第2節 国際標準への取組み 

第2節 国際標準への取組み

(1)自動車基準・認証制度の国際化
 安全で環境性能の高い自動車を早期・安価に普及させるため、我が国は国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム(UNECE/WP29)等に積極的に参加し、安全・環境基準の国際調和を推進するとともに、その活動を通じ、日本の新技術を国際的に普及させていくこととしている。このような活動を推進するため、平成23年6月、官民の代表者からなる「自動車基準認証国際化ハイレベル会議」において「自動車基準認証国際化行動計画」が取りまとめられた。この中では、1)日本の技術・基準の戦略的国際基準化、2)アジア諸国との連携、3)全世界的かつ車両単位の相互承認の実現、4)基準認証のグローバル化に対応する体制の整備の4つの柱を着実に実施するとともに、定期的なレビューを重ね、自動車基準認証制度の国際化を推進することとしている。

(2)鉄道に関する国際規格への取組み
 鉄道の国際規格については、我が国の優れた技術・規格の国際標準化により、我が国鉄道技術の海外展開が促進されるだけでなく、反対に国際標準化が得られなければ、既存の国内規格が淘汰される可能性があるなど、鉄道業界全体に大きな影響を与えるものであるため、戦略的対応が必要である。このため、「鉄道技術標準化調査検討会」では、鉄道技術に関する学識経験者や鉄道関係産業と協力して、鉄道の国際規格戦略の検討や国際規格に関連する国内規程制定の検討等、積極的な活動を行っている。また、規格の国内審議、IEC(国際電気標準会議)及びISO(国際標準化機構)の国際規格審議への対応を強化し、鉄道技術の国際標準化活動を一元的に行うため、(公財)鉄道総合技術研究所に鉄道国際規格センターが設立され、活動している。
 さらに、(独)交通安全環境研究所において、鉄道分野の国際規格への適合性評価(認証)を行う体制整備のため、認証機関としての認定取得を目指している。

(3)船舶や船員に関する国際基準への取組み
 国際的な海上運送事業は、様々な国籍の船舶・船員により営まれており、安全や環境保護に関する国際的な統一ルールに従い、適正かつ公平な競争条件の下で営まれる必要がある。我が国は従来より、SOLAS条約注1、MARPOL条約注2、STCW条約注3等の船舶や船員に関する条約等による国際基準の策定作業に積極的に参画し、貢献してきている。平成23年には、我が国の主導によりMARPOL条約付属書の改正が行われ、国際海運からのCO2排出規制が導入されるなどの成果を挙げた。

(4)土木・建築基準及び認証制度の国際調和
 近年、市場の国際化が進展している土木・建築・住宅分野における外国建材の性能認定や評価機関の承認等の制度の運用、JICA等による技術協力等の施策を実施し、ISOによる設計・施工技術の規格制定に参画するなど、土木・建築基準及び認証制度の国際調和の推進に取り組んでいる。また、我が国の技術的蓄積を国際標準に反映するための対応、国際標準の策定動向を考慮した国内の技術基準類の整備・改定等について検討を進めている。

(5)高度道路交通システム(ITS)の国際標準化
 効率的なアプリケーション開発、国際貢献、国内の関連産業の発展等を図るため、ISOや国際電気通信連合(ITU)等の国際標準化機関におけるITS技術の国際標準化を推進している。
 特にITSの国際標準化に関する専門委員会(ISO/TC204)に参画し、スマートウェイの国際標準化を推進するとともに、欧米政府と協調し、ITSの標準の調和に取り組んでいる。また、自動車基準調和世界フォーラム(UN/ECE/WP29)において、先進安全自動車(ASV)に係る国際基準の策定等を目指した活動を行っている。

(6)地理情報の国際標準化
 地理空間情報を異なる地理情報システム(GIS)間で相互利用する際の互換性を確保すること等を目的として、ISOの地理情報に関する専門委員会(ISO/TC 211)における国際規格の策定に積極的に参画している。併せて、ISO/TC 211を踏まえ、国内の地理情報の標準化に取り組んでいる。

(7)技術者資格の海外との相互承認
 APECエンジニア相互承認プロジェクトでは、参加国・地域間における技術資格の相互承認に基づく有資格技術者の流動化を促進している。APECアーキテクトプロジェクト(建築家登録制度)では、我が国は、平成20年7月にオーストラリアとの「APECアーキテクト日豪二国間相互認証協定」、21年7月にニュージーランドとの「APECアーキテクト日本・ニュージーランド二国間相互受入覚書」に署名し、建築設計資格者の流動化を促進している。

(8)下水道分野の国際標準化
 政府の「知的財産推進計画2010(平成22年5月21日策定)」に基づき、下水道分野で国際展開を目指す我が国企業が高い競争性を発揮できる国際市場を形成することを目的として、戦略的な国際標準化を推進している。現在、再生水の灌漑利用に関する専門委員会(ISO/PC253)やアセットマネジメント分野(ISO/TC224 WG6)・クライシスマネジメント分野(同WG7)等においてISO国際規格の策定に積極的に参画している。また、再生水の都市利用の国際規格については、日中韓の標準化活動の推進のための北東アジア標準協力フォーラムにおいて、将来的なISO規格の策定も視野に検討を進めている。


注1 海上における人命の安全のための国際条約
注2 船舶による汚染の防止のための国際条約
注3 船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約

 

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