第2節 国際交渉・連携等の推進

◯4 個別の分野における多国間・二国間の取組み

(1)土地・建設産業分野
 平成25年10月のボスポラス海峡横断鉄道開通式に併せて、イスタンブールにおいて建設産業分野における協力関係の構築等を目的として、国土交通副大臣が出席して日・トルコ建設会議を開催した。
 また、ミャンマーにおいては、26年1月に、ベトナムにおいては26年2月に、土地・建設産業分野における法制度整備に関する関係省庁等とのセミナーをそれぞれ開催した。

(2)都市分野
 平成25年10月にベトナムとの間で環境共生型都市開発の推進に関する協力覚書を締結し、26年3月には、公共交通一体型都市開発に関するセミナーを開催した。
 このほか25年度においては、インド及びフィリピンにおいて都市交通システムに関するセミナーを開催したほか、ミャンマー及びベトナムにおいて駐車場政策に関する意見交換を実施した。
 また、韓国、EU、フランスとの間で二国間会合を開催し、都市政策等に関する情報交換や交流を行っている。
 さらには、我が国の官民が連携して、都市交通システムの海外展開について情報共有・意見交換・海外への情報発信を行うべく、26年2月に、都市交通システム海外展開研究会を開催した。

(3)水分野
 水問題は地球規模の問題であるという共通認識のもと、国際会議等において問題解決に向けた議論が行われている。平成25年は国連「国際水協力年」として様々な取組みが行われ、国土交通省では、第2回アジア・太平洋水サミット(25年5月、タイ)、水の協力に関するハイレベル国際会議(同年8月、タジキスタン)、ブダペスト水サミット(同年10月、ハンガリー)、2014年世界水の日記念式典(26年3月、東京)等の国際会議での議論に積極的に参画し、水と衛生、防災に関する取組みの強化についてメッセージを発信した。
 また、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)やアジア河川流域機関ネットワーク(NARBO)と連携し、水問題解決のための有効な手法とされている統合的水資源管理(IWRM)計画の策定支援のため「河川流域におけるIWRMガイドライン」等の作成、研修等を通じてIWRMの普及・促進に貢献している。
 また、韓国、米国とは、河川・砂防・水資源管理等に係る二国間会合を開催し、情報交換、技術協力等を推進している。
 ベトナムとは、農業農村開発省と24年6月に締結した水資源施設管理の協力に関する覚書に基づくワークショップを26年3月に開催し、水分野に関する協力を推進している。建設省との間では、22年に締結した下水道分野に関する協力覚書を26年3月に更新し、下水道推進工法の規格策定支援を実施した。
 インドネシアとは、25年9月の日尼建設次官級会合において水資源分野や下水道分野に関して意見交換を行うなど、協力関係を深めている。
 南アフリカ共和国に関しては、25年7月にJICAと共同で同国地方政府の下水道技術者を招聘し、維持管理に関する研修を実施した。同年9月には、第3回日・南アフリカ水資源管理ワークショップを開催し、同国水省との共同決議を更新するなど、協力関係を強化している。
 サウジアラビアとは、25年11月に下水道分野の政府間協議を実施したほか、26年1月に下水再生水利用に関する技術や下水道事業の民営化への支援に向けた本邦研修を実施した。
 このほか、北九州市、大阪市、東京都、横浜市、神戸市、福岡市、川崎市、埼玉県、日本下水道事業団、滋賀県、国土交通省等からなる連合体である、水・環境ソリューションハブが、セミナーや現地調査、研修を通じて、途上国に下水道事業の経験、ノウハウを提供している。

