はじめに

はじめに

 かつて、我が国には、多くの人がたどる「標準的な」ライフコースがあった−学校を卒業した後、正規雇用で就職し、20代で結婚し、子供を持つ。住居については、親元を離れて、まずは借家に住み、その後持ち家と、ライフステージに応じて住み替えをする−。

 しかし、現代の人々の暮らしは、ライフコースのそれぞれの段階で多様化しており、以前の人々の暮らしとは大きく異なるものとなっている。進学率が高まる中で失業率や非正規雇用割合は上昇しており、経済的な不安から、結婚、出産・子育てに踏み出せず、単身や夫婦のみで暮らす人々が増えている。また、郊外に一戸建てを構えるのではなく、利便性の高いまちの中心部にマンションを購入したり、民間賃貸住宅で暮らしたりする者も増えている。

 我々の暮らす世界自体も、この数十年の間に大きく変容している。交通網の発達は、以前よりも短時間・低コストで人やモノを移動させることを可能にした。また、情報通信技術の進展は、外出せずに買い物をすることや、行ったことのない国について調べること、遠く離れたところにいる家族や友人と連絡を取り合うこと等、様々なことを可能にし、我々が従来持っていた「距離感」や「時間感覚」を変えようとしている。これらの環境変化もまた、人々の暮らしを多様なものにしている。

 このように人々の暮らしが変化する中、進学・就職・結婚等のライフコースの節目を迎え、今後、社会の中核を担っていく存在である「若者」の暮らしは、今後の我が国の形を大きく左右するものと言える。若者が新たな暮らし方を模索し始めた今、国土交通行政は、その変化を踏まえて、現在及びこれからの時代を生きていく人々が豊かな暮らしを送れるよう、彼らの暮らしを支えていく必要がある。

 平成24年度国土交通白書第I部では、「若者の暮らしと国土交通行政」をテーマとし、第1章では、現在の若者を取り巻く社会経済状況の変化やその中で見られる若者の意識の変化について概観する。第2章では、現在の若者の暮らし方に具体的にどのような変化が見られるかについて、「働き方」、「住まい方」、「動き方」といった観点から分野ごとに分析を行い、人々が今後、生き生きとした暮らしを送るためにどのようなことが求められているのかを明らかにする。第3章においては、「働き方」、「住まい方」、「動き方」のそれぞれの分野において国土交通行政が今後目指すべき方向性や実施していく施策について記述する。

 また、第II部においては、国土交通行政の各分野における動向を、政策課題ごとに報告する。

 
<参考:年表>
<参考:年表>
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