第1節 持続可能で活力ある国土・地域づくりをめぐる現状と課題 

事例 コミュニティファンド

1.NPOバンクの展開
 コミュニティファンドとしての機能を果たしていると考えられる団体として、NPOバンクがある。NPOバンク連絡会の資料によれば、平成23年3月時点で12のNPOバンクが存在しており、その出資金は5.4億円にのぼる。地域のNPOや、環境事業やまちづくりといった分野の活動に対して融資を行っている。
 
全国のNPOバンクの現況

全国のNPOバンクの現況
Excel形式のファイルはこちら

2.市民風車〜自然エネルギーファンド〜
 自然エネルギー事業に対してもコミュニティファンドによる資金提供が活用されている。平成13年に、北海道浜頓別町に建設された風車「『はまかぜ』ちゃん」は、日本で初めての「市民風車」となった。その建設資金2億円のうち8割近くは、自然エネルギー普及のために市民が電気料金の5%を寄付する基金「NPO法人北海道グリーンファンド」と217人の市民からの出資で賄われている。
 これをきっかけに、全国各地に市民風車の建設が進んでおり、北海道、青森、秋田、茨城、千葉、石川において、地域からの出資による市民風車が建設されている。
 
「『はまかぜ』ちゃん」(北海道浜頓別町)

「『はまかぜ』ちゃん」(北海道浜頓別町)
 
わんず(青森県鯵ヶ沢町)

わんず(青森県鯵ヶ沢町)

3.高松市丸亀町商店街の再生〜まちづくりファンド〜
 高松市中心部では、昭和60年頃から郊外の大型店舗の出店等を背景に、商店街の空洞化と衰退が徐々に進行し、通行量の減少や売上高の落ち込みが顕著に見られていた。この状況を危惧し、丸亀町商店街では構想から20年かけて商店街の再生を図るための再開発事業を行ってきた。
 平成10年には地元住民が中心となった第3セクターのまちづくり会社「高松丸亀町まちづくり株式会社」が設立され、商店街全体をマネジメントして再開発の中心的な役割を担っていくこととなった。同社は第3セクターとはいえ、行政の出資比率はわずか5%にとどまっており、民間の主導による市街地再開発が行われていることが特徴である。
 土地の所有権は地権者が保有したままで、定期借地権を活用することにより、まちづくり会社が建物を運営するという方法により、土地の利用と所有が分離され、まちづくり全体の中での合理的な土地利用を行うことができるようになった。商店街全体をひとつのショッピングセンターのように見立て、まちづくり会社が一体的に運営することで、必要な店舗を適正に配置し、訪れる人を満足させる魅力ある商店街づくりを目指している。
 
商店街のドーム広場

商店街のドーム広場

4.「ミュージックセキュリティーズ」による被災地支援ファンド
 平成13年に設立された「ミュージックセキュリティーズ」は、音楽アーティストの育成のため、1口1万円という小額単位でアーティストの音楽活動に対するファンからの出資を募り、アーティストに資金提供して作品制作を支援する「音楽ファンド」としての活動をはじめ、「セキュリテ」と称する、様々な分野の事業に対する小額投資のプラットフォームを運営している。
 このミュージックセキュリティーズが、東日本大震災以来、被災地の事業者を支援するための「セキュリテ被災地応援ファンド」を展開している。被災地で、事業を再開しようとする商店や食品製造会社、農園等に対しての出資を募るもので、投資家は自分の応援したい事業を選び、1口1万円から出資ができる。
 被災地では、津波で事業者の自宅のみならず工場、設備、機材等が全て流出しており、事業再開に当たっては機材調達等に数千万円の初期費用が必要になる。この費用をインターネット等を通じて全国から広く集め、復興を目指す企業の再起を支援する。
 投資家の提供するお金は応援金(寄付)と出資金が半分ずつで構成されており、出資と合わせて寄付を行うことになる。投資家は売上金額の一部を配当として受け取るほか、特典として、事業者によって製造された食品セット等の商品を受け取ることができたり、工場の見学や体験イベントへの参加ができるようになる。これらの関わりを通じて、長期的に復興を応援し、見守ろうという取組みになっている。
 23年4月の募集開始から現在までに、北海道、岩手、宮城、福島において、資金を必要とする事業者ごとに個別のファンドが設立されており、既に必要額を調達し終えたファンドも多くある。参加人数は延べ2万1千人、調達金額は総計で7.2億円近くにのぼっている(24年5月1日現在)。

 

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む