参考資料 

(6)復興事業の担い手や合意形成プロセス

1) 市町村主体の復興
 復興の主体は、住民に最も身近で地域の特性を理解している市町村が基本となる。それぞれの市町村は、住民、NPO、地元企業等とも連携して復興計画を策定するとともに、自主的かつ総合的にきめ細やかな施策を推進しなければならない。
 国は、ビジョン・理念、支援メニューを含む復興の全体方針を示し、復興の主体である市町村の能力を最大限引き出せるよう努力すべきである。その際、現場の意向を踏まえ、人材、ノウハウ、財政などの面から適切な支援や必要な制度設計を行う。県は、市町村を包括する広域の地方公共団体として、広域的行政課題に対応する役割を担う。
 国や県は、被災により行政機能が低下したなかで、膨大な復興関係業務を実施する必要がある市町村に対しては、的確に行政サービスが提供されるよう、その要請に応じて専門的知識を有する人材や地域の復興に協力する人材の派遣などの人的支援を行う。
 被災地の復興は、市町村、県、国の相互協力関係の下、それぞれが分担すべき役割・施策を明確にし、諸事業を調整しつつ計画的に行う。事業実施のために関係者協議会組織の活用も検討する。
 今後の地域づくりのあり方については、市町村が、復興の選択肢をその利害得失を含め、地域住民に示し、その上で、地域住民、関係者の意見を幅広く聞きつつ、その方向性を決定しなければならない。

2) 住民間の合意形成とまちづくり会社等の活用
 地域住民のニーズを尊重するため、住民の意見をとりまとめ、行政に反映するシステム作りが不可欠である。その際、住民・事業者・関係権利者等が構成員となって地域づくりに取り組むための「まちづくり協議会」、「むらづくり協議会」などを活用することも考えられる。
 なお、住民意見の集約にあたっては、女性、子ども、高齢者、障害者、外国人等の意見についても、これを適切に反映させ、また将来世代にも十分配慮しなければならない。
 復興事業に際しては、公的主体によるもののほか、民間の資金・ノウハウを活用した官民連携(PPP)や、ボランティア・NPOなどが主導する「新しい公共」による被災地の復興についても促進を図る。さらに、公益性と企業性とをあわせ持ち、行政や民間企業だけでは効果的な実施が難しい公共的な事業を担うまちづくり会社の活用を含めて、あらゆる有効な手立てを総動員すべきである。また、農村部では、集落のコミュニティなどを活用して、関係者の徹底的な話し合いを通じて、農地だけでなく宅地利用を含めた土地利用調整を行うことも考えられる。
 なお、地域住民のニーズを汲み取りながら、適切な主体が、土地所有者の総意を受け借地権を設定するなどの土地利用方式も、今後の地域の将来ビジョンを実現していくためには有用である。

3) 復興を支える人的支援、人材の確保
 市町村の住民は、復興事業に主体的に参画することが望まれる。このため、できるだけ住民自らが復興事業に携わることができるよう検討すべきである。職業訓練などの充実により地域住民が専門的知識を必要とする業務にも従事できるよう工夫が必要である。また、住民の合意形成を支援するコーディネーターやファシリテーターと呼ばれる「つなぎ」の役目を果たす人材は、住民との円滑な人間関係の構築の面からも、地形や地理についての知識の面からも、できれば住民内部から育成されることが望ましい。
 さらに、住民主体の地域づくりを支援するためには、まちづくりプランナー、建築家、大学研究者、弁護士などの専門家(アドバイザー)の役割が重要である。国内外のこうした専門家の力を活用するためには、関係学会からの支援も受け、ネットワーク組織を作ることが重要である。
 今回のような大きな災害を受けた場合、各市町村のみでは、迅速かつ効果的な復興計画の策定や事業の推進が困難である。その場合、国、県、他市町村、都市再生機構等からの専門的な職員の派遣等の技術支援により自治体の復興プランの策定・事業の実施を適切に支援する必要がある。そこで、広域的・一体的な復興を進めるために、関係者の連携を密にしなければならない。また、地域づくり計画全体を統括する「マスタープランナー」の役割も重要である。
 被災市町村に居住しながら、被災者の見守りやケア、集落での地域おこし活動に幅広く従事できる復興支援員などの仕組みについて、積極的に支援する。さまざまに「つなぐ」役割を果たす人材こそ、コミュニティの復興においてなくてはならないからである。


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