第4節 交通分野における安全対策の強化 

6 道路交通における安全対策

 平成20年の交通事故死者数は、8年連続の減少となっているが、依然として国民の約100人に1人が交通事故で死傷しているなど、道路交通安全を取り巻く状況は厳しい。このため、道路の特性に応じた交通事故対策を進めることとして、事故の発生割合の高い区間における重点的な対策、通学路における歩行空間の整備、自転車利用環境の整備等を推進している。
 
図表II-6-4-6 交通事故件数及び死傷者数等の推移

図表II-6-4-6 交通事故件数及び死傷者数等の推移
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(1)幹線道路と生活道路における交通事故対策の重点的実施
 幹線道路については、事故が特定の区間に集中していることから、地域の方々の意見も聞きながら、「事故危険箇所」を含め、事故の発生割合の高い区間において重点的に事業を実施している。
 生活道路については、人優先の安全・安心な歩行空間を形成するため、「あんしん歩行エリア」や「くらしのみちゾーン」を含め、小学校等に通う多くの児童が利用するなど、事故の危険性の高い通学路等において重点的に事業を実施している。

(2)安全・安心で計画的な道路管理
 今後、高度経済成長期に集中して建設された多くの橋梁等、高齢化した道路ストックが急増し、重大な損傷発生の危険性が高まることが懸念される。このため、高速道路から市町村道までの道路橋について定期点検に基づく「早期発見・早期補修の予防保全」を計画的に実施して長寿命化を実現し、安全・安心な通行を長期にわたり確保する。
 
図表II-6-4-7 建設後50年以上の橋梁の割合

図表II-6-4-7 建設後50年以上の橋梁の割合
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 また、地方公共団体では、約7割の市区町村が、技術、資金の不足等の問題により定期的な点検が実施できていない。この状況を解消するため、点検の責務及び技術基準の明示や財政支援等の措置を講じていく。

(3)自動車の総合的な安全対策
1)事業用自動車の安全対策
 事業用自動車の交通事故件数(軽貨物を除く)は年間約5万7千件(平成19年)であり、減少が見られるものの未だその歩みは鈍く、交通事故防止が重要な課題となっている。このような状況を改善するため、中小規模事業者に対する安全マネジメント制度の浸透や、運行管理者の指導・監督能力の向上、監査の強化等を含む総合的な安全対策について検討を行った。
2)今後の車両安全対策の検討
 平成18年6月の交通政策審議会報告書において、22年までに死者数を2,000人削減(対11年比)、負傷者数を25,000人削減(対17年比)することが目標に掲げられた。これを踏まえ、これまで進めてきた衝突後被害軽減対策に加え、予防安全対策の普及・拡大を図ることとしている。
3)安全基準の拡充・強化
 平成19年12月には、呼気吹き込み式のアルコール・インターロック装置(注1)について技術指針(案)を、20年3月には、イベントデータレコーダ(EDR)(注2)について技術要件を策定した。また、予防安全技術の効果評価に関して、ドライブレコーダ(注3)の活用方策を検討している。
4)自動車アセスメントによる安全情報の提供
 自動車とチャイルドシートに関する安全性能の評価結果を公表し、ユーザーの安全な自動車等の選択や製作者のより安全な自動車の開発を促進している。平成12年度から19年度の間に自動車163車種、チャイルドシート90種類の評価結果を提供することにより、自動車等の安全性能向上に貢献している。
5)先進安全自動車(ASV)の開発・実用化・普及の促進
 ASVの開発・実用化・普及を促進すべく、平成18年度から産学官の協力体制で第4期ASV推進計画を進めており、20年度においては通信利用型安全運転支援システムの大規模実証実験を行った。また、19年度から大型車用衝突被害軽減ブレーキに対する補助を行っている。
 
図表II-6-4-8 大型衝突被害軽減ブレーキの作動例

図表II-6-4-8 大型衝突被害軽減ブレーキの作動例

6)リコール制度の充実・強化について
 自動車メーカーによるリコールに係る不正行為の発覚を受け、平成16年度に再発防止対策を取りまとめ、情報収集体制、監査体制及び技術的検証体制を順次強化してきており、20年度も引き続きリコール制度の着実な運用に努めている。また、学識経験者や自動車ユーザー等が参画するリコール検討会を開催し、必要に応じて制度や運用の改善を検討している。
7)自動車検査の高度化
 不正な二次架装(注4)の防止やリコールにつながる車両不具合の早期抽出等を図るため、ICT化された自動車検査情報の活用等による自動車検査の高度化を進めている。

(4)自動車損害賠償保障制度による被害者保護
 自動車損害賠償保障制度は、自賠責保険、政府の保障事業、被害者救済対策事業等により交通事故被害者の保護に大きな役割を担っており、被害者保護充実のため、保険会社に対し、被害者等への保険金支払いに係る情報提供を義務付けるなど支払適正化の措置を講じている。


(注1)飲酒状態の有無を判断し、飲酒状態にある場合にはエンジンを始動させないようにする装置
(注2)衝突事故時の車両の安全装置の作動状況を記録する装置
(注3)事故や急ブレーキ作動時の車両の状態を映像及び減速度等のデータで記録する装置
(注4)自動車の一部部品を取り付けない又は取り外した状態で新規検査を受検し、自動車検査証の交付を受けた後に、当該部品を取り付けて使用者に納車する行為

 

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