第3節 震災後における国土交通行政の転換 

事例 多様な主体の連携による地域づくり

1.石巻市「まちづくり会社」の活用
 石巻市の中心市街地は、震災に伴う石ノ森萬画館の閉鎖、各店舗や事業者の壊滅的な被害により、市内の交流人口が減少し、店舗等の解体、廃業に伴う生活利便性の著しい低下、雇用機会の喪失を招来したことから、幅広い世代の人口流出が進み、まちの賑わいが低下している。
 こうした中、まちづくり会社である(株)街づくりまんぼう(平成13年設立。資本金6,000万円)が東日本大震災復興特別区域法に基づく指定を受け、新たな出資を募り、復興推進事業を担う(事業規模:資金総額8,900万円)。
 具体的には、1)交流人口の拡大や高齢社会に対応したコミュニティスペースや病院利用者のための休憩所の整備、2)石ノ森萬画館を拠点とたマンガやアニメ等のコンテンツの市内外への発信による交流人口の拡大、3)石巻特産品の販売を行うまちなか復興マルシェの開催、市街地開発後の空き店舗や未利用地を活用した集いの空間等の整備等、4)現存する蔵や歴史建物を保存・有効活用しながら新たな街の形成後も歴史を感じることのできる特色ある地域づくりを進める。
 


 今後の人口減少や高齢社会という将来に向けて、歩ける範囲で生活できる空間の創造や商業機能のみならず、まちとして必要な「住む」・「働く」・「学ぶ」・「楽しむ」等の多様な機能が集積したコンパクトシティの形成を図ることが期待されている。

2.希望の烽火(のろし)プロジェクト
 国土交通省は、復興庁や農林水産省水産庁と連携し、甚大な被害を受けた岩手県、宮城県及び福島県の東北地方沿岸部の漁業及び漁港機能の早期再開に向けて協力してきた。
 これら3県の主要漁港に対し、冷凍冷蔵コンテナ、車両類等の市場再開に必要な資機材を、本格的な復旧がなされるまでの間、民間企業の手で提供しようとする「希望の烽火(のろし)」プロジェクトについて、支援を行っている。
 
プロジェクトにより提供された資機材

プロジェクトにより提供された資機材

3.宅急便基金による被災地支援〜宅急便ひとつに、希望をひとつ入れて〜
 ヤマトホールディングス(株)では、東日本大震災の発生を受け、宅急便1個につき10円の寄付をする取組みを1年間にわたり行った。
 平成24年3月末で終了した寄付金の総額は142億円以上に上り、公益財団法人ヤマト福祉財団の「東日本大震災生活・産業基盤復興再生募金」を通じて被災地の水産業・農業・生活基盤の再生のため使われている。「単なる資金提供ではなく、新しい復興モデルを育てるために役立てていくことを目指す」「見える支援・速い支援・効果の高い支援」の観点から、すでに全額が投入されている。
 岩手県で実施された「水産加工事業者生産回復支援事業」では、国からの助成が受けられない107の水産加工業者に総額16億円が助成され、加工設備および機器購入に役立てられた。これを含め、計31事業が助成の対象となった。
 
宅急便基金により購入された水産加工機器

宅急便基金により購入された水産加工機器

4.様々な防災協定締結の動き
 帰宅困難者の一時避難所等の確保や水害対策等について、各自治体が独自に企業等と協定を結ぶ動きが出ている。
 渋谷区は、平成24年1月、(社)全日本不動産協会渋谷支部、(公社)東京都宅地建物取引業協会渋谷区支部の2団体と、帰宅困難者支援に関する協定を結んだ。両協会は、参加協力店を募り、協力店は災害時に帰宅困難者に対してトイレや一時休憩場所の提供、飲料水の提供、公共交通機関の運行情報の提供を行うなど、帰宅困難者支援を行う。
 東京都港区は、24年3月、森ビル株式会社と、災害発生時の帰宅困難者に対する一時避難場所の提供、備蓄食料・飲料水等の提供、避難誘導用具の提供、駅周辺等からの誘導等を内容とする協力協定を締結した。
 東京都江東区は、津波等の大規模水害発生時等に、一時避難施設としての施設提供、近隣住民に対する避難誘導について協力してもらうための協定を23年9月に区内4企業と締結した。
 さらに、より広域では、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市、相模原市の9都県市が、コンビニエンスストア、ファストフード、ファミリーレストラン、居酒屋、カラオケスペース等と、水道水の提供、トイレの使用、道路情報の提供等について協力してもらうための協定を締結している。

 

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