我が国においては、世界に先がけて少子高齢社会に直面する中で、中長期的に経済成長を続けていくため、成長・拡大を続ける国際マーケットの獲得競争に打ち勝っていくことが重要となっています。特に、世界のインフラ市場は、急速な都市化と経済成長により、今後の更なる拡大が見込まれています。このような膨大なインフラ需要を公共投資だけで賄うのは困難であることから、近年では、民間の資金とノウハウを活用したPPPによる運営型の事業が増加しており、これが、各国の民間企業にとって大きな事業機会となっています。
このような中、「日本再興戦略(平成25年6月14日閣議決定)」では、2020年に約30兆円のインフラシステムの受注を実現するという目標を掲げ、官民一体の取組みを推進することとしています。交通や都市開発の分野における運営型の事業は、長期的にはリターンが期待されることに加え、安全性や信頼性の高さやライフサイクルコストの低さという点で、日本が強みを活かせる事業です。一方で、これらの事業には、大きな初期投資、長期にわたる整備、運営段階の需要リスクという特性があるため、民間だけでは参入が困難です。
民間においても、インフラシステム海外展開に取り組む機運が高まっています。国土交通省が開催した「インフラ海外展開推進のための有識者懇談会(家田仁座長)」では、25年2月の取りまとめに至る議論において、民間の有識者から、プロジェクトのリスクを軽減するための施策が必要であるとの意見をいただきました。
これら政府方針や民間ニーズを踏まえ、国土交通省は、海外の交通や都市開発のプロジェクトに対して「出資」と「事業参画」を一体的に行う(株)海外交通・都市開発事業支援機構(以下「機構」という。)の創設に向けた取り組みを進めています。機構に関する国の予算として、平成26年度財政投融資計画において、1,095億円(産業投資注1585億円、政府保証注2510億円)が盛り込まれました。また、26年4月、機構の設立に関する法律が成立しました。
機構は、以下の支援を行うことにより、交通と都市開発の海外市場に対する我が国企業の参入の促進を図り、もって我が国経済の持続的な成長に寄与することを目的としています。また、これを通じ、日本の技術とノウハウが、当該事業が行われる国や地域の人々の役に立つことも期待されています。
1)出資
日本企業が海外でインフラ事業に参入する際、関係企業は、現地で事業運営を行う事業体を設立します。機構は、これら関係企業と共同して現地事業体に出資します。
2)事業参画
機構は、出資先の現地事業体に対して、以下の事業参画を行います。
- 日本の技術や経験を活かすため、役員や技術者などの人材を派遣。
- 日本政府の出資機関として、相手国と交渉。