(8)復興のための財源確保
財源の議論なくして復興は語れないし、復興の姿なくして財源の議論も語れない。未曾有の被害をもたらした今回の震災からの復興を考える時、この考えが基本となる。
今回の大震災では、津波により多くの公共施設が破壊され、負債のみが残された。甚大な被害を被った地方公共団体も多数に上る。こうしたなか、地域においてはそれらの再建が切望され、復興のための多くの資金が必要とされている。一刻も早い復興のため、国民への説明責任と透明性を確保しながら、復興に真に役立つ必要な施策を、被災地の要望に基づき丁寧に積み上げ、すみやかに実施しなければならない。同時に、施策を示すだけでなく、そのための財源についても明確な考えを示すのが責任ある態度である。
わが国の財政を巡る状況は、阪神・淡路大震災当時よりも著しく悪化し、社会保障支出の増加等による巨額の債務も、これからの世代に負の遺産として残されている。さらに、わが国の生産年齢人口は今後10年で1割も減少するなど大幅な減少が見込まれており、次の世代の一人あたりの負担には著しい増加が見込まれている。海外の格付会社も、復興のあり方とわが国の財政健全化の取組に懸念を示している。
こうした状況に鑑みれば、復旧・復興のための財源については、次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し、負担の分かち合いにより確保しなければならない。政府は、復興支援策の具体化にあわせて、既存歳出の見直しなどとともに、国・地方の復興需要が高まる間の臨時増税措置として、基幹税を中心に多角的な検討をすみやかに行い、具体的な措置を講ずるべきである。この点は、先行する需要を賄う一時的なつなぎとして「復興債」を発行する場合には、日本国債に対する市場の信認を維持する観点から、特に重要である。
国・地方をめぐる厳しい財政状況が続くなか、今回の災害により被災した地方公共団体は財政力が低い団体が多く、役場機能を含むまち全体が壊滅的な打撃を受けた市町村も多数に上る。今後、これらの地方公共団体において、復興のための事業を本格的に展開していけば、国費による支援が講じられてもなお、地方の負担が生じることが見込まれる。これらの臨時的な需要に対応しうるよう、地方の復興財源についても、上記の臨時増税措置などにおいて確実に確保するべきである。そのなかで、被災地以外の地方公共団体の負担にいたずらに影響を及ぼすことがないよう、地方交付税の増額などにより確実に財源の手当てを行うべきである。
なお、税財政資金とは別に、民間資金の活用が可能なものとして、資金の償還が可能で有償資金の活用が期待できる分野や、就学支援など、民間・個人の自発的な資金援助との連携が期待できる分野などが考えられる。そうした分野の範囲や資金規模には限りがあることに留意した上で、その積極的な活用を検討する必要がある。