◯2 地球温暖化対策(緩和策)の推進
(1)低炭素都市づくりの推進
人口と建築物が相当程度集中する都市部において、都市機能の集約化とこれと連携した公共交通機関の利用促進、地区・街区レベルでのエネルギーの面的利用等のエネルギーの効率的な利用、みどりの保全・緑化の推進などによる低炭素まちづくりを促進する観点から、平成24年12月に「都市の低炭素化の促進に関する法律」が施行された。同法に基づき市町村が作成する「低炭素まちづくり計画」は、25年度末時点で11都市において作成されたところであるが、引き続き同計画に基づく取組みに対して、法律上の特例措置や各種の税制、財政措置等を通じ「低炭素まちづくり」を推進することとしている。
(2)環境対応車の開発・普及、最適な利活用の推進
1)自動車の燃費改善
「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」に基づくトップランナー制度注1の燃費基準の策定や自動車の燃費の公表等を行っており、平成19年には27年度を目標年度とした燃費基準を策定している。さらに、25年には、32年度を目標年度とする乗用車の新たな燃費基準を策定した。24年度に出荷されたガソリン乗用車のうち8割以上が27年度を目標年度とした燃費基準を達成しているほか、平均燃費値は16年度と比較して約40%向上しており、引き続きより一層の燃費改善を図ることとしている。
2)燃費性能・排出ガス低減の向上を促す仕組み
消費者が容易に識別・選択できるよう、燃費性能の高い自動車の普及促進を目的とした自動車燃費性能評価・公表制度を実施している。また、最新の排出ガス基準値よりも有害物質を低減させる自動車については、その低減レベルに応じ、低排出ガス車認定制度を実施している。なお、これらの制度による燃費性能等の表示については、「平成27年度燃費基準達成車」等のステッカーを貼付している。
3)環境対応車の普及促進
環境対応車の普及促進については、環境性能に優れた自動車(エコカー)に対するエコカー減税(自動車重量税及び自動車取得税)やグリーン化特例(自動車税)等の税制優遇措置を実施し、平成25年度におけるエコカー減税対象車の販売台数は、販売台数全体の約82%(約440万台)を占めている。
さらに、地球温暖化対策、大都市地域等における大気汚染対策等の観点から、トラック・バス・タクシー事業者を中心に、CNG自動車注2、ハイブリッド自動車、電気自動車の導入等に対する補助を行ったほか、交通の省エネ化・低炭素化に資する新たなカテゴリーの乗り物「超小型モビリティ」についても導入に対する補助を行うなど、環境対応車の普及促進のための施策を実施した。
4)次世代大型車等の開発、実用化、利用環境整備
次世代大型車の開発・実用化を促進するため、平成23年度より、高効率ハイブリッドトラック、電気・プラグインハイブリッドトラック及び高性能電動バス等の技術開発を進めるとともに、これらの試作車に係る実使用条件下での実証走行試験等を行った。今後、実用化に向けた取組みを進める。
5)エコドライブの普及・推進
関係省庁と連携し、平成24年11月の「エコドライブ推進月間」に「エコドライブ10のすすめ」の見直しを行ったのに加え、シンポジウムや講習会等を集中的に実施したほか、プレスリリース等により、エコドライブの普及啓発活動に努めている。さらに、自動車運送事業者等へのエコドライブ管理システム(EMS)注3普及・促進に努めている。
(3)交通流対策等の推進
日本の自動車は世界トップレベルのカタログ燃費だが、走行燃費は米国並みである。このため、交通流の円滑化による走行速度の向上が実効燃費を改善し、自動車からの二酸化炭素排出量を減らすことから、様々な交通流対策を実施している。具体的には、都市部における交通混雑を解消させるため、都心部を通過する交通の迂回路を確保し都心部への流入の抑制等の効果がある環状道路等幹線道路ネットワークの整備、交差点の立体化、開かずの踏切等を解消する連続立体交差事業等を推進するとともに、円滑かつ安全な交通サービスの実現のため、ITS技術を用いて収集したビッグデータを活用し、既存ネットワークの最適利用を図るなど道路を賢く使う取組みを推進している。さらに、道路空間の再配分等による自転車利用環境の整備を推進している。また、道路施設の低炭素化を進めるため、LED道路照明灯の整備や再生可能エネルギーの活用等を実施している。
