第1節 若者を取り巻く社会経済状況の変化

(1)人口構造の変化

(人口減少・少子高齢化の進展)
 戦後、我が国の総人口は増加を続け、1967年には初めて1億人を超えたが、2008年の1億2,808万人をピークに減少に転じた。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、我が国の人口は2048年に9,913万人と1億人を割り込み、2060年には8,674万人まで減少すると見込まれている(図表1)。人口の推移をより長期的に見ると、明治時代後半の1900年頃から100年をかけて増えてきた我が国の人口が、今後100年のうちに再び同じ水準に戻ることが見込まれ、我が国はこれから、これまでの歴史を振り返っても類を見ない水準の人口減少を経験することになる(図表2)。
 
図表1 我が国人口の推移
図表1 我が国人口の推移
Excel形式のファイルはこちら

 
図表2 我が国人口の長期的な推移
図表2 我が国人口の長期的な推移
Excel形式のファイルはこちら

 若者の数は、1970年に約3,600万人、2010年に約3,200万人だったものが、2060年にはその半分以下の約1,500万人になると推計されている。また、全人口に占める若者人口の割合を見ると、1970年の35.0%(約3人に1人)から2010年には25.1%(約4人に1人)へと減少しており、2060年には更に17.4%(約6人に1人)にまで減少することが見込まれている。
 このような若者人口の減少の背景には、出生率の落ち込みがある。戦後の出生数の推移を見ると、1940年代後半の第1次ベビーブーム、1970年代前半の第2次ベビーブームを経た後、出生数は減少し、特に1970年代から1980年代にかけて大きく減少した。その後も減少は続き、2011年には過去最低の出生数(105万人)となった。合計特殊出生率(当該年次の15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、一人の女性が仮にその年次の年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子どもの数に相当)は、1947年に4.54だったものが1975年には1.91へと減少し、さらに、2005年には過去最低の水準となる1.26となった(図表3)。
 
図表3 出生数及び合計特殊出生率の推移
図表3 出生数及び合計特殊出生率の推移
Excel形式のファイルはこちら

 圏域別に人口の変化を見ると、2010年から2040年にかけての全年齢の人口の変化率は、地方圏で-20.9%、大阪圏で-16.5%、名古屋圏で-11.7%、東京圏で-9.3%と見込まれており、都市圏よりも地方圏において人口減少が急速に進行していくことが分かる注1(図表4、5)。20代の人口については、全年齢と同様、地方圏における減少率が最も高く、大阪圏、東京圏、名古屋圏と続いている。30代の人口については、東京圏における減少が目立つが、これは、前後の世代と比較して大きな人口ボリュームを持つ第2次ベビーブーム世代(1971〜1974年生まれ)が2010年時点では36〜39歳となっており、2010年時点でその多くが東京圏に居住していたことと関連しているものと考えられる(世代ごとの居住地の動向については第2章第2節で詳述する)。20代人口と30代人口の減少率は、いずれの圏域においても全年齢人口の減少率よりも高くなっており、人口減少が進展する中で、特に若者人口の減少が急速に起こることが分かる(図表6、7、8、9)。
 
図表4 圏域別の人口(全年齢)の推移(2010年=100)
図表4 圏域別の人口(全年齢)の推移(2010年=100)
Excel形式のファイルはこちら

 
図表5 圏域別の人口(全年齢)の変化率(2010年→2040年)
図表5 圏域別の人口(全年齢)の変化率(2010年→2040年)
Excel形式のファイルはこちら

 
図表6 圏域別の人口(20代)の推移(2010年=100)
図表6 圏域別の人口(20代)の推移(2010年=100)
Excel形式のファイルはこちら

 
図表7 圏域別の人口(20代)の変化率(2010年→2040年)
図表7 圏域別の人口(20代)の変化率(2010年→2040年)
Excel形式のファイルはこちら

 
図表8 圏域別の人口(30代)の推移(2010年=100)
図表8 圏域別の人口(30代)の推移(2010年=100)
Excel形式のファイルはこちら

 
図表9 圏域別の人口(30代)の変化率(2010年→2040年)
図表9 圏域別の人口(30代)の変化率(2010年→2040年)
Excel形式のファイルはこちら

