第2節 国際標準への取組み
(1)自動車基準・認証制度の国際調和
安全で環境性能の高い自動車を早期・安価に普及させるため、我が国は国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム(UNECE/WP29)等に積極的に参加し、安全・環境基準の国際調和を推進するとともに、その活動を通じ、日本の新技術を国際的に普及させていくための積極的な提案を行っている。また、こうした活動にアジア諸国の参加促進を支援していくことも非常に重要であり、平成22年11月に第8回日ASEAN交通大臣会合で承認された日ASEAN自動車基準・認証制度に関する協力プログラムや23年1月に東京で開催された自動車の安全性及び環境性能の向上に関する官民フォーラム等の枠組みを通じ、アジア諸国との連携を一層強化していくこととしている。
国際調和の推進は、政府の「新成長戦略」及び国土交通省成長戦略においても成長戦略の一つとして位置付けられており、22年11月には、官民で構成する「第1回自動車基準認証国際化ハイレベル会議」を開催した。今後、電気自動車を始めとする革新的自動車技術に関連する基準や車両型式認証相互承認制度等の国際的な取組みに関し行動計画を策定することとしている。
(2)鉄道に関する国際規格への取組み
鉄道の国際規格については、我が国の優れた技術・規格の国際標準化により、我が国鉄道技術の海外展開が促進されるだけでなく、反対に国際標準化が得られなければ、既存の国内規格が淘汰される可能性があるなど、鉄道業界全体に大きな影響を与えるものであるため、戦略的対応が必要である。このため、「鉄道技術標準化調査検討会」が取りまとめた「鉄道技術標準化ビジネスプラン」に基づき、鉄道技術に関する学識経験者や鉄道関係産業と協力して、鉄道の国際規格戦略の検討や国際規格に関連する国内規程制定の検討等、積極的な活動を行った。また、規格の国内審議、鉄道技術の国際標準化活動を一元的に行うため、平成22年4月に(財)鉄道総合技術研究所に鉄道国際規格センターが設立され、活動を開始している。
(3)船舶や船員に関する国際基準への取組み
国際的な海上運送事業は、様々な国籍の船舶・船員で営まれており、安全や環境保護に関する国際的な統一ルールに従い、適正かつ公平な競争条件の下で営まれる必要がある。このため、我が国はSOLAS条約注1、MARPOL条約注2、STCW条約注3等の船舶や船員に関する条約等による国際基準の策定作業に貢献している。
(4)土木・建築基準及び認証制度の国際調和
近年、市場の国際化が進展している土木・建築・住宅分野における外国建材の性能認定や評価機関の承認等の制度の運用、JICA等による技術協力等の施策を実施し、国際標準化機構(ISO)による設計・施工技術の規格制定に参画するなど、土木・建築基準及び認証制度の国際調和の推進に取り組んでいる。また、我が国の技術的蓄積を国際標準に反映するための対応、国際標準の策定動向を考慮した国内の技術基準類の整備・改定等について検討を進めている。
(5)高度道路交通システム(ITS)の国際標準化
効率的なアプリケーション開発、国際貢献、国内の関連産業の発展等を図るため、ISOや国際電気通信連合(ITU)等の国際標準化機関におけるITS技術の国際標準化を推進している。
特にITSの国際標準化に関する専門委員会(ISO/TC204)に参画し、スマートウェイの国際標準化を推進するとともに、欧米政府と協調ITSの標準の調和に取り組んでいる。また、自動車基準調和世界フォーラム(UN/ECE/WP29)において、先進安全自動車(ASV)に係る国際基準の策定等を目指した活動を行っている。
(6)地理情報の国際標準化
国土地理院は、ISOの地理情報に関する専門委員会(ISO/TC211)へ積極的に参画しているほか、ISO/TC211を踏まえた国内の地理情報の標準化を整備・普及している。
(7)技術者資格の海外との相互承認
APECエンジニア相互承認プロジェクトでは、参加国・地域間における技術資格の相互承認に基づく有資格技術者の流動化を促進している。APECアーキテクトプロジェクト(建築家登録制度)では、建築設計資格者の流動化を促進するために、我が国は、2008年(平成20年)7月にオーストラリアとの「APECアーキテクト日豪二国間相互認証協定」、2009年(21年)7月にニュージーランドとの「APECアーキテクト日本・ニュージーランド二国間相互受入覚書」に署名している。
(8)下水道分野の国際標準化
下水道分野で国際展開を目指す我が国企業が、高い競争性を発揮できる国際市場を形成することを目的として、戦略的な国際標準化を推進している。現在、再生水の灌漑利用に関する専門委員会(ISO/PC253)やアセットマネジメント分野(ISO/TC224 WG6)・クライシスマネジメント分野(同 WG7)等において国際規格の策定に積極的に参画している。