図表II-8-1-2 主要先進国における新車カタログ燃費と実走行燃費
(4)公共交通機関の利用促進
自家用乗用車から公共交通機関へのシフトは、自動車の走行量削減になり、地球温暖化対策の面から推進が求められている。このため、ICカードの導入等情報化の推進や乗継ぎの改善等による公共交通利便性向上のほか、エコ通勤優良事業所認証制度による事業所単位でのエコ通勤の取組みを推進するとともに、地域独自のエコ通勤推進施策との連携を行うなどの通勤交通グリーン化を展開した。さらに、これまで実施した「環境的に持続可能な交通(EST)モデル事業」の取組み成果及び分析・検証結果について、EST実現に取り組む地域に対し情報提供を全国規模で実施した。
図表II-8-1-3 モビリティ・マネジメントによる「エコ通勤」の推進
(5)物流の効率化等の推進
国内物流の輸送機関分担率(輸送トンキロベース)はトラックが最大であり、5割を超えている。トラックのCO2排出原単位注4は、大量輸送機関の鉄道、内航海運より大きく、物流部門におけるCO2排出割合は、トラックが9割を占めている。国内物流を支えつつ、CO2の排出を抑制するために、トラック単体の低燃費化や輸送効率の向上と併せ、トラックの自営転換注5を含め、鉄道、内航海運等のエネルギー消費効率の良い輸送機関の活用を図ることが必要である。更なる環境負荷の小さい効率的な物流体系の構築に向け、共同輸配送、モーダルシフト、大型CNGトラック導入、物流拠点の低炭素化、港湾地域の低炭素化の取組みについて支援を行っている。また、10トントラックと同等の大きさの鉄道用31フィートコンテナの導入補助、新方式の鉄道用12フィート冷蔵コンテナの実証実験等を実施しているほか、省エネ船の建造促進等内航海運・フェリーの活性化に取り組んでいる。加えて、「エコレールマーク」(平成26年3月末現在、商品138件(192品目)、取組み企業83件を認定)や「エコシップマーク」(25年12月末現在、荷主82者、物流事業者98者を認定)の普及に取り組んでいる。また、海上輸送と陸上輸送の結節点である港湾では、港湾地域における省エネルギー化、再生可能エネルギーの導入円滑化及び利活用、CO2の吸収源拡大等の取組みを推進している。さらに、国際海上コンテナターミナル等の整備により、国際貨物の陸上輸送距離削減を図っている。
このほか、関係省庁、関係団体等と協力して、グリーン物流パートナーシップ会議を開催し、荷主と物流事業者の連携による優良事業者への表彰や普及啓発を行っている。
図表II-8-1-4 グリーン物流パートナーシップ会議を通じた取組みの推進
(6)鉄道・船舶・航空における低炭素化の促進
1)鉄道分野の更なる環境性能向上に資する取組み
鉄道は他のモードに比べて環境負荷の小さい交通機関であるが、更なる負荷の軽減を図るため、蓄電池電車の技術開発のほか、環境省と連携し、鉄道関連施設や鉄軌道車両への低炭素化・省エネ化に資する設備等の導入を推進している。
2)海運における省エネ・低炭素化の取組み
内航海運においては、「海運グリーン化総合対策」として、スーパーエコシップ注6等の普及促進、省エネ・低炭素化に資する新技術や設備の導入に対する補助等により、船舶の省エネ化を促進している。外航海運においては、国際的な枠組み作りと技術開発・普及促進を一体的に推進する観点から、船舶からのCO2排出量の50%削減を目標とする世界最先端の海洋環境技術開発を平成25年度より支援するともに、我が国は、25年1月の国際海運におけるCO2排出規制(燃費規制)の導入に続きIMOにおいて進められている燃費報告制度(実運航での燃費の「見える化」)や経済的規制等の国際的枠組み作りの議論を主導している。また、天然ガス燃料船の早期実用化・導入へ向けた環境整備として、25年6月に天然ガス燃料補給時の安全対策などを定めた標準的なガイドライン・オペレーションマニュアル等を取りまとめた。
3)航空分野のCO2排出削減の取組み
飛行時間・経路の短縮を可能とする広域航法(RNAV)、運航者が希望する最も効率的な高度を飛行できるUPR注7方式の導入、最小のエンジン推力を維持し、降下途中に水平飛行を行うことなく継続的に降下する継続降下運航(CDO)方式の導入等の航空交通システムの高度化や、航空機用地上動力設備(GPU)の利用促進、空港内GSE注8車両のエコカー化等のエコエアポートづくりを推進している。また、管制機関と航空会社が連携をとり、効率的な運航を目指す「アジア太平洋環境プログラム」(ASPIRE)注9へ参画するなど、国際的な取組みの強化も実施するほか、航空分野のCO2排出削減に向けた国際的枠組作りの議論を主導している。さらに、平成25年度からは、代替航空燃料の普及促進に係る取組みを新たに開始している。
