第1節 持続可能で活力ある国土・地域づくりをめぐる現状と課題 

コラム 国内・海外における環境対応車普及への取組み

 低炭素社会の実現へ向けて、自動車からのCO2排出量を削減するため、国内外で電気自動車等の環境対応車の普及に向けた様々な取組みが行われている。

1.国内における取組み〜環境対応車の導入と離島振興を組み合わせた取組み事例〜
 自動車は離島での重要な交通手段であることから、離島地域で、地域の特性を活かした環境対応車の導入と離島振興とを組み合わせた取組みを進めている事例がある。
 長崎県五島地区:長崎県は、平成21年、同県の離島である五島地区において、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)と観光ITS(高度道路交通システム)を連動させ、未来型のドライブ観光システムを目指す「長崎EV&ITSプロジェクト」を開始した。
 五島地区では、人口減少が著しく、雇用環境も悪化している一方で、世界遺産登録を目指しているキリスト教関連遺産等の観光資源も多数存在している。そのため、観光等による雇用の創出、交流人口の拡大により、地域を活性化することを、同プロジェクトの目標としている。
 同プロジェクトにより、五島地区のレンタカー等にEVを138台、PHVを2台導入し、地区内の各スポットに充電設備を整備した。さらに、ITSスポット、観光情報プラットフォームを整備し、EVレンタカーに観光情報等を配信した。同プロジェクトは産学官連携により推進されており、国土交通省も事務局として参加し、支援を行っているところである。
 


 沖縄県宮古島市:政府が環境モデル都市に指定した沖縄県宮古島市では、自然活用型エネルギーの地産地消による循環型社会の構築を目指している。同市では、最大産業であるサトウキビ産業を活かして、サトウキビから自動車燃料用のバイオエタノールを製造するバイオエタノール実証事業が行われている。ガソリンにバイオエタノールを3%混ぜて作られるE3燃料と、同じくバイオエタノール10%混合のE10燃料を利用した車両を宮古島市役所が導入し、また、これらの燃料を普及させるために、燃料製造所、給油所を建設し、専用タンクローリー車による輸送機能を整備している。現行制度ではE10燃料を車両に使用するには国の認定が必要であるところ、実証試験として国土交通大臣認定車両25台が導入されている。
 
E10使用の車両

E10使用の車両
 
E3・E10専用のガソリンスタンド

E3・E10専用のガソリンスタンド

2.海外における取組み〜ロンドンのEV展開計画〜
 ロンドンでは、市長の主導により電気自動車普及の取組みが行われている。2009年5月、ボリス・ジョンソン市長は、ロンドンをヨーロッパにおけるEVの中心地とすることを目指し、ロンドンEV展開計画(An Electric Vehicle Delivery Plan for London)を発表した。計画では、2015年までにロンドン全域に25,000箇所の充電スタンドを整備し、10万台のEVを導入することとしている。充電スタンドは路上に500箇所、公営駐車場等に2,000箇所整備し、さらに、企業と協力して、企業の駐車場や商業施設等において残りの22,500箇所を整備する。
 計画の実現のため、2011年5月、ジョンソン市長の主導のもと、「ソース・ロンドン」と呼ばれるEV充電スタンドのネットワーク整備とその利用会員制度が開始された。EVを充電しやすい環境を整えるため、2013年までに公共の充電スタンドを1,300箇所整備することとし、これにより、ロンドンにはガソリンスタンドよりも多く充電スポットが作られることになる。EV利用者がソース・ロンドンに登録をして年間利用料(100ポンド)を支払うと、利用者はソース・ロンドンのどの充電スタンドでも充電を行うことができる。このほか、EV利用者はロンドン中心部を走行する際の混雑課金(Congestion Charge)が免除されるなどの優遇政策も取られている。
 


 

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む