第4節 産業の活性化
1 鉄道関連産業の動向と施策
(1)鉄道事業
1)鉄道事業の動向と施策
平成20年度の鉄道旅客の輸送人員は、景気低迷や少子高齢化の進展等厳しい事業環境にあるが、前年度に引き続き微増である。JRは、新幹線輸送、在来線輸送ともに減少している。また、民鉄は、特に関東において、通勤・通学旅客や定期外旅客が増加していることから、民鉄全体として増加している。
20年度の鉄道貨物の輸送量については、8〜9月にかけて集中豪雨等による輸送障害が発生したものの、上期はコンテナ貨物輸送量が過去最高になるなど比較的順調に推移した。しかし、下期は景気後退等の影響を受け、全体の輸送トン数及びトンキロは減少した。車扱貨物輸送については、燃料転換の進展に伴う石油の減送等が生じた。
各鉄道事業者においては、快適で安心な鉄道空間の確保を図っており、例えば、主に都市圏の鉄道事業者が行っている女性等に配慮した車両の導入も着実に定着しつつある。また、13年のJR東日本「Suica」導入を契機として、各地でICカード乗車券の導入・相互利用化等が進んでおり、21年には札幌市交通局で「SAPICA」、土佐電気軌道で「ですか」、JR九州で「SUGOCA」、福岡市交通局で「はやかけん」が導入されるなど、全国に拡大している。今後とも、ICカード乗車券の導入・相互利用化が計画されており、さらなる利用者利便の向上が期待される。
2)JRの完全民営化に向けた取組み
昭和62年4月の国鉄の分割・民営化により設立されたJR各社は、以来22年余りにわたり、それぞれの地域、特質等を踏まえた経営努力を続けてきた。この間、JR東日本、JR東海及びJR西日本は、(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構の保有株式の売却も完了し、完全民営化されたが、国鉄改革の経緯を踏まえ、当分の間、国鉄改革の趣旨を踏まえた事業運営を確保するための措置がとられている。
一方、JR北海道、JR四国、JR九州及びJR貨物については、地域の足の確保や環境負荷の小さい鉄道貨物輸送の推進等社会的に重要な役割を担っていることから、国は引き続き固定資産税の軽減措置等支援措置の延長により経営基盤の安定・強化を図っており、各社においても完全民営化に向けた増収努力や経費節減等の取組みを行っている。
(2)鉄道車両工業
鉄道車両の売上高は、その年の受注状況によって波はあるが、近年、ほぼ横ばい傾向が続いている(平成20年度の新造車両数2,232両、売上高2,089億円)。
20年度の国内向けは減少傾向にあり(19年度比79%)、また、海外輸出は、アジア向けは増加傾向、欧州向けは減少傾向にあり、全体としては減少傾向にある(19年度比94%)。
車両メーカー等は、鉄道事業者と連携し、高速化、安全性・快適性等の向上、低騒音・バリアフリーといった様々な社会的ニーズを満たす車両の開発を進めているほか、基本設計や部品を共通化した「通勤・近郊電車の標準仕様ガイドライン」を参考に、設計作業の省力化、標準品の普及等を図ることにより、コスト低減に取り組んでいる。また、近年の標準的な都市型車両の仕様を参考に、海外向けの都市鉄道システム規格を示した「STRASYA」が作成され、今後の鉄道システムの輸出に活用される予定である。