第3節 国際的な連携・協調メカニズムの構築とイニシアティブの発揮
(1)交通分野における地球環境・エネルギー等に関する国際連携について
2009年(平成21年)1月、世界各国の交通担当大臣と関係国際機関代表の参画の下、交通分野における環境・エネルギー対策に関する国際的な取組みを強化するため、「交通分野における地球環境・エネルギーに関する大臣会合」を東京で開催し、途上国の取組促進を盛り込んだ大臣宣言が採択された。第2回大臣会合は、日本からの招請に応じたイタリア政府が、2010年(22年)11月に開催し、専門知識の共有や関連業界団体との連携、国際航空・海運での対策等、今後の政策の方向性を示す新たな大臣宣言を採択した。第3回大臣会合はフランスにて開催予定である。
また、毎年52箇国の交通大臣を中心に、世界的に著名な有識者・経済人も交え、世界全体を視野に入れた交通政策に関する方向性を打ち出す国際枠組みである国際交通フォーラム(ITF)へ、積極的な参画を行っており、2011年(23年)5月の会合(テーマ:「社会のための交通」)においては、我が国は第1副議長国、2012年(24年)会合においては、「シームレスな交通」のテーマの下、我が国が議長国を務めることとなっており、今後開催に向けた準備を進めていく。
(2)東アジア地域における連携強化
政府全体として、東アジア地域の安定と繁栄を確保するために広範な分野で協力を進めている。
交通分野では、2010年(平成22年)11月にブルネイで第8回日ASEAN交通大臣会合が開催され、「日ASEAN自動車基準・認証制度に関する協力プログラム」が承認されるとともに、日ASEAN交通分野における環境に関する行動計画に基づき、我が国とASEAN各国の協働により今後2〜3年間で実施する具体的な環境対策の取組みをまとめたリストが作成された。
また、2010年(22年)5月に中国の成都で第3回日中韓物流大臣会合が開催され、北東アジアにおける3国間の物流に関する行動計画の成果について確認し、今後の取組みの方針について合意する共同宣言を採択した。同年8月には、中国の杭州で第5回日中韓観光大臣会合を開催し、3国間の観光交流・協力の一層の強化等のための共同声明を発表した。
建設分野においては、2010年(22年)6月に中国において日中建設専門家会合、2011年(23年)1月にモンゴルにおいて日本・モンゴル建設会議を開催し、両国の建設分野における交流・相互理解を促進するなど、東アジア地域を中心として建設関連省庁等と将来に向けた協働関係の構築を目指した取組みを推進している。
海洋分野では、東アジア海域の持続可能な開発を進める、東アジア海域環境管理パートナーシップ(PEMSEA)の枠組みに参加しており、2010年(22年)7月に「第3回東アジア海域パートナーシップ会議」に出席し、PEMSEAの今後の体制を検討する議論に参加した。
(3)自由で公正な海外建設市場の形成に向けた取組み
我が国建設企業が海外で事業活動を行うための自由なビジネス環境を確保するため、経済連携協定(EPA)や世界貿易機関(WTO)等の外交交渉の場を通じ、各種規制の撤廃・緩和、調達手続の透明化等、進出相手国の建設市場環境の整備を強力に働きかけるための交渉を引き続き行っている。
(4)アジア太平洋地域インフラ担当大臣のネットワークの確立に向けた取組み
アジア太平洋地域におけるインフラ整備に関するノウハウ・技術の共有や相互連携を図るため、我が国が提唱し、20箇国・地域を対象としたインフラ担当大臣会合を開催している。2010年(平成22年)10月に第8回会合を我が国主催により、東京で「気候変動と水関連リスクへの対応」をテーマに開催した。会合成果として、気候変動の影響により増大する水関連リスクに対して適応策を協力に推進する旨の大臣声明を採択した。また、第9回会合を、2011年(23年)に香港で開催することとなった。
(5)国際的な水問題への対応
地球温暖化に伴う気候変動、世界人口の増加、開発途上国の急激な経済成長、都市化に伴う水需要の増大や水の汚染等、地球規模の水問題が様々な国際会議で取り上げられている。2010年(平成22年)6月に開催されたアジア・太平洋水大臣フォーラムを通じ、気候変動による治水・利水の両面のリスクを回避するための我が国の経験・技術を広めるなど、国際貢献に努めている。また、水問題解決のための有効な手法として、総合水資源管理(IWRM)計画を策定することが国際的に共通認識されていることから、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)を中心とした「河川流域におけるIWRMガイドライン」の作成に協力するとともに、UNESCOやアジア河川流域ネットワーク(NARBO)と連携して、総合水資源管理の普及・促進に貢献している。水・衛生問題については、産学官による技術的支援等を行う下水道グローバルセンター(GCUS)及びアジア・太平洋地域の衛生分野のナレッジハブとして日本サニテーションコンソーシアム(JSC)を設立し、世界の水と衛生問題の解決に向けた国際協力を推進している。
地球温暖化に伴う気候変化の影響により増大する世界の水災害リスクの軽減を目的に、アジア大洋州地域等における具体的な適応策の立案手順を示した「洪水に関する気候変化の適応策検討ガイドライン」を作成するとともに、インドネシア、フィリピン、ベトナム等への国際協力を行っている。また、土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)が、衛星を活用した洪水早期警報システム(IFAS)や、蓄積した人材育成等の知見をもとに、水災害に関するアジア太平洋地域のナレッジハブとして国際支援を行っている。
また、国内外の水問題解決に向け、13府省庁で構成する「水問題に関する関係省庁連絡会」により、連携強化を図っている。
(6)日本海呼称問題への対応
「日本海(Japan Sea)」の名称は、海上保安庁が刊行する海図や国土地理院が刊行する地図はもとより、国際水路機関(IHO)が刊行する海図作製のための指針にも掲載され、国際的に確立された唯一の名称として認知されている。
しかし、1992年(平成4年)に開催された第6回国連地名標準化会議以降、韓国は、「日本海という名称は日本の植民地政策に基づくものであり、東海(East Sea)に改称するか日本海と併記すべき」との主張を繰り返している。国土交通省は、外務省等関係省庁と密接に連携し、国際社会に「日本海」への正しい理解と支持を求めている。