第1節 震災からの復興 

事例 インフラ・交通の復旧・復興における取組み

1.復興道路・復興支援道路の緊急整備〜早期ルート確定と新規事業化〜
 東日本大震災により、太平洋沿岸の国道45号は被災・寸断されたが、これと並行して部分的に供用していた三陸沿岸道路は、津波浸水区間を避けて整備していたため、損傷がほとんどなく、発災後も国道45号の迂回路や緊急輸送路として大きな役割を果たした。
 しかしながら、三陸沿岸道路は約4割しか供用しておらず、ネットワークとしての機能に課題があること、また、日本海側及び日本海と太平洋を結ぶネットワークが弱く、救援のための迅速な物資輸送に課題があること等が指摘され、復興構想会議においても「太平洋沿岸軸の緊急整備や、太平洋沿岸と東北道を繋ぐ横断軸の強化を重点的に進めるべき」との提言がなされた。
 これらを受けて、復興道路としての三陸沿岸道路および復興支援道路としての東北横断自動車道釜石秋田線等の横断軸の未事業化区間について、平成23年7月にルートの具体化に向けた作業に緊急着手し、地域の皆様のご意見も踏まえ、約2箇月という短期間で8月30日にルート等を確定した。その後、社会資本整備審議会道路分科会事業評価部会の審議を経て、平成23年度第3次補正予算において新規事業化した。
 三陸沿岸地域の1日も早い復興を図るためのリーディングプロジェクトとして、三陸沿岸道路等の復興道路・復興支援道路の整備に取り組んでいる。
 


2.東北新幹線の復興
 東北新幹線が青森県内の八戸駅から新青森駅まで延伸・開業してから、平成23年12月4日で1年を迎えた。東北新幹線には同年3月5日、最高速度300kmの新型車両E5系「はやぶさ」が投入され、観光客誘致等に期待が高まっていたが、その6日後に震災が発生した。仙台駅等が被災し1箇月以上も運行できない状態が続いていたが、復興のシンボルとして4月29日に一部区間で減速して運転を再開し、9月23日に通常ダイヤの運行に戻った。延伸区間の八戸―新青森間は開業から12月3日までの1年間(東日本大震災の影響を受けた3月11日〜4月28日を除く)に268万人が利用した。1日当たりの乗客数は9,200人で、乗客数は在来特急だった前年より約2割増えた。9月の乗客数は前年比34%増で、9月の青森県内34観光施設の入場者数が15%増えるなどの効果もあった。「はやぶさ」は24年度末には最高速度を320kmに上げ、東京―新青森間を最短約3時間5分で結ぶ予定である。
 
はやぶさ

はやぶさ
 
東京〜新青森(開業前は東京〜青森)の所要時間

東京〜新青森(開業前は東京〜青森)の所要時間
 
八戸〜新青森の1日当たり利用者数

八戸〜新青森の1日当たり利用者数
 
青森県延べ宿泊客数(主に観光目的)の推移

青森県延べ宿泊客数(主に観光目的)の推移
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3.三陸鉄道の復興へ向けた動き
 岩手県沿岸部を走る三陸鉄道は、東日本大震災により甚大な被害を受け、総延長約108kmある全線のうち3分の2が不通となっている。早期に開通した区間について、三陸鉄道株式会社(岩手県等出資の第3セクター)は「復興支援列車」と銘打ち、3月中は無料、4月以降も割引運賃で走り、「地元の足」としての役割を果たしているが、月間の運賃収入は700万〜800万円と震災前の約4分の1となった。
 しかしながら、三陸鉄道株式会社の物産の売上げは増加している。平成23年6月に復興祈念の商品「きっと芽がでるせんべい」を売り出したところ、全国から注文が殺到し、生産が間に合わない状況もあった。同年8月、津波で流されたレールを「復興祈願レール」と名付け、10cm5万円、5cm万円で200個限定で売り出したところ、これも全国からの支援により、1日で完売した。
 
復興祈願レール

復興祈願レール

 また、同年5月から開始した、社員がガイドを務める被災地視察ツアーも好評で、24年2月時点までに約100団体1,500人以上が参加している。
 一方、東北運輸局は、東北鉄道協会(東北の民鉄、三セク鉄道、地下鉄等20社で構成)と連携して、震災による長期間の運休や、運行再開したものの風評被害等により観光客が減少している三陸鉄道等の東北のローカル鉄道について、東日本大震災からの早期復旧と運行再開後の利用促進策等を支援するため、イベント「頑張ろう三鉄の集い」、「がんばろう東北の鉄道!リレー写真展」の開催や、鉄道フェスティバル会場に三陸鉄道のグッズ販売の特設ブースを設けるなど、様々な復興支援イベント「東北ローカル線復興支援キャンペーン」を実施した。
 23年度第3次補正予算及び24年度予算において、復旧費用への補助が盛り込まれたことから、23年11月から本格的な復旧工事に着手し、今後、復旧工事が完了した区間から順次運転を再開し、最終的には26年4月頃に全線が運行再開する見込みである。
 
三陸鉄道の運転再開

三陸鉄道の運転再開

4. 東北地方の高速道路の無料開放
 東日本大震災による被災者支援及び復旧・復興支援のため、東北地方(水戸エリアの常磐道を含む)の高速道路について、平成23年6月20日から無料開放を開始した。
 また、同年12月1日からは、これまでの無料開放の対象路線をもとに、被災地支援・観光振興・避難者支援の観点から、対象エリア、車種等を見直した上で、24年3月31日まで無料開放を実施した。
 なお、24年4月1日からは、原子力発電所事故による避難者について、無料開放を継続している。
 


 

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