第1節 持続可能で活力ある国土・地域づくりをめぐる現状と課題 

3 国際競争の激化

 急速な経済成長を遂げてきている東アジア地域の存在は、我が国における産業立地の動向に影響を及ぼしているばかりでなく、経済全体にとって極めて重要なものとなっており、我が国の地域の将来を考える上で重要な要素となっている。
 東アジア地域の名目GDPの世界全体に占める割合は、1980年には15.3%であったものが、2010年には23.5%(約1.5倍)となった。特に、中国の成長が著しく、2010年の中国のGDPは5兆8,783億ドルと、我が国の5兆4,588億ドルを上回り、世界第2位となった。
 一方、平成23年10月、円相場が一時1ドル=75円86銭まで上昇し、プラザ合意後最高値を記録した。アジア新興国需要と記録的な円高の定着が企業の海外投資増加の一因となっている。こうしたことを背景に、同年の我が国の貿易収支額は昭和38年以来48年ぶりの赤字(▲1兆6,089億円)となった。鉱物性燃料の価格上昇等による輸入の増加や、震災・海外景気の下振れ等の影響による輸出の減少が原因と推察されている。
 
図表101 各国・地域の名目GDPとシェアの推移

図表101 各国・地域の名目GDPとシェアの推移
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図表102 為替レートの推移

図表102 為替レートの推移
 
図表103 日本の貿易収支の推移

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図表104 日本の国際収支の推移

図表104 日本の国際収支の推移
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(国際競争力を支えるインフラ)
 このように、世界経済において国際競争が激化する中で、日本の国際競争力を強化するためには、産業・都市基盤の整備による立地、就労・居住環境の改善や、交通ネットワークの強化による移動・物流サービスの強化が必要である。
 日本の国際競争の基盤整備の状況については、世界経済フォーラムによる2011年(平成23年)のインフラ部門国別ランキングを見ると、我が国は15位と評価されている。概して欧米諸国が高い評価となっているが、米国やフランス等の国が過去4年間で徐々に落ち込みを見せているのに対して、香港、シンガポール、韓国等アジアの他の国が評価を伸ばしており、アジア各国でインフラ整備が進む中、日本の国際プレゼンスの低下が懸念される。
 
図表105 国際競争力(インフラ部門)国別ランキング

図表105 国際競争力(インフラ部門)国別ランキング

 具体的に、港湾のコンテナ取扱量について見ると、中国、シンガポール、香港、韓国の進出により、日本の国際競争力が低下している。神戸港は昭和55(1980)年に世界4位のコンテナ取扱量であったが、22年(速報値)では50位外に後退している。
 
図表106 港湾取扱量

図表106 港湾取扱量

 また、空港について見ると、羽田空港の利用旅客数は、世界第5位の規模となっているが、貨物量は韓国(仁川)、中国(浦東)、香港(チェップラックコック)が成田空港を上回っている。
 
図表107 世界主要国における空港の整備状況と取扱旅客数・貨物量

図表107 世界主要国における空港の整備状況と取扱旅客数・貨物量

 急成長する東アジア地域の中にあって、中国をはじめ、今後急速に拡大する東アジア地域の需要を取り込む観点から、国際ビジネス・観光交流の活性化、交流ネットワークの開発、都市の競争力向上が重要な課題であり、国際競争の基盤整備を促進することが必要である。


注 世界経済フォーラムは、独立した中立の国際機関(1971年設立された非営利団体。本部スイスのジュネーブ)であり、政治・経済・学術界のリーダーと連携して世界、地域、産業に係る諸課題の解決・改善に取り組むことを目的としている。

 

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