに活力を与えている。特に、鉄道貨物輸送は、地域経済を支える産業物資等の輸送に大きな役割を果たしているが、近年、大規模工場の地方進出等に際しての輸送手段として選択されるケースが出てきており、地域への企業立地等においてもその役割を果たしているところである。
4)道路整備
 物流効率化、輸送利便性等の観点から、新規に立地する工場の約8割以上が高速道路のICから10km以内に立地しており、迅速かつ円滑な物流の実現等により国際競争力を強化するとともに、地域の自立と産業の振興を図るため、高規格幹線道路や地域高規格道路等の幹線道路ネットワークの形成を進めている。

(5)地域に密着した各種事業・制度の推進
1)道の駅
 「道の駅」は道路の沿線にあり、駐車場、トイレ等の「休憩機能」、道路情報や地域情報の「情報発信機能」、地域と道路利用者や地域間の交流を促進する「地域の連携機能」の3つを併せ持つ施設で、平成21年1月現在887箇所が登録されている。また、災害発生時の復旧活動拠点や避難所等、防災拠点としての機能も付加されるように促進している。
 
図表II-3-2-4 「道の駅」登録数の推移

図表II-3-2-4 「道の駅」登録数の推移
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2)かわまちづくりの推進
 河川や水辺をまちづくり・観光の核として活用し、地域の魅力向上を目指す市町村等に対し、まちづくりと一体となった親水空間の整備等のハード面及び規制緩和等のソフト面の両面から支援・推進を行っている。
3)地域住民の参加による地域特性に応じた河川管理
 河川環境について専門的知識を有し、豊かな川づくりに熱意を持った人を河川環境保全モニターとして委嘱し、河川環境の保全・創出、秩序ある利用のための業務や普及啓発活動をきめ細かく行っている。また、河川に接する機会が多く、河川愛護に関心を有する人を河川愛護モニターとして委嘱し、河川へのゴミの不法投棄や河川施設の異常の発見等、河川管理に関する情報の収集や河川愛護思想の普及啓発に努めている。さらに、河川の清掃、草刈等を行うボランティア団体や地域住民に、河川敷を花壇等として開放し、地域に根ざした親しみある水辺空間の形成を図るラブリバー制度を推進している。このほか、市民参加型の河川管理として、河川の特定区間について住民と協定等を結び、清掃・除草等の管理を住民、自治体及び河川管理者が協働で河川環境管理を実施している。
4)海岸における地域の特色を活かした取組みへの支援
 海岸利用を活性化し、観光資源としての魅力を向上させることを目的とし、広域的な一連の海岸を対象として、多様な関係者が協働して行う計画の策定とこの計画に基づいた海岸保全施設や海岸利用者向けの利便施設の整備ができるよう、平成20年度に海岸環境整備事業を拡充した。
5)港湾を核とした地域振興
 みなとの振興を通じ、港湾所在市町村における地域活性化に向けた取組みを推進するため、「みなと振興交付金」による支援をしており、平成20年度末現在、37プロジェクト(41港湾)の「みなと振興計画」を認定している。また、20年度より「住民参加型まちづくりファンド」のみなとづくりへの活用を図り、NPO等の市民団体が行うみなとづくり活動に対して支援を行っている。さらに、みなとや海岸の施設を地域の情報発信拠点として、また地域の方々や観光客等の交流拠点として活用する「みなとオアシス制度」の全国展開を推進しており、20年度末現在、46港が登録されている。加えて、水辺のにぎわい空間づくりや水上ネットワークの構築等、地域の人々にとって身近な水面である運河を活用することにより、地域の観光振興や防災機能の強化等を図り、運河を核とした魅力ある地域づくりへの取組みを支援する「運河の魅力再発見プロジェクト」を推進しており、20年度末現在、10件のプロジェクトを認定している。このほか、国内外のクルーズ船の寄港促進や海辺での里浜づくり等による地域振興を図っている。
 
図表II-3-2-5 みなとオアシス全国マップ

図表II-3-2-5 みなとオアシス全国マップ

6)マリンレジャーの拠点づくり
 マリンレジャーや地域活性化の拠点となっている「海の駅」では、マリンイベント、漁業体験、朝市等、地域の特性を生かした取組みを実施している。また、水産庁と連携してプレジャーボートの漁港利用について検討しており、適正な利用環境の整備を進め、マリンレジャーを核とした地域活性化を図り、拠点のネットワーク化を推進している。

(6)地籍整備の積極的推進
 一筆ごとの土地の境界等を調査する地籍調査は、特に都市部の進捗が遅れていることから、都市部のうち重要な地域において街区外周に関する基礎的データを整備する土地活用促進調査を行うなど、地籍整備の積極的な推進を図っている。

(7)大深度地下の利用
 「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」に基づく三大都市圏での公共性の高い事業の円滑な実施のため、環境、安全等についての技術的課題に関する検討や大深度地下情報システムの整備等の利用環境の整備を進めている。

(8)地域コミュニティによるエリアマネジメントの構築
 住民等による地域の良好な環境や地域の価値を維持・向上させる主体的な取組み(エリアマネジメント)を推進するため、意欲ある団体へのステップアップ支援等を実施するとともに、平成20年3月に「エリアマネジメント推進マニュアル」を策定し、公表した。また、土地の有効利用及び適正な地価形成の観点から、企業用地や公共用地の合理的なマネジメントの普及・促進を行い、地域の活性化を推進している。


(注1)電車の運行本数が多い時間帯において、遮断時間が40分/時以上となる踏切
(注2)包装・梱包せずにそのまま船艙内に積み込み輸送する貨物の総称

 

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