(7)住宅・建築物の省エネ性能の向上
民生部門のエネルギー消費量は、他の部門に比べると過去からの増加が顕著であり、住宅・建築物の省エネルギー性能の向上は喫緊の課題である。このため、「省エネ法」に基づく省エネ基準について、外皮基準に加えて、設備性能や創エネ分も含めて総合的に評価する一次エネルギー消費量基準の導入を行った(平成25年度施行)。さらに、「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づき、高い省エネ性能を有する低炭素建築物の認定制度を開始し、その普及を図っている。
このほか、省エネルギー性能を消費者に分かりやすく表示する住宅性能表示制度や建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)、住宅・建築物の居住性(室内環境)の向上と地球環境への負荷の低減等を総合的な環境性能として一体的に評価する建築環境総合性能評価システム(CASBEE)の開発・普及を図っている。
また、住宅・建築物の省エネ化を推進するため、先導的な省CO2技術を導入するリーディングプロジェクトや住宅・建築物の省エネ改修、中小工務店によるゼロ・エネルギー住宅の取組みに対する支援を行うとともに、(独)住宅金融支援機構の証券化支援事業の枠組みを活用した金利引下げ等を実施している。また、民間事業者等の先導的な技術開発の支援、設計・施工技術者向けの講習会の開催等により、省エネ住宅・建築物の設計、施工技術等の開発・普及を図っている。
さらに、既存ストックの省エネ対策を促進するため、既存住宅・建築物の省エネ改修工事に対する税制上の支援措置等を講じている。
(8)下水道における省エネ対策等の推進
高効率機器の導入等による省エネ対策、下水汚泥の固形燃料化やバイオガスの有効利用等の新エネ対策、下水汚泥の高温焼却等による一酸化二窒素の削減を推進している。
(9)建設機械の環境対策の推進
ハイブリッド等のCO2排出削減効果の高い建設機械を低炭素型建設機械として型式認定する制度を実施し、低利融資制度等の導入補助により支援を行っている。また、主要な建設機械である油圧ショベル、ブルドーザ、ホイールローダについて燃費基準値を設定し、これを達成した建設機械を燃費基準達成建設機械として型式認定する制度を実施している。
(10)都市緑化等によるCO2の吸収源対策の推進
都市緑化等は、京都議定書における温室効果ガス吸収量報告の対象となる「植生回復活動」として、国際的にも位置付けられている。また、ヒートアイランド現象の緩和による熱環境改善を通じた都市の低炭素化や、その意義や効果に関する普及啓発についても京都議定書目標達成計画において位置付けられており、市町村が策定する総合的な緑に関するマスタープランである「緑の基本計画」等に基づき、都市公園の整備、道路、港湾等及び民有地における緑化を積極的に推進している。
注1 家電や自動車等の製品を指定し、その時点で最も消費電力量や燃費水準等が優れた製品を参考に数値基準を定め、製造事業者・輸入業者に対し、販売する製品が目標年度までに当該基準を満たすことを求めるもの。
注2 Compressed Natural Gas自動車(天然ガス自動車)のこと。
注3 自動車の運行において計画的かつ継続的なエコドライブの実施とその評価及び指導を一体的に行う取組み
注4 貨物1トンを1km輸送するときに排出されるCO2の量
注5 自家用トラック(自家用貨物を自ら運ぶトラック)から、複数荷主の積合せ貨物の運送等によって輸送効率の向上を図り、運送コストを低下させるため営業用トラック(他人からの依頼に応じ、貨物を有償で運ぶトラック)へ転換すること
注6 電気推進システムを採用し、CO2、NOxや燃費の向上に資する優れた環境性能と経済性を有する次世代内航船
注7 User Preferred Route
注8 Ground Service Equipments
注9 Asia and Pacific Initiative to Reduce Emissions