第4節 産業の活性化 

第4節 産業の活性化

1 鉄道関連産業の動向と施策

(1)鉄道事業
1)鉄道事業の動向と施策
 平成19年度の鉄道旅客の輸送人員は、少子高齢化の進展等厳しい事業環境にあるが、前年度に引き続き微増である。JRは、新幹線輸送が増加し、在来線における通学旅客は減少しているものの、通勤旅客と定期外旅客が増加していることから、JR全体として増加している。また、民鉄も、特に関東において、通勤・通学旅客や定期外旅客が増加していることから、民鉄全体として増加している。
 19年度の鉄道貨物の輸送トン数については、自動車部品等の輸送が好調に推移したものの、7月に発生した新潟県中越沖地震等の輸送障害により、コンテナ貨物の輸送量は前年度に比べ僅かな増加にとどまった。また、石油等の輸送量の減少により、車扱の輸送量は前年度に比べ減少し、全体としては、前年度を下回っている。
 各鉄道事業者は、快適で安心な車内空間の確保を図っており、例えば、都市圏の主要鉄道事業者が行っている女性等に配慮した車両の導入も着実に定着しつつある。また、IC乗車券については、19年に首都圏の公営・民鉄事業者等において「PASMO」が導入され、同時にJR東日本「Suica」と相互利用が開始されたが、20年3月には「Suica」とJR西日本「ICOCA」、JR東海「TOICA」との相互利用が可能となるなど、今後も全国各地でIC乗車券の導入・相互利用化が計画されている。
2)JRの完全民営化に向けた取組み
 昭和62年4月の国鉄の分割・民営化により設立されたJR各社は、以来21年余りにわたり、それぞれの地域、特質等を踏まえた経営努力を続けてきた。この間、JR東日本、JR東海及びJR西日本は、(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構の保有株式の売却も完了し、完全民営化されたが、国鉄改革の経緯を踏まえ、当分の間、国鉄改革の趣旨を踏まえた事業運営を確保するための措置がとられている。一方、JR北海道、JR四国、JR九州及びJR貨物については、地域の足の確保や環境負荷の小さい鉄道貨物輸送の推進等社会的に重要な役割を担っていることから、国は引き続き固定資産税の軽減措置等支援措置の延長により経営基盤の安定・強化を図っており、各社においても完全民営化に向けた増収努力や経費節減等の取組みを行っている。

(2)鉄道車両工業
 鉄道車両の売上高は、国内は、車両更新が増加したため平成17年度より増加傾向にあり、海外輸出は、アジア及び欧州への高速鉄道や都市交通を中心に世界的には増加傾向だが、17年度をピークに減少傾向にあり、全体ではほぼ横ばい傾向が続いている(19年度の新造車両数2,728両、売上高2,068億円(うち、16%が海外売上))。
 車両メーカー等は、鉄道事業者と連携し、高速化、安全性・快適性等の向上、低騒音・バリアフリーといった様々な社会的ニーズを満たす車両の開発を進めているほか、基本設計や部品を共通化した「通勤・近郊電車の標準仕様ガイドライン」を作成し、設計作業の省力化、標準品の普及等を図ることにより、コスト低減に取り組んでいる。また、近年の標準的な都市型車両の仕様を参考に、海外向けの都市鉄道システム規格を示した「STRASYA」が作成され、今後の鉄道システムの輸出に活用される予定である。

 

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