(3)地域における文化の復興
1) 人々を「つなぐ」地域における文化の復興
地震と津波と原子力災害の三重苦が、東北の文化をなぎ倒した。しかし、一般に地域における文化は、順境にあってのみ育つものではない。逆境の只中に立ち尽くすことによって、地域の文化の底力は試されるのだ。たとえば、過疎地における祭りが、地域を越えた子ども世代を外から動員することによって、生き生きと蘇えった例があるではないか。ここでもヒントは「つなぐ」ことにある。
かくて東北における風と水の風物詩も、逆境にあってこそ、地元はもちろんのこと、周辺ひいては全国的な支援を受けつつ、再生の兆しを見せることになる。地域における様々な文化のあり方を、国や県や市町村は、そっと後押しすることによって、地域の人々にその絆の深さを再確認させることが出来る。そして地域における文化の復興過程において人と人とは再び「つながる」ことによって、やる気を回復する。その上で地域の文化は、改めて自らのルーツや歴史的環境に思いをはせる縁(よすが)となろう。
2) 地域の伝統的文化・文化財の再生
震災被害や住民避難等により維持が困難となった地域コミュニティの再生のため、「地域のたから」、「地域のこころ」である文化財の修理・修復を進めることが必要である。また、祭りなどの伝統的行事や方言の再興、保存、継承への支援を行うことが求められる。このように、地元の歴史や文化を大切にし、文化遺産を承継することにより、地域のアイデンティティの保持を図ることが重要である。また、被災した博物館・美術館・図書館などをすみやかに再建し、一層充実するよう支援することが望まれる。さらに、すみやかな復興のために、迅速な埋蔵文化財調査を可能とする体制を整備する必要がある。
3) 復興を通じた文化の創造
被災者や地域を勇気づけ、元気づけるとともに、地域の一体感を増す取組が望まれる。文化芸術活動への支援や芸術祭・音楽祭などのイベントの開催、地域におけるスポーツ活動を促進することが求められる。また、東北復活のシンボルとして、被災地において人々に夢と感動を与える国際競技大会の招致・開催も推進すべきである。
また、今回の震災に対して、著名な芸術家やスポーツ選手を始めとして多くの人々が、自発的に音楽やスポーツなどの様々な活動を通して支援を行っている。このような活動を通じて、支援する人々と被災地の人々との心の触れ合いが深まり、それが繰り返されるなかで、新しい「文化」が生まれる可能性があり、今後、このような「文化」を積極的に発展させていくことが求められる。