参考資料 

(4)緊急雇用から雇用復興へ

1) 当面の雇用対策
 雇用に関してまず急を要するのは、被災地における雇用危機への対応である。仕事を失った人が失業給付をすみやかに受け取れるようにする。その際には被災地での厳しい雇用状況に鑑み、引き続き離職要件の緩和や失業給付期間の延長等、条件の緩和も必要である。
 同時に困難に直面している事業者が、できるだけ雇用を維持できるよう、雇用調整助成金の適用基準を緩和するといった弾力的な運用などが必要である。さらに既存の雇用機会維持だけでなく、新たな雇用機会創出のために雇用創出基金事業なども積極的に活用すべきである。
 また、被災地の復興事業からの求人が確実に被災者の雇用にむすびつくよう留意すべきである。そのため、復興事業を担う地元自治体とハローワークが、情報共有などを通して、しっかりと連携することが重要である。さらに被災者の雇用機会を増やすために、被災者を採用した企業への助成を行うこと、加えて「日本はひとつ」しごと協議会などを通じ、求人確保や求職者の特性に応じたきめ細かい就職支援を実現することが望まれる。また、就職に必要な知識・技術の習得や職業転換のための職業訓練を充実する必要がある。その際に求人と被災者の求職が円滑に結びつくよう、ハローワークの機能・体制の強化や、しごと情報ネットによるマッチング機能拡充なども図るべきである。

2) 産業振興による本格的雇用の創出
 雇用は生産からの派生需要である。それゆえ、本格的な安定雇用は、被災地における産業の復興から生まれる。その意味で、もともとこの地域の強みであった農林水産業、製造業、観光業の復興、さらには新たに再生可能エネルギーなどの新産業の導入などが、雇用復興の鍵である。これらの政策と一体となった雇用面からの支援が不可欠である。またそうした雇用を生む被災地の企業の再建や引き留め、さらには外からの誘致に取り組む政策などは、雇用復興の観点からもきわめて重要である。
 復興した雇用が安定的であり、かつ労働条件の向上が期待できるものであるためには、産業復興が、より高い付加価値を生み出す方向に進化していることが必要である。その点で、地域の産業の高度化や新産業創出を担う人材の育成、職業訓練の充実などの取組を支援することも大切である。
 第1次産業などの比率も高かった被災地では、老若男女そろって働くことが自然であるような就労体制が見られた。第1次産業に限らず、技術水準の高い中小企業などにおいても、高齢者がその能力を発揮し続ける生涯現役の雇用システムが比較的多く見られるのも特徴である。そうしたなかで、高齢のベテランから、若い人たちに技能や経験がうまく伝承されているケースもあり、そうした全員参加型、世代継承型の雇用復興を図ることも期待される。
 さらに農漁村地域においては、自営の農漁業者が、兼業として観光業や製造業などに雇用労働を提供するパターンも少なくない。そうした「合わせ技」で安定的な就労と所得機会を確保することも地域によっては有効な手立てとなる。


注 「『日本はひとつ』しごと協議会」とは、都道府県労働局を中心とした、自治体、国の出先機関、関係団体による協議会。都道府県単位で全国に設置され、復旧事業の受注企業等の情報収集、復旧事業の求人のハローワークへの提出などを合意し、推進している。


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