(4)防災分野
 我が国が過去の災害経験で培った防災に関する優れた技術や知見を活かし、相手国の防災機能の向上及びインフラの海外展開に寄与する取組みを進めている。
 具体的には、防災面での課題を抱えた新興国等を対象に、両国の産学官で協働し、互いのニーズに適合した技術や解決策を追求する「防災協働対話」の取組みを関係機関とも連携しながら、様々な機会を捉えて、国別に展開することとしており、「インフラシステム輸出戦略」にも位置づけられた。これまでに、ミャンマー、タイ、ベトナム、南アフリカ、インドネシア及びトルコとそれぞれ「防災協働対話」の実施に関する文書を締結し、これに基づき、平成26年2月にはミャンマーと、同年3月にはベトナムとそれぞれ「防災協働対話」の一環として官民のワークショップを開催した。
 また、26年度早期に、産学官が連携し、防災分野における、国際競争力を持つ製品・サービスの開発や海外への売り込みを図ることを目的とした「日本防災プラットフォーム」を設立予定である。なお、本組織は「防災協働対話」の国内の受け皿としての機能も期待される。
 他方、世界の水災害被害の軽減に向けて、災害予防が持続可能な発展の鍵であるという国際共通認識を形成するため、我が国の経験・技術を発信するとともに、水災害予防の強化に関する国際連帯の形成に努めている。また、UNESCOの協力機関として認定を受けている(独)土木研究所内の水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)では、衛星情報を活用した総合洪水解析システム(IFAS)や降雨流出氾濫モデル等の開発及び途上国におけるリスクマネジメントの研究を行うとともに、これらの成果を活用して博士課程、修士課程をはじめ各種短期研修を行い、途上国における人材育成に取り組んでいる。また、UNESCOやアジア開発銀行と共同し、アジアの水災害に脆弱な国・地域を対象に、洪水予警報システムの構築やワークショップの開催等を通じた、技術協力・国際支援を実施している。
 この他、25年3月には日EU双方の防災対策の充実を目的として、EU防災総局と国土交通省の間での防災協力に関する書簡の交換を実施し、これに基づき閣僚級・実務者級会合をそれぞれ実施した。またブラジルとは、近年の急速な都市化の進行に伴う災害リスクの上昇の改善を図るため、同年8月のRIO国際防災セミナーを通じて、土砂災害対策リスクアセスメントの能力強化のための情報交換、技術協力を推進している。
 さらに、海外で発生した大規模な水害・土砂災害に際し、国土交通省から専門家を派遣し、災害状況の把握や今後の対策等について技術的助言を実施している。例えば、同年7月にインドネシアで発生した大規模天然ダムの決壊では、迅速に技術者を派遣し、今後の対策等について助言を実施した。また、同年11月にフィリピン中部を襲った台風第30号(Haiyan)に際しては、国際緊急援助隊の専門家チームとして、災害状況把握及び復興計画基本方針等に対する助言・指導、並びに災害評価を行うための専門家を派遣した。

(5)道路分野
 日本の道路技術に対する各国の理解と信頼性の向上を目的として、ミャンマー及びトルコを対象に舗装の再生技術やITS技術のモデルプロジェクトを実施し、現地で実際の施工やデータ収集・処理の実演を行った。また、我が国が得意とするトンネル技術の活用が想定される新規案件発掘のため、ラオス及びモロッコで調査を実施した。
 このほか、アジアを中心とした10カ国にて、高速道路会社や道路関係の民間企業の協力の下、道路分野の政策・技術に関するセミナーを開催し、各国のニーズに対応する我が国の道路技術をPRした。
 また、世界道路協会(WRA)における各技術委員会やアンドラで開催された冬期道路会議等に積極的に参画し、構造物の老朽化対策や交通安全等の各分野において世界各国との技術交流・情報共有を推進している。
 このほか、9年ぶりに日本で開催したITS世界会議(平成25年10月、東京)では、65カ国から約2万人の参加者を得て、展示やセッション、最新のITS技術を体験できるデモンストレーション等が行われ、先進的なITS技術をPRした。また、会議に併せて閣僚級会談が開催され、国土交通副大臣らが参加各国の閣僚級とITS政策に関する情報交換を行った。

(6)住宅・建築分野
 韓国、中国、フランス、カナダ及びドイツとの間で定期的に局長級の二国間会合を開催し、住宅政策、建築基準、建築技術等に関する情報交換等を行っている。平成25年10月には、中国と住宅産業の発展をテーマに、26年3月にはドイツと建築物の環境対策をテーマにそれぞれ意見交換を行った。
 また、ミャンマーとの間でも25年8月に初めて両国政府による日緬建築住宅会議を行い、建築基準等について議論するとともに、10月には民間も含めたセミナーを実施し、両国企業間の情報交換を行った。

