第3節 多国間・二国間交渉・連携等を通じた取組み

コラム 「アレクサンダー・ダルリンプル賞」を我が国がアジアで初受賞

 元海上保安庁海洋情報部長西田英男博士(在任期間:平成14年4月〜16年3月)が、24年10月2日、ロンドンにて英国水路部より、海図の作成や普及等を通して世界中の船舶の航海安全に顕著な貢献をした個人に贈られる「アレクサンダー・ダルリンプル賞」(Alexander Dalrymple Award)を受賞しました。

 
受賞した西田元海洋情報部長(右)とモンクリーフ英国水路部長(左)
受賞した西田元海洋情報部長(右)とモンクリーフ英国水路部長(左)

 同賞は、18世紀末の英国初代水路部長であるアレクサンダー・ダルリンプルの名前を冠したもので、2006年(18年)に国連総会で採択された「世界水路の日」(6月21日)を記念して制定されました。これまでに、毎年1人ずつ、世界の海図の作成等に関する水路業務の分野で著名な6名(順に、英、英、独、南ア、仏、米)が受賞しており、西田博士はアジアでは初の受賞となります。
 西田博士は海洋情報部在籍時、アジアを中心とした途上国での海図作成に関する能力向上に精力的に取り組まれました。今回の受賞では、この取組みと、それを通した船舶の航海安全確保への貢献が受賞の理由となっています。
 また、英国水路部は今回の受賞に当たって、海洋情報部が東日本大震災への対応で果たした、海上からの被災地への救援物資運搬ルートの確保等における役割について、その過程での西田博士の係りにも言及しつつ、災害復旧において水路当局が果たすべき役割の重要性を世界に示したものであるとの評価も表明しています。
 英国は海事分野で世界をリードする存在ですが、海図の分野でも同様で、現在、英国製の海図は国際航海を行う船舶の7割に使われています。我が国も、明治4年、水路部(現海洋情報部)が設立された当時、英国からの技術指導により出発した歴史があります。
 英国の技術指導を受けはじまった我が国の水路業務が、現在の海事大国である英国から高く評価されたということは大変感慨深いことであり、大きな意義を感じます。国土交通省において技術分野に携わる者にとって励みとなる受賞であり、今後とも、世界的視野を持ち、更なる技術力の向上を目指しつつ、航海安全のための水路業務の推進に努めてまいります。

 
海図を見ながらの研修風景
海図を見ながらの研修風景


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