(4)人々のつながりと支えあい
1) 地域包括ケアと社会的包摂の推進
東日本大震災からの復興は、社会保障制度と深く関わる。震災後、被災者が支え合う姿、全国からのボランティアが支援する姿は、「人々の絆やつながり」という日本人と日本社会にある底力を再認識させた。
「共助」を軸にした新たな包括支援・参加保障の仕組みを構築することは、これからの日本社会を作りだすことにつながる。
被災地において、地域包括ケアを中心に据えた体制整備が人々の支えあいで行われることにより、保健・医療、介護・福祉サービスが一体的に提供される。このことは、少子高齢化が進む日本社会において、将来にわたって、大きな励みとなるものであり、様々な人々の交流により構築されるモデルが日本全国に広がることを期待したい。
被災者の生活再建と被災地の復興に向けた様々な課題に対応し、復興を目指すには、被災者や地域コミュニティが、その力を最大限発揮できるようにすることが必要である。また、地域をこえた緩やかな絆が復興過程を通じて日本全体に広がることも期待される。
復興に際しては、声を出しにくい人々にも配慮することで、誰をも排除しない包摂型の社会づくりを行うべきであり、その理念に基づく諸施策を推進すべきである。
たとえば、これまで地域に居場所を見出せなかった若者や、孤立しがちな高齢者・障害者、声を上げにくかった女性などが、震災を契機に地域づくりに主体的に参加することが重要である。とりわけ、男女共同参画の視点は忘れられてはならない。こうして、「居場所と出番」を持てるようにすることで、これまで届くことのなかった声なき声が地域コミュニティに反映され、地域の活力が高まることが望まれる。被災地の復興において、このような社会的包摂が実現することで、新しい人々のつながりが現実化し、新たな日本社会の発展につながることを期待したい。
2) 復興と「新しい公共」
今回の大震災では、多数のボランティアが活動を行っている。また、国内外から多額の義捐金・支援金が集まるなど、国民の間に助け合いの機運が高まっている。
阪神・淡路大震災では、それまでボランティア活動に縁がなかった人々もボランティアとして全国から駆け付け、様々な救援活動を行い、「ボランティア元年」と呼ばれた。その後、各地で発生した災害でも、多くのボランティアが救援活動を行っている。
今回の大震災では、災害支援関係のNPO・NGOの全国横断的なネットワークの発足、被災地への後方支援活動の実施、県・災害ボランティアセンター・自衛隊・政府現地対策本部による「被災者支援4者会議」の定期開催など、これまでの震災とは異なる新しい動きがあり、NPO、ボランティア活動が一段高い水準に達したことを示した。
今後、被災地の復興および日本の再生を進めていくにあたっては、身近な分野で多様な主体が共助の精神で活動することが重要である。こうした動きを後押しし、「新しい公共」の力が最大限に発揮されるよう、活動現場からの視点に立ち、制度・仕組みの構築等に取り組む必要がある。これによって、国民一人ひとりに居場所と出番があり、人に役立つ幸せを大切にする社会を目指すべきである。