第3節 産業の活性化

コラム 地域のニーズを取り込み、再生を目指す中小建設企業の取組み 〜建設サービス業〜

 (株)小坂田建設は昭和30年の創業以来、岡山県の中山間地域にある旧建部町(現在は岡山市に編入)で、公共工事を中心に営業してきた中小建設企業です。昨今の公共事業予算の削減を受け、平成13年から9期連続で赤字決算が続くなど、同社もまさに倒産一歩手前の状況にありました。
 そんな同社が生き残りのためにたどりついたのが「小さなことはやってもらえない」という建設業のイメージを全面的に変えることで地域のニーズを取り込む戦略でした。21年春、同社は、トイレ詰まり、雨どいの掃除、庭の雑草取り等の家まわりから、お墓掃除、田んぼに水を入れやすくする、蜂の巣撤去等といったことまで、地域住民の暮らしの中での困りごと全般に、本業の建設業にとらわれずにワンストップ対応する「建設サービス業」をスタートさせました。同時に少額の工事でも赤字にならないよう、現場毎の日々の採算を把握する原価管理ソフトを導入しました。
 建部町の住民約6,000人の内、一部エリアを除き、ほとんどがそれまで同社のことを知りませんでしたが、住民の交流の場にもなるような自社のお仕事紹介イベントの定期開催や毎月の新聞折込通信など「知ってもらう」ための懸命な営業活動が実り、このサービスは住民に徐々に受け入れられ、また困りごとを解決することで築いた住民との信頼関係が後押しとなり、同社は墓地の改修や住宅リフォーム等の比較的大きな工事も受注するようになります。結果として業績は徐々に上向きに転じ、24年度には3期連続で黒字となるまでに回復しました。
 同社は現在、国土交通省「建設企業のための経営戦略アドバイザリー事業」の専門家派遣も利用しながら、「建設サービス業」のうち、サービス体制が十分でない建築リフォーム分野や農業分野で、顧客の多様・多方面な要望に十分に応えるための仕組みづくりを進めています。
 公共事業関係予算が限られる中、公共事業を中心に取り組んできた同社がこのような形で地域住民のお困りごと解決を糸口に民間工事にシフトし、再生の道筋をつけたことは、今後の地域の中小建設企業にとって、一つの示唆となるのではないでしょうか。

 
小坂田建設の写真

 
建設サービス業として対応している作業
建設サービス業として対応している作業


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