 また、我が国の若者人口の減少は、国際的に見ても早いスピードで進展している。我が国では1950年代から若者人口比率が上昇し、1970年にはピークとなる35%を記録した。その後、1990年までに若者人口比率は急速に低下し、1990年から2005年にかけては27%前後の水準で横ばいとなったものの、その後再び減少を始め、2035年以降は20%を下回り、2090年まで長期的に減少を続けることが見込まれている。諸外国の若者人口比率は我が国とは異なる動きをしており、1960年代後半頃にそれまで減少傾向にあった若者人口比率は底を打ち、日本の若者人口比率が減少傾向に入った1970年頃から上昇を続け、その後1990年前後から減少段階に入ることとなった。諸外国においても今後長期的な若者人口の減少が見込まれているが、若者人口比率は長期的には20%台前半に収束すると見込まれており、我が国と比較して、若者人口比率の減少のスピードも減少幅も緩やかと言える(図表10)。
 
図表10 各国の若者人口比率の推移
図表10 各国の若者人口比率の推移
Excel形式のファイルはこちら


(単身・夫婦のみ世帯の増加と世帯の小規模化)
 人口減少・少子高齢化が進展する中で、世帯構成も変化している。我が国の総人口が減少を始めた一方で、一般世帯総数は、1960年の2,216万世帯から2010年の5,184万世帯まで継続的に増加している。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、我が国の一般世帯総数は今後2019年まで増加が続き、5,307万世帯でピークを迎えるが、その後は減少に転じ、2035年には4,956万世帯まで減少すると見込まれている。
 世帯数の増大の内訳としては、単身世帯、夫婦のみの世帯、ひとり親と子の世帯の増加が大きい。単身世帯は1960年の358万世帯(16.2%)から一貫して増加していたが、高齢者の単身世帯の増加や未婚化・晩婚化の進展による未婚単身者の増加等を受け、1990年代以降、特に増加が進んだ。単身世帯は2010年には1,678万世帯(32.4%)となったが、この増加傾向は一般世帯総数が減少に転じる2020年以降も継続し、2030年に1,872万世帯(36.5%)となるまで続くものと見込まれている。夫婦のみの世帯については、1960年の163万世帯(7.4%)から増加が続いており、2010年には1,027万世帯(19.8%)となった。今後、2020年まで増加した後は減少に転じると見込まれているが、一般世帯総数に占める割合としては上昇傾向にあり、2010年の19.8%から2020年の20.8%、2035年の21.2%と上昇が見込まれる。
 かつて一般世帯総数の40%超をしめた夫婦と子の世帯は、1985年の1,519万世帯をピークに既に減少傾向に入っているが、今後それが加速し、2010年の1,447万世帯(27.9%)から2035年の1,153万世帯(23.3%)にまで減少すると見込まれている。
 また、人口減少局面において世帯構成の変化と世帯数の増加が継続する中で、世帯規模は縮小し、平均世帯人員は長期的に減少傾向にある。平均世帯人員は1960年には4.14人であったが、2010年には2.42人となり、2035年には2.20人になると予想されている(図表11)。
 
図表11 世帯構成の推移(全年齢)
図表11 世帯構成の推移(全年齢)
Excel形式のファイルはこちら

 特に30代が世帯主の世帯構成について見ると、一般世帯総数は1985年の806万世帯から減少し、1995年には640万世帯となったが、第2次ベビーブーム世代が30代となったことや、その中でも単身世帯が増加したこと等により、その後増加に転じ、2005年には771万世帯となった。その後は再び減少に転じ、2035年には509万世帯となると見込まれている。
 30代の世帯構成の推移で特徴的なのは、夫婦と子供から成る世帯の割合の減少と単身世帯の割合の増加である。夫婦と子供から成る世帯は、1985年の470万世帯から1995年の327万世帯まで減少した後増加に転じ、2005年には337万世帯となった。その後は減少局面に入り、2035年には200万世帯まで減少すると見込まれている。夫婦と子供から成る世帯の世帯数はこのように増減を繰り返し推移しているが、一般世帯総数に占める割合は一貫して減少しており、1985年の58.3%から1995年の51.0%、2005年の43.7%と減少し、2035年には39.3%となることが見込まれている。また、単身世帯については、世帯数自体は2010年の248万世帯をピークに減少していくと予想されるが、その割合は長期的に増加傾向にあり、1985年の15.0%から2010年には32.2%へ、さらに2035年には35.3%まで上昇すると予想される(図表12)。
 
図表12 世帯構成の推移(世帯主が30代)
図表12 世帯構成の推移(世帯主が30代)
Excel形式のファイルはこちら


注1 本白書においては、特に断りがない限り「東京圏」は埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県から成る圏域を、「名古屋圏」は岐阜県、愛知県、三重県から成る圏域を、「大阪圏」は京都府、大阪府、兵庫県、奈良県から成る圏域を指すこととし、これらの都市圏をまとめて「三大都市圏」と言う。「地方圏」は、三大都市圏以外の地域を指す。


テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む