第1節 働き方の変化

(3)女性の就業状況の変化

(女性の社会進出の進展)
 今から約30年前の1980年、我が国では、夫婦のうち男性が主な働き手となる片働き世帯が主流であった。その後、共働き世帯数は継続的に増加し、1997年には共働き世帯が片働き世帯数を上回ることとなった。その後も共働き世帯は増加を続けており、片働き世帯数との差は拡大傾向にある(図表57)。
 
図表57 共働き世帯・片働き世帯の推移
図表57 共働き世帯・片働き世帯の推移
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 年齢階級別に女性の就業率を見ると、20代後半〜30代前半の上昇が目立つ。1975年には25〜29歳では41.4%、30〜34歳では43.0%だった就業率は、2011年にはそれぞれ72.8%、64.2%まで大きく上昇した(図表58)。
 
図表58 年齢階級別女性の就業率の推移
図表58 年齢階級別女性の就業率の推移
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 このような女性の就業率の上昇の背景のひとつには、女性の労働意欲の高まりがあると考えられる。女性の理想とするライフコースを尋ねると、「両立コース」(結婚し子どもを持つが、仕事も一生続ける)及び「再就職コース」(結婚し子どもを持つが、結婚あるいは出産の機会にいったん退職し、子育て後に再び仕事を持つ)を選択する者が2010年時点でそれぞれ30%を超えており、特に両立コースを選択する者については1992年の調査以降一貫して増加傾向にあるなど、家庭と仕事を両立しようとする女性の意欲の高まりが見られる(図表59、60)。
 
図表59 女性の理想ライフコース
図表59 女性の理想ライフコース
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図表60 女性の予定ライフコース
図表60 女性の予定ライフコース
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(結婚後の就業継続割合は上昇、出産後の就業継続割合は横ばい)
 これまで女性は、就業していても結婚・出産・育児に伴って退職する者が多く、また、出産後に復職するとしても、育児と両立がしやすいパートタイム労働の形で就業することが多かった。近年、女性の就業率の上昇が見られる中で、ライフステージごとに見た場合、女性の就業状況はどのように変化しているのだろうか。
 我が国の女性の労働力率を年齢階級別に見た場合、結婚・出産時期に当たる20代後半から30代にかけて労働力率が著しく減少するいわゆる「M字カーブ」を描くことが知られている。このM字カーブの底は依然として落ち込みが見られるものの、年々上昇をしており、この変化は、未婚・晩婚化、結婚・出産年齢の変化、結婚・出産に伴う退職の動向の変化、雇用形態の変化等の様々な要因によって起こっていると考えられる。
 M字カーブの中で、「15〜19歳」については、大学等への進学率の高まりを受けて、労働力率は低下傾向にある。M字のボトムは、1975年(42.6%)は「25〜29歳」、1985年(50.6%)、1995年(53.7%)は「30〜34歳」であったが、2011年(67.0%)は「35〜39歳」へと移っており、女性の晩婚化・晩産化が影響していると考えられる。25〜29歳及び30〜34歳で労働力率の上昇が見られる背景としては、大学卒などで就業する者が増えてきていること、未婚化の進展により長期的に就業を継続する者が増えてきていること、結婚・出産を経ても就業を続ける者が増えていること等の要因が考えられる(図表61)。
 
図表61 女性の年齢階級別労働力率の推移
図表61 女性の年齢階級別労働力率の推移
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 中でも、結婚・出産と就業継続の関係について見てみると、結婚に伴う退職と出産に伴う退職は異なる動きを見せていることが分かる。結婚前後に妻がどのような就業状態であったかを見ると、結婚後も就業を継続する者の割合は6割前後で推移しており、結婚退職する者の割合は1985〜1989年の37.3%から2005〜2009年の25.6%まで減少している(図表62)。一方、出産前後に妻がどのような就業状態であったかを見ると、妊娠前に就業していた者の割合が増加していることから、出産退職する者の割合が1985〜1989年の37.4%から2005〜2009年の43.9%に増加するとともに、出産後も就業を継続する者の割合も24.0%から26.8%へと微増している(図表63)。
 
図表62 結婚年別に見た結婚前後の妻の就業変化
図表62 結婚年別に見た結婚前後の妻の就業変化
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図表63 第1子出生年別に見た出産前後の妻の就業変化
図表63 第1子出生年別に見た出産前後の妻の就業変化
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 これについて、結婚前、妊娠前に就業していた者に限定して就業を継続した者の割合を見ると、結婚前に就業していた者のうち就業を継続した者の割合は1985〜1989年の60.3%から2005〜2009年の70.5%に上昇したものの、妊娠前に就業していた者のうち出産後も就業を継続した者の割合は38〜39%台で推移しており、約30年間変化がない(ただし、出産後も就労を継続した者のうち、育児休業制度を利用して就業を続けた者の割合は高まっている)ことから、女性にとって依然として仕事と子育ての両立が難しい環境となっていることが分かる(図表64)。
 
図表64 結婚・出産前後の妻の就業継続割合
図表64 結婚・出産前後の妻の就業継続割合
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(非正規雇用による就業の増加)
 また、M字カーブにおいて労働力率が高まっている25〜29歳及び30〜34歳の年齢層について、就業者の雇用形態の変化を見てみる。1987年と2007年を比較すると、25〜29歳と30〜34歳のいずれの年齢区分においても就業率は上昇しているが、「正社員」、「パート・アルバイト」、「派遣社員・嘱託・その他」の雇用形態ごとの就業率を見ると、就業率全体の上昇は、「正社員」の増加よりも、「パート・アルバイト」及び「派遣社員・嘱託・その他」の増加によるところが大きい(図表65、66)。
 
図表65 雇用形態別・年齢階級別女性の就業者割合(1987年)
図表65 雇用形態別・年齢階級別女性の就業者割合(1987年)
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図表66 雇用形態別・年齢階級別女性の就業者割合(2007年)
図表66 雇用形態別・年齢階級別女性の就業者割合(2007年)
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(管理職に占める女性の割合は低水準)
 また、管理職に占める女性の割合を見ても、十分な水準になっているとは言えない。係長、課長、部長等の職位別に見ると、女性の登用率はどの職位についても年々上昇しているが、職位が高くなればなるほど女性が占める割合は低くなっている(図表67)。
 
図表67 女性管理職の割合
図表67 女性管理職の割合
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