(6)地域経済活動を支える基盤の強化
1) 交通・物流
災害に強い交通網
生活交通については、少子・高齢化、過疎化等の地域の社会動向を踏まえ、地域の復興方針と一体となり、交通施設に防災機能を付加するなど、災害に強い地域交通のモデルを構築すべきである。
また、幹線交通網については、今後とも、耐震性の強化や復元力の充実、「多重化による代替性」(リダンダンシー)の確保により防災機能を強化しなければならない。
鉄道については、防災・「減災」機能を強化しつつ、既存施設の活用が十分可能な鉄道は、被災前のルートで復旧する。他方、甚大な津波被害を受けた地域の鉄道は、現行ルートの変更も含め、まちづくりと一体的に復興しなければならない。港湾については、臨海部への企業の立地状況を踏まえ、避難体制の構築など「減災」機能の強化を図るべきである。道路については、太平洋沿岸軸(三陸縦貫道等)の緊急整備や、太平洋沿岸と東北道を繋ぐ横断軸の強化について、整備スケジュールを明確にした上で、防災面の効果を適切に評価しつつ、重点的に進めるべきである。また、高所にある道路等への緊急避難路の整備などを進めることが望まれる。
物流システムの高度化
被災地の復興支援のため、まず、道路、港湾、臨海鉄道等の物流インフラの早期復旧を図る。そして、わが国の産業立地拠点としての魅力を高め、空洞化を防止するため、供給網(サプライチェーン)全体の可視化、生産・物流拠点の再配置、太平洋側と日本海側との連携など輸送ルートの多重化、外航海運の安定的な維持などを進めるべきである。
今後の災害にも備える観点から、ソフト面を強化した災害に強い物流体系である「災害ロジスティクス」を構築すべきである。すなわち、全国各地から被災地への緊急支援物資を円滑かつ的確に末端の避難所まで届けられるよう、災害時協力協定等により民間ノウハウの活用や民間物流施設の確保などを組み合わせた物流の体系を目指すものである。
2) 再生可能エネルギーの利用促進とエネルギー効率の向上
被災地における再生可能エネルギーの可能性
再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱等)については、エネルギー源の多様化・分散化、地球温暖化対策、新規産業・雇用創出などの観点から重要である。そこで、出力の不安定性やコスト高、立地制約などの課題に対応しつつ、その導入を加速する必要がある。
東北地域は、太平洋沿岸では関東地方と同程度の日照時間を有し、気温が低く太陽光発電システムの太陽光パネルの温度の上昇によるロスが小さいため、太陽光発電に適している。さらに、地熱資源や森林資源・水資源も豊富に存在しており、地熱発電やバイオマス、小水力発電等の潜在的可能性も高い。また、東北地域には、全国的に見ても風況が良い地点が多く、風力発電の潜在的可能性が高い。
地域自立型エネルギーシステム
被災地におけるインフラの再構築にあたっては、先端的な自立・分散型エネルギーシステムを地域特性に応じて導入していくことが必要である。そのシステムは、まず、省エネルギーシステムの効率的な活用、次いで、再生可能エネルギーなど多様なエネルギー源の利用と蓄電池の導入による出力不安定性への対応、さらにガスなどを活用したコジェネ(熱電併給)の活用を総合的に組み合わせたものである。
こうした自立・分散型エネルギーシステム(スマート・コミュニティ、スマート・ビレッジ)は、エネルギー効率が高く、災害にも強いので、わが国で長期的に整備していく必要がある。そこで、被災地の復興において、それを先導的に導入していくことが求められる。
地域の復興・再生において、防災、地域づくりなど、他の計画と並行して一体的に進めることがより効果的である。
産業としての再生可能エネルギー
再生可能エネルギー・システムの設置・導入は、復興過程において、まず、新たな雇用の創出に寄与する。そして、装置・システムの生産も、産業派生効果が大きい電気機械産業のウエイトが全国と比べて高い東北地域の産業の成長に寄与する。したがって、誘致支援などにより、これらの関連産業の集積を促進しなければならない。
3) 人を活かす情報通信技術の活用
人と人をつなぐ情報通信基盤に大きな被害が生じており、次世代の発展につながるようにその復旧を進めるべきである。特に、震災発生後、携帯電話が非常につながりにくい状態となったことから、そうした状況を改善するような取組を進めるべきである。
復興に際しては、多様なメディアを活用し、地理的に離れて避難している住民も含む被災者に対する正確で迅速な支援情報の提供をまず行うべきである。さらに、被災地の地方公共団体と地域住民が円滑にコミュニケーションを行える環境を確保すべきである。これにより、多くの被災者・住民が復興の過程に自由に参加できるようになって、地域コミュニティが再生されることが期待できる。
また、復興の進捗状況をインターネットで閲覧できるWebサイトによる政策の「見える化」や、利用しやすい形での政府保有データの提供、内外に向けた正確な情報発信等を進めることが必要である。
さらに、行政をはじめ、医療、教育等の地域社会を支える分野のデータが震災により滅失したことを踏まえ、これらの分野において、情報の一層のデジタル化を進め、クラウドサービス注の導入を強力に推進すべきである。
さらに、情報通信技術の利用・活用を進め、地域医療や医療・介護の連携強化のための情報共有や、農林水産業の6次産業化、中小企業の再建・販路拡大など、震災で打撃を受けた地域の産業の再生・創出に取り組むべきである。
これらの取組は、一体的に行われてこそ、その効用が最大限に発揮される。それと同時に、これにより、被災地における人と人との絆が確保され、情報通信技術を活用する能力が向上することを通じて、被災地の人々が情報通信技術を使いこなし、復興の主役となることが望まれる。