第2節 国際協力・国際連携の取組みを通じたイニシアティブの発揮
国土交通省では、各国との間で多国間・二国間の会合等を通じて、発展途上国を中心に、研修員の受入れやセミナー等を通じた人材育成への協力、JICA等の関係機関と連携した専門家派遣等を行っている。また、アジア地域、交通分野における国際連携、防災分野での協力、国際的な水問題への対応等の取組みを通じてイニシアティブを発揮している。
(1)アジア等新興国地域における国際連携
アジアにおける多国間での国際連携の取組みとして、「日ASEAN交通連携」の枠組みの下、物流や安全、環境等の様々な分野で協力プロジェクトの強化を推進している。平成24年11月には、インドネシアで「第10回日ASEAN交通大臣会合」が開催され、日本から提案された「ASEANにおける質の高い交通の推進」が今後10年間の日ASEAN間連携の基本的な考え方として合意されるとともに、交通の安全・安心の向上を図るため、1)交通運輸技術連携プログラムの推進、2)交通分野における防災協力の推進、3)内航船舶の海上安全改善協力の推進、4)新港湾保安向上行動計画の策定の4つの新規プロジェクトが承認された。
ミャンマーに対しては、同年11月にミャンマー運輸大臣と国土交通大臣の間で、交通分野における両国間の協力の覚書を締結し、定期的なハイレベル協議の場の設置や人材の育成・交流等、両国間で具体的な協力を進めていくことについて合意した。
インドネシアに対しては、同年7月、インドネシアにおいて第3回日インドネシア交通次官級会合を開催し、両国において「安全で質の高い交通システム」の構築を目的に、交通関係の制度やシステム等のソフトインフラについて意見交換を実施するとともに、引き続き交通分野における両国間の協力を推進していくことを確認した。
ベトナムに対しては、同年10月、東京において第3回日ベトナム交通次官級会合を開催し、両国が、ハード・ソフトの交通インフラの整備事業について議論し、分野ごとに情報や認識の共有、今後の一層の連携の確認を行った。インドに対しては、同年10月、インドにおいて第1回インド高速鉄道システム推進のための日印次官級会議を開催し、高速鉄道分野における両国間の具体的な協力を推進していくことを確認した。
ロシアに対しては、同年6月、「日露運輸作業部会」を立ち上げ、東京において第1回次官級会合を開催し、極東をはじめとしたロシアの運輸インフラの近代化等に向けて協議していくことを確認した。
(2)交通分野における国際連携
国際交通大臣会議(International Transport Forum)は、54箇国の交通担当大臣を中心に、年1回、世界的に著名な有識者・経済人を交え、交通政策に関するハイレベルかつ自由な意見交換を行う国際枠組みであり、これまで、交通分野に関する気候変動問題、グローバリゼーション等に関して議論を行ってきた。
平成24年5月の大臣会合では、「シームレスな交通」をテーマとして、議論が行われた。我が国は、アジアの国として初めて議長国を務め、経済の成長の促進、貿易の促進、雇用・教育・社会サービスへのアクセスの改善等のために、シームレス化を進める旨の大臣宣言を取りまとめた。今後とも我が国は、アジアの主要メンバーとして主体的に会議に参画していく。
(3)防災分野の協力
海外で災害が発生した際に派遣される国際緊急援助隊の救助チームや専門家チームに、国土交通省及び海上保安庁から専門家が参画している。近年では、中国四川大地震(平成20年)、ニュージーランド南島で発生した地震(23年)等へ派遣された救助チームに参加した。23年にタイで発生した洪水に対しては、官民連携の専門家チームとしての排水ポンプ車や排水対策の専門家を初めて海外であるタイに派遣した。
また、海外における被災地の教訓を我が国の防災対策へ活かすことを目的に、24年度は、タイ(洪水)、米国(ハリケーン・サンディ)等の被災地で現地調査を実施した。特に、ハリケーン・サンディは、ニューヨークを直撃し極めて甚大な被害をもたらしたが、これは先進国の大都市で発生した初めての大規模水害であることから、この教訓を我が国の首都圏等の水害対策に活かすことを目的に、国土交通省・防災関連学会合同の調査団を派遣した。
東日本大震災等によって得られた教訓や、上述したタイの洪水に対する我が国の取組みの成果を踏まえ、アジアをはじめとする災害に脆弱な国に対して、現地のニーズに応じて、防災能力の向上に資する対策をヒト・モノ・ノウハウを合わせて総合的に提供する「防災パッケージ」を戦略的に世界へ展開する取組みを進めている。
具体的には、我が国の防災に関する技術や経験を各国と共有し、当該国における防災能力向上への貢献と防災分野のビジネス機会創出を目的に、24年11月には南アフリカ、25年1月にはミャンマー、インドネシアを対象に、水・防災に係るワークショップを開催した。
(4)国際的な水問題への対応
水問題は地球規模の問題であるという共通認識の高まりを反映し、第6回世界水フォーラム(平成24年3月)、国連持続可能な開発会議(リオ+20)(同年6月)、国連水と災害に関する特別会合(25年3月)等、国際会議の場で水問題についての議論が行われた。
国土交通省では、水問題解決のための有効な手法として国際的に共通認識とされている総合水資源管理(IWRM)計画の策定支援のため、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)を中心とした「河川流域におけるIWRMガイドライン」の作成に協力するとともに、UNESCOやアジア河川流域ネットワーク(NARBO)と連携してIWRMの普及・促進に貢献している。また、北九州市、大阪市、東京都、横浜市、神戸市、福岡市及び国土交通省等からなる連合体である水・環境ソリューションハブを発足させ、セミナーや現地調査、研修を通して、途上国に下水道事業の経験、ノウハウを提供している。
さらに、世界の水災害の軽減に向けて、災害予防が持続可能な発展の鍵であるという国際共通認識を形成するため、我が国の経験・技術を発信するとともに、水災害予防の強化に関する国際連帯の形成に努めている。また、UNESCOの協力機関として認定を受けている土木研究所内の水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)では、衛星情報を活用した総合洪水解析システム(IFAS)や降雨流出氾濫モデル等解析技術等の研究開発を行っており、これらの成果を活用し、修士課程水災害リスクマネジメントコースや、水災害リスクマネジメントに係る各種短期研修での研修生受入れ等の人材育成に取り組んでいる。また、UNESCOやアジア開発銀行と共同し、アジアの水災害に脆弱な国・地域を対象に、洪水予警報システムの構築やワークショップの開催等を通じた技術協力・国際支援を実施している。