第4節 国際標準化に向けた取組み

第4節 国際標準化に向けた取組み

(1)自動車基準・認証制度の国際化

 安全で環境性能の高い自動車を早期・安価に普及させるため、我が国は国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム(UNECE/WP29)等に積極的に参加し、安全・環境基準の国際調和を推進するとともに、その活動を通じ、日本の新技術を国際的に普及させていくこととしている。このような活動を推進するため、平成23年6月、官民の代表者からなる「自動車基準認証国際化ハイレベル会議」において取りまとめられた「自動車基準認証国際化行動計画」に沿って、1)日本の技術・基準の戦略的国際基準化、2)アジア諸国との連携、3)全世界的かつ車両単位の相互承認の実現、4)基準認証のグローバル化に対応する体制の整備を着実に実施し、自動車基準認証制度の国際化を推進している。

(2)鉄道に関する国際標準化等への取組み

 欧州が欧州規格の国際標準化を積極的に推進するなど、我が国鉄道システムの海外展開に当たって、国際標準化への対応は重要な課題である。我が国の優れた技術が国際規格から排除されると既存の国内規格が淘汰される可能性があるなど、鉄道関係産業に大きな影響を与えるため、戦略的対応が必要である。このため、「鉄道技術標準化調査検討会」では、鉄道技術に関する学識経験者や鉄道関係産業と協力して、鉄道の国際規格戦略の審議、国際規格に関連する国内規格対応の審議等、積極的な活動を行っている。
 平成24年は、4月に設置された国際標準化機構(ISO)の鉄道分野専門委員会(TC269)の議長へ日本人が就任するとともに、第2回総会を日本へ誘致するなどの成果を上げた。
 また、我が国鉄道システムの更なる海外展開のため、(独)交通安全環境研究所が同年9月に、我が国では初めて鉄道分野における国際規格の認証機関として(独)製品評価技術基盤機構(NITE)認定センター(IA Japan)より認定を取得した。

(3)船舶や船員に関する国際基準への取組み

 国際的な海上運送事業は、様々な国籍の船舶・船員により営まれており、安全や環境保護に関する国際的な統一ルールに従い、適正かつ公平な競争条件の下で営まれる必要がある。我が国は従来より、SOLAS条約、MARPOL条約、STCW条約等の船舶や船員に関する条約等による国際基準の策定作業に積極的に参画し、貢献してきている。平成24年には、我が国の主導により、安全かつ環境に配慮した船舶の解体を目的としたシップリサイクル条約関連ガイドラインが策定されるなどの成果を挙げた。

(4)土木・建築基準及び認証制度の国際調和

 近年、市場の国際化が進展している土木・建築・住宅分野における外国建材の性能認定や評価機関の承認等の制度の運用、JICA等による技術協力等の施策を実施し、ISOによる設計・施工技術の規格制定に参画するなど、土木・建築基準及び認証制度の国際調和の推進に取り組んでいる。また、我が国の技術的蓄積を国際標準に反映するための対応、国際標準の策定動向を考慮した国内の技術基準類の整備・改定等について検討を進めている。

(5)高度道路交通システム(ITS)の国際標準化

 効率的なアプリケーション開発、国際貢献、国内の関連産業の発展等を図るため、ISOや国際電気通信連合(ITU)等の国際標準化機関におけるITS技術の国際標準化を推進している。
 特にITSの国際標準化に関する専門委員会(ISO/TC204)に参画し、スマートウェイの国際標準化を推進するとともに、欧米政府と協調し、ITSの標準の調和に取り組んでいる。また、自動車基準調和世界フォーラム(UN/ECE/WP29)において、先進安全自動車(ASV)に係る国際基準の策定等を目指した活動を行っている。

(6)地理情報の標準化

 地理空間情報を異なる地理情報システム(GIS)間で相互利用する際の互換性を確保することなどを目的として、ISOの地理情報に関する専門委員会(ISO/TC 211)における国際規格の策定に積極的に参画している。併せて、国内の地理情報の標準化に取り組んでいる。

(7)技術者資格の海外との相互承認

 APECエンジニア相互承認プロジェクトでは、参加国・地域間における技術資格の相互承認に基づく有資格技術者の流動化を促進している。APECアーキテクトプロジェクト(建築家登録制度)では、我が国は、平成20年7月にオーストラリアとの「APECアーキテクト日豪二国間相互認証協定」、21年7月にニュージーランドとの「APECアーキテクト日本・ニュージーランド二国間相互受入覚書」に署名し、建築設計資格者の流動化を促進している。

(8)下水道分野

 「知的財産推進計画2010(平成22年5月21日策定)」に基づき、下水道分野で国際展開を目指す我が国企業が高い競争性を発揮できる国際市場を形成することを目的として、戦略的な国際標準化を推進している。現在、再生水の灌漑利用に関する専門委員会(ISO/PC253)やアセットマネジメント分野(ISO/PC251、ISO/TC224/WG6)・クライシスマネジメント分野(ISO/TC224/WG7)等においてISO国際規格の策定に積極的に参画している。また、再生水の都市利用の国際規格については、将来的なISO規格の策定も視野に検討を進めている。


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