第4節 交通分野における安全対策の強化 

2 鉄軌道交通における安全対策

 鉄軌道交通における運転事故件数は、踏切事故防止対策の推進、自動列車停止装置(ATS)等の保安設備の整備や改良等を実施してきた結果、長期的には減少傾向注1にあり、平成13年度からは横ばいで推移している。

(1)鉄軌道の安全性の向上
 平成17年4月の福知山線列車脱線事故等を契機として、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」を改正し、曲線部等における速度制限機能付き自動列車停止装置(ATS)、運転士異常時列車停止装置、運転状況記録装置等の設置を義務付けている。
 また、17年12月の羽越線列車脱線事故を受け、「鉄道強風対策協議会」を設置し、鉄道における気象観測、運転規制、防風対策のあり方等、強風対策についてソフト・ハードの両面から検討を進め、風速計を新たに増設するなど、鉄道における強風観測体制の一層の強化等を図っている。
 このほか、鉄軌道事業者に対して、輸送の安全を確保するための取組み、施設・車両の管理・保守、運転の取扱い等が適切であるか等について、保安監査等を実施することにより、事故防止を図っている。
 
図表II-6-4-3 鉄軌道交通における運転事故件数及び死傷者数の推移

図表II-6-4-3 鉄軌道交通における運転事故件数及び死傷者数の推移
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(2)踏切対策の推進
 都市部を中心とした「開かずの踏切」注2等は、踏切事故や慢性的な交通渋滞等の原因となり、早急な対策が求められている。このため、道路管理者と鉄道事業者が連携し、「踏切道改良促進法」及び「第9次交通安全基本計画」に基づき、立体交差化、構造の改良、横断歩道橋等の歩行者等立体横断施設の整備、踏切遮断機等の踏切保安設備の整備等により踏切事故の防止に努めている。
 平成23年度は、「踏切道改良促進法」に基づき、立体交差化すべき踏切道として7箇所、拡幅等の構造改良をすべき踏切として24箇所、歩行者等立体横断施設を整備すべき踏切として1箇所、保安設備を整備すべき踏切として23箇所の指定を行った。

(3)ホームドアの整備促進
 視覚障害者等をはじめとしたすべての駅利用者の安全性向上を図ることを目的に、線路への転落を防止するホームドアの設置を促進している(平成23年度末現在、519駅で設置)。鉄道事業者をメンバーとする「ホームドアの整備促進等に関する検討会」を設置し、23年8月に中間取りまとめを行った。これを踏まえ、ホームドアや内方線付き点状ブロックの整備促進、車両ドア位置の不一致等の課題に対応した新しいタイプのホームドアの技術開発等ハード面の対策とともに、鉄道利用者による視覚障害者等への声かけを推進する「ひと声マナーキャンペーン」等ソフト面の対策にも取り組んでいる。
 
駅利用者の安全性向上

駅利用者の安全性向上


注1 JR西日本福知山線脱線事故があった平成17年度など、甚大な人的被害を生じた運転事故があった年度の死傷者数は多くなっている。
注2 電車の運行本数が多い時間帯において、遮断時間が40分/時以上となる踏切

 

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