第3節 震災後における国土交通行政の転換 

5 海外への働きかけ・貢献

(震災後の落ち込みが大きい観光産業)
 平成23年の訪日外国人旅行者数は、東日本大震災の影響等により、約622万人(前年比27.8%減)と大幅に落ち込んだ。他方、月別の訪日外国人旅行者数の推移を見ると、大震災後5箇月目(23年8月)以降、前年同月比の減少幅は着実に縮小しており、大震災及び原子力発電所事故の影響からの回復が図られているものと考えられる。また、国内旅行については、旅行需要全体は前年を上回るまでに至っているものの、依然、観光客中心の宿泊施設の宿泊人数は厳しい状況が続いている。

(観光振興等)
 このような状況を踏まえると、訪日外国人旅行者の落ち込みに対応するため、訪日旅行の前提となる安全・安心に対する信頼をしっかりと取り戻した上で、海外向けのプロモーションを立て直すことが必要である。
 
図表77 訪日外客数の推移

図表77 訪日外客数の推移
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 平成23年7月までの間に、日本政府観光局(JNTO)や在外公館等と連携し、延べ100回以上の海外現地説明会を実施したほか、ビジット・ジャパン緊急対応事業として、世界から延べ約800社、約1,000名の海外メディア、海外旅行会社を日本に招へいした。さらに、同年10月からは、雑誌やWEB上での消費者向けの日本の魅力発信を再開し、24年1月からは訪日旅行者の特に多い5大市場(韓国・中国・台湾・米国・香港)を対象にその増強を図った。また、国際会議等のキャンセル防止及び将来の需要回復に向けた外客受入環境の整備に努めた。これらの成果として、各国において日本の現況について正確な報道がなされたり、旅行会社も販売中止していたツアーを再開する、新たな旅行商品を造成・販売するなどの効果が出ている。さらに、24年2月からは、あらためて世界へ感謝(Thank You)を伝えることにより、日本と世界の絆を強め、訪日需要の回復につなげるため、特別ロゴ及びポスターの作成や、東京、横浜、ニューヨーク等の主要都市における街頭バナーへの掲示等、「Japan.Thank You.」キャンペーンを実施した。

(貿易への風評被害対策)
 輸出貿易の出口となる港湾については、海外の船社等において、我が国港湾へ寄港することや日本発の荷物の安全性が懸念されていた。そのため、東京湾及び被災地域の港湾で測定されている大気及び海水の放射線量を取りまとめ、国土交通省ホームページにて日々、日英中韓の4箇国語で公表した(当初は1日2回の更新が行われており、平成24年4月末時点では、1週間に1回の更新となっている)。そのうえで、本対応について、外交ルートを通じ各国の港湾管理者や税関等関係機関への周知を行った。これらの措置により我が国各港湾の正確な情報を示すこととなり、船社や船員の懸念を払拭し、我が国港湾への寄港を維持させるとともに、海外港湾に対して日本発の荷物の安全性を示した。
 加えて、輸出先の海外港湾で放射能汚染が発見された場合の我が国へのコンテナの返送、船舶待機、荷役の遅延等を防止するため、京浜港における据置型放射線線量測定施設の整備に対し補助を行った。
 造船業についても、国内での建造船舶及び船舶用品に対して放射性物質残留が海外船主を中心に懸念されていた。このため、造船関連事業者からの要請に応じ、国内で建造された船舶等について事業者による放射線測定結果が適切な測定方法で測定されたものであることを証明する確認書を発行し、風評被害の払拭に努めた。

(防災パッケージによる国際貢献)
 東日本大震災においては、サプライチェーンの寸断が国内外に深刻な影響を及ぼした。平成23年10月にタイで発生した洪水においても、浸水被害によりサプライチェーンが断絶し、タイ国内のみならず、我が国を含め世界に影響を及ぼした。国土交通省では、タイの洪水被害からの早期の復旧・復興を支援するため、国際緊急援助隊として、高性能で機動力のある排水ポンプ車や官民連携の排水チームを初めて海外であるタイに派遣し、計32日間、排水作業に当たった。
 タイの洪水に対する我が国の取組みの成果を踏まえ、今後は、事前に災害を予防し、被害の軽減を図るため、それぞれの国のニーズに応じて、防災情報、警戒避難体制、インフラ、土地利用規制、制度・体制に係るヒト・モノ・ノウハウを組み合わせ、調査・計画段階から管理・運営段階まで一貫して対応する「防災パッケージ」を、関係省庁、JICA等関係機関、産、学と連携して世界に戦略的に展開することにより、国と国との「絆」を深め、我が国と他国とがともに発展する新たな国際貢献モデルとすることを目指している。
 
図表78 今後の防災パッケージの展開

図表78 今後の防災パッケージの展開

 

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