第2節 インフラ・交通の着実な復旧・復興
(1)総論
国土交通省が所管する各種公共施設については、家屋流出地域、原発警戒区域を除き、平成23年半ばまでにほぼ復旧が完了している。現在は応急復旧段階から本格復旧・復興段階へ移行しており、23年度から作成している事業計画及び工程表に基づき、着実に整備を推進している。今後も、被災地の要望を踏まえつつ、東北の復興を一日でも早く実現するよう、取り組んでいく。
(2)海岸対策
海岸堤防等の本復旧工事は、国施工区間(国が災害復旧を代行する区間を含む)のうち、仙台空港や下水処理場の地域の復旧・復興に重要な施設が背後にある区間については、平成25年3月末に完了した。残る区間についても、隣接する箇所等から順次復旧を進め、おおむね28年3月末までの完了を目指している。また、復旧に期間を要する湾口防波堤についても、まちづくりや産業活動に極力支障が生じないよう、計画的に復旧を進め、おおむね28年3月末までの完了を目指している。
これらの工事を進める際には、津波が越流した場合であっても堤防の効果が粘り強く発揮できるような構造を可能な限り、取り入れることとしている。また、災害廃棄物由来の再生資材を堤防盛土材として積極的に活用するとともに、周辺の景観や自然環境にも十分配慮することとしている。
(3)河川対策
河川対策については、国管理区間の堤防で被災した箇所について、極めて甚大な被害が発生するなどした2箇所を除き、被災前と同程度の安全水準(地盤沈下分を含む)を確保する本復旧を完了した。引き続き、津波の遡上が想定される区間について市町村が策定する復興計画等と整合を図りながら、5年の復興集中期間において堤防のかさ上げを推進し、平成27年度末までの完了を目指すとともに、堤防等の耐震・液状化対策、水門等の自動化・遠隔操作化を逐次実施していく。
(4)下水道
被災した下水処理場120箇所(福島県内の避難指示区域等内に位置する9箇所を除く)のうち、2箇所は汚水の発生がないため稼働の必要が無く、被害が甚大であった仙台市南蒲生浄化センターを除き117箇所は、平成24年度末までに通常レベルの処理まで復旧済である。また、被災した下水管648kmについては、24年度末現在、452kmの本復旧が完了している。引き続き、復興計画と整合を図りつつ、耐震化、耐津波化の実施と合わせ、早期の復旧・復興を目指すこととしている。
(5)土砂災害対策
平成24年梅雨期までに崩壊発生箇所等の緊急的な対策をおおむね完了した。復興に不可欠な重要交通網等に甚大な被害を及ぼすおそれが高まっている箇所等の対策は27年末までに逐次完了を予定している。
(6)道路
道路については、1)高速道路は、平成24年末までに区域見直し前の警戒区域を除き、本復旧が完了した。常磐自動車道の区域見直し前の警戒区域にかかる区間は、環境省の実施する除染と並行して、26年度(一部区間注1を除く)を供用目標として復旧・整備工事を実施中、2)直轄国道は、24年度末までに本復旧をおおむね完了(なお、国道45号の橋梁等大規模な被災箇所については、復興計画等を踏まえて復旧)、3)復興道路・復興支援道路のうち、新たに事業化した区間については、民間の技術力を活用した事業推進体制(事業促進PPP)により整備を推進している。中でも2路線・3区間(三陸沿岸道路(歌津〜本吉)、三陸沿岸道路(宮古中央〜田老)及び釜石花巻道路(釜石〜釜石西))については、地元の理解を得て、異例のスピードで事業が進捗し、新規事業化から1年以内に工事着工しており、24年度末までには、あわせて3路線・7区間について工事着工している。
(7)鉄道
東日本大震災により被災した路線のうち、三陸鉄道については、平成23年度第3次補正予算において創設した新たな支援制度を活用して同年より復旧工事に着手しており、24年4月1日には北リアス線の田野畑〜陸中野田駅間の運行が再開され、南リアス線の吉浜〜盛駅間も25年4月3日に運行再開予定である。残りの区間についても、現在復旧工事を進めているところであり、26年4月頃に全線の運行が再開される見込みである。
また、JR石巻線の渡波〜浦宿駅間、JR常磐線の浜吉田〜亘理駅間について25年3月16日に運行が再開された。さらに、関係者間において、JR常磐線の相馬〜浜吉田駅間の26年春の復旧工事着手及びJR仙石線の27年度内の全線運転再開の合意がなされた。加えて、当面の間の公共交通を確保するため、JR気仙沼線については24年12月22日に、JR大船渡線については25年3月2日に、BRT注2による仮復旧が実施されている。
なお、まちづくりと一体となった復旧が必要と考えられるJR東日本の被災6路線(山田線、大船渡線、気仙沼線、石巻線、仙石線、常磐線)のうち、復旧方針が未定の山田線、大船渡線、気仙沼線については、国土交通省東北運輸局が事務局となり、沿線自治体、JR東日本、復興局等で構成する線区別の復興調整会議の場等を通じ、復旧に当たっての課題について検討を進めているところである。
(8)港湾
港湾については、地域産業・経済の空洞化を防ぎ、地域の復興を実現するため、各港の「産業・物流復興プラン」に基づき、復旧を計画的に実施しており、震災後おおむね2年以内での復旧を目指していた産業・物流において、特に重要な施設については、おおむね工程どおり整備を進めた。さらに、復旧に期間を要する湾口防波堤については、震災後おおむね5年以内での復旧を目指して整備を進めるとともに、港湾の産業・物流機能、減災機能の強化に資する耐震強化岸壁、廃棄物埋立護岸等の整備を進め、地域の復興を促進している。
また、東日本大震災により発生した災害廃棄物の処理を進めるため、仙台塩釜港石巻港区と茨城港常陸那珂港区において海面処分場を整備し、仙台塩釜港石巻港区においては、平成25年2月より、茨城港常陸那珂港区においては、24年7月より災害廃棄物等の埋立処分を実施している。