第4節 地域公共交通の確保と観光振興

第4節 地域公共交通の確保と観光振興

(1)地域公共交通の確保
 東日本大震災によって被害を受けた地域公共交通に対しては、地域公共交通確保維持改善事業を活用して被災地のバス交通、乗合タクシー等の確保・維持を支援するため、同事業の補助要件の緩和等の特例措置を講じている。具体的には、地域をまたがる幹線バス交通ネットワークの確保・維持、また、避難所・仮設住宅・残存集落や新規住宅と、病院、商店、公的機関等の間の日常生活の移動確保を目的とする地域内のバス交通等の確保・維持について支援している。なお、地域内のバス交通等に関しては、平成25年度から、一定の要件の下で補助上限額の引上げを行う予定である。

(2)観光振興
 一刻も早い訪日需要の回復を図るため、正確で海外消費者の目線に立った情報発信を含めた訪日プロモーションを実施した。特に、東北・北関東の訪日需要回復のため、海外7市場において、商談会や観光復興PRイベントを行い、海外旅行会社による訪日旅行商品の造成促進や、海外消費者に対して、積極的に観光地域の魅力訴求を行うとともに、同市場からの海外メディアや海外旅行会社の招請も行った。また、海外主要市場のガイドブックと連携した「東北・北関東観光ガイドブック」や訪日観光における放射線等についての情報をまとめた「安全・安心小冊子」を活用するとともに、訪日外国人旅行者によるインターネット上の「口コミ」により、世界に日本の「安全・安心」や「魅力」を伝えるため、SNS注1と連動した写真コンテスト「Share your WOW!-Japan Photo Contest-」を実施した。加えて、WTTC注2、IMF・世銀総会等の大規模国際会議の機会の活用によるプロモーションの実施等、訪日観光需要の回復に向けた様々な取組みを推進した結果、平成24年の訪日外国人旅行者数は約837万人(対前年比35%増、対前々年比3%減)となった。
 国内旅行については、宿泊者数全体としては回復傾向にあるものの、観光客中心の宿泊施設はまだ厳しい状況が続いている。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、宿泊施設の延べ宿泊者数(24年7-9月期)は、前々年同時期に比べて、全国で0.2%減、東北6県注3で6.8%減、関東注4で0.4%減であり、観光客中心の施設注5の延べ宿泊者数(24年7-9月期)は、前々年同時期に比べて、全国で3.8%減、東北6県で21.9%減、関東で8.0%減となっており、地域によってはまだまだ厳しい状況である。
 国内観光需要の回復のために様々な取組みを実施しているが、特に、24年3月より、東北地域の観光需要の喚起を図るとともに、従来の観光スポットを巡る観光に加えて、地域に暮らす人々が主体となって、地域の歴史、文化、くらし等を観光資源として活かし、商店街や農山漁村集落等、地域の日常空間を観光の舞台にしていく“滞在交流型観光”の観光スタイルへの転換を目指す取組みとして、“こころをむすび、出会いをつくる”をテーマに、東北地域全体を博覧会場と見立て、30箇所のゾーンを核とした「東北観光博」を官民一丸となって実施した。加えて、東北・北関東を訪問することにより、東北・北関東の復興を応援する「東北・北関東への訪問運動」を24年3月末より本格展開しており、賛同団体の取組みを観光庁のホームページで集約・発信することで、連帯の輪を拡げていくことを目的として民間等に広く賛同を呼びかけている。


注1 Social Networking Service:ソーシャル・ネットワーキング・サービス
注2 World Tourism and Travel Council:世界旅行ツーリズム協議会
注3 東北6県:青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島
注4 関東:茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨
注5 観光客中心の施設とは、宿泊者数のうち観光目的の宿泊者が全体の50%以上と回答した施設


テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む