第4節 交通分野における安全対策の強化 

4 航空交通における安全対策

(1)航空の安全対策の強化
 我が国の特定本邦航空運送事業者(注)においては、乗客の死亡事故は昭和61年以降発生していないが、安全上のトラブルが続発した状況を受けて、平成18年10月より航空会社に安全管理体制の構築及び安全上のトラブルの報告を義務付けるとともに、航空会社に対する監査体制を強化し、抜打ちを含む厳正な監査を実施している。今後は、安全上のトラブルの発生原因や傾向を分析するシステムを活用し、予防的安全対策を更に推進することとしている。加えて、我が国に乗り入れる外国航空機に対しても、我が国の空港における立入検査等、監視を強化しており、国産旅客機開発プロジェクトに対しても製造国政府としての安全性の審査を適切かつ迅速に実施することとしている。
 
図表II-6-4-4 国内航空会社の事故件数及び発生率

図表II-6-4-4 国内航空会社の事故件数及び発生率
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(2)安全かつ円滑な航空交通のための航空保安システムの構築
 大都市圏拠点空港等の整備の進捗と周辺諸国の経済発展により、日本上空の航空交通量は増加していく見込みである。このような中、安全確保を最優先としつつ、円滑かつ効率的な運航を図るため、主に以下の取組みを実施している。
1)広域航法(RNAV)導入の促進
 平成19年9月より国際民間航空機関(ICAO)の基準に準じたRNAVを順次、主要な空港や航空路に導入している。引き続き、RNAV経路の設定を促進し、飛行経路の複々線化による容量の拡大、経路短縮による飛行時間や燃料費の削減、運航条件改善等による空港就航率の更なる向上を図っている。
 
図表II-6-4-5 RNAV(広域航法)

図表II-6-4-5 RNAV(広域航法)

2)航空交通管理(ATM)機能高度化
 シミュレーションを用いた空域・経路構成の評価や再設計により空域構成の最適化を図るとともに、自衛隊等の訓練試験空域等への民間機の通過等空域の柔軟な利用を進めている。加えて、交通流や交通量の予測や制御精度の向上等、ATMセンターの機能を充実・強化し、きめ細かな交通整理を行うことで全国の航空路の混雑緩和や空中待機の減少を図っている。
3)滑走路誤進入対策の推進
 滑走路誤進入事案の再発を防止するため、管制指示に対するパイロットの復唱のルール化等管制官とパイロットのコミュニケーションの齟齬の防止や、滑走路占有状態等を管制官やパイロットへ視覚的に表示・伝達するシステムの整備等ソフト・ハード両面にわたる対策を推進している。


(注)客席数が100又は最大離陸重量が5万キログラムを超える航空機を使用して航空運送事業を経営する本邦航空運送事業者のこと

 

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