第4節 交通分野における安全対策の強化

◯4 航空交通における安全対策

(1)航空の安全対策の強化
1)航空安全プログラム(SSP)
 平成26年4月から導入することとなったSSPを実効あるものとしていくため、航空の安全性を定量的に測定するために用いる指標(安全指標)及び目標値(安全目標値)の設定を含む年度計画を制定した上で、安全情報の収集・分析及び各分野の関係者と共有、業務提供者に対する検査等の航空の安全性の向上のための活動を実施していく。今後、一連の活動自体をPDCAサイクルで不断に見直し、その質の向上を図っていく。
 また、業務提供者等に対して、一定の違反を伴う事象(航空事故等を除く。)については、対話を経て、内部的に改善措置を講じることを認める(当該対話において業務提供者等から適切な是正措置等が示された場合は、不利益処分等を実施しない。)ことにより、業務提供者が安全管理システム(SMS)を確立することを支援する。

2)航空輸送安全対策
 特定本邦航空運送事業者において、乗客の死亡事故は昭和61年以降発生していないが、安全上のトラブルに適切に対応するため、航空会社等における安全管理体制の強化を図り、予防的安全対策を推進するとともに、国内航空会社の参入時・事業拡張時の事前審査及び抜き打ちを含む厳正な立入検査を通じた体系的な監査を的確に実施している。また、オープンスカイ政策の推進による外国航空会社の乗り入れの増加等を踏まえ、我が国に乗り入れる外国航空機に対して立入検査等による監視を強化してきたところである。
 
図表II-7-4-4 国内航空会社の事故件数及び発生率
図表II-7-4-4 国内航空会社の事故件数及び発生率
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3)国産ジェット旅客機の安全性審査
 現在開発が進められている国産ジェット旅客機プロジェクトに対し、設計・製造国政府として、安全・環境基準への適合性の審査を進めているところであり、同審査を適切かつ円滑に進めるため、審査体制の構築・拡充や、米国・欧州の航空当局との密接な連携を実施している。

4)ボーイング787型機バッテリートラブル対応
 平成25年1月にボーイング787型機のバッテリートラブルが発生し、数ヶ月にわたる運航停止を招いた。本事案については、米国等関係国の航空関係者と緊密に連携し、その原因究明及び再発防止策を検討したうえで、バッテリーの改修に加え利用者等に対する適切な情報開示を航空会社に要請するなど、安全・安心を確保するための措置を講じ、25年5月に有償運航を再開した。その後、26年1月に地上駐機中の787型機で類似のトラブルが発生したが、損傷等の影響の範囲は限定的で、運航中に発生しても安全な運航が継続できる事案であった。引き続き、関係者と緊密に連携し対応していく。

(2)安全な航空交通のための航空保安システムの構築
 航空保安業務に係る重大インシデントはヒューマンエラーに起因するものが大半であることから、管制官とパイロットのコミュニケーションの齟齬の防止や、管制官とパイロットに対する視覚的な表示・伝達システムの整備等のヒューマンエラー対策を推進している。
 また、災害対応、急患輸送等ヘリコプターを含めた小型航空機に対する需要が高まっていることから、その運航上の特性を考慮した低高度航空路や出発及び到着・進入方式の設定等のための検討も実施している。


注 客席数が100又は最大離陸重量が5万キログラムを超える航空機を使用して航空運送事業を経営する本邦航空運送事業者のこと


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