(7)鉄道分野
 高速鉄道分野においては、インド、タイ等において新幹線技術の導入に向けた取組みを進めている。また、都市鉄道についても海外展開の推進に取組んでいる。
 平成25年8月及び9月には、国土交通大臣がタイ、ベトナム、シンガポール等を訪問し、我が国高速鉄道及び都市鉄道システムの導入に向けたトップセールスを行った。また、訪日した各国要人にも、それぞれの関心に応じて視察など我が国鉄道システム導入についての働きかけを行った。さらに国土交通副大臣・国土交通政務官も、アジア諸国をはじめ英国、米国等各国の要人に対して働きかけを実施した。このほか、25年は、インドやミャンマー等について官民が連携して鉄道セミナーを開催した。

(8)海事分野
 国際海事機関(IMO)においては、船舶の安全や海洋環境保護など海事分野の多くの点について世界的な取組みを行っている。そのほか、我が国と関係の深い国との二国間会談や国際協力といった取組みを行っている。二国間会談について平成25年度は、韓国及びEUとの間で局長級会談を実施し、クルーズ産業の振興や温室効果ガス排出削減対策、旅客船の安全規制等の重要事項について情報共有や意見交換を実施した。
 また、国際協力について25年度は、フィリピンに対して船舶安全政策に関する専門家を派遣したほか、ミャンマー等東南アジア諸国において船員教育者への研修等を実施した。

(9)港湾分野
 海外港湾EDIシステムのミャンマーでの導入に向けた取組みや、モザンビーク等での面的・広域的な港湾開発に係る調査の実施、「海外港湾物流プロジェクト協議会」の活動(平成25年7月に第4回、26年3月に第5回を開催)等を通じ、我が国の港湾関連産業(港湾物流・インフラ関連企業)の海外展開を支援している。
 また、25年11月、日中韓による第14回北東アジア港湾局長会議を開催し、クルーズの促進等、最近の港湾行政に関する情報交換等を行った。その他、国際航路協会(PIANC)や国際港湾協会(IAPH)等の国際会議の場を通じて、我が国の技術基準の海外展開の推進や情報交換を実施している。

(10)航空分野
 平成25年7月、第50回アジア太平洋航空局長会議において、我が国と空域を接する国と地域を含むアジア太平洋地域における航空の安全性や航空セキュリティ、国際民間航空の持続可能な成長の達成に向けて意見交換を行った。また、同年11月には、韓国と航空政策対話を実施し、今後も航空分野全般において広く協力していくことを確認した。

(11)物流分野
 平成24年7月に開催された第4回日中韓物流大臣会合における合意に基づき、シャーシの相互通行の推進、北東アジア物流情報サービスネットワーク(NEAL-NET)の機能強化、パレットの品質や荷役機器の寸法等の標準化等について、日中韓3国間の協力を推進している。
 また、日ASEAN交通連携の枠組みのもと、日本とASEAN各国との二国間政策対話において、各国における物流環境の改善に係る協議等を行っているところ、25年10月には日タイ物流政策対話、26年1月には日インドネシア物流政策対話をそれぞれ開催した。このほか、アジア物流圏全体の物流の質を高めるため、25年12月には、メコン地域物流訓練センターに物流事業に精通した我が国専門家を派遣し、同センター講師の養成に取り組んだ。更には、アセアン域内の連結性を高めるため、国際高速RORO船を活用したアジア海陸一貫輸送網の構築に係る実証調査を実施した。

(12)測量・地図分野
 国土交通省においては、UNCE-GGIM注1に積極的に参画し、地球規模の測地基準系の構築に貢献するとともに、地球地図プロジェクト注2推進のため、途上国への技術支援、国際会議等の場を通じた普及活動を実施している。さらに、UN-GGIM-AP注3の事務局長を務めるほか、関係各国と協働で地殻活動監視を推進している。
 このほか、24年の第10回UNCSGN注4及び第18回IHC注5において、政府代表団として地名表記に関する議論等に参加した。4年の第6回UNCSGN以降、韓国等は、「日本海という名称を東海(East Sea)に改称するか併記すべき」との主張を繰り返している。国土交通省は、外務省等関係省庁と連携し、国際社会に日本海単独呼称への正しい理解と支持を求めている。

(13)気象・地震津波分野
 世界の国々の気象業務の実施・推進に協力するため、世界気象機関(WMO)の枠組みの下、気象観測データや技術情報の相互交換に加え、我が国の技術を活かした台風や気候等の情報を各国に提供している。また、国際連合教育科学文化機関・政府間海洋学委員会(IOC)の枠組みの下、北西太平洋における津波情報を各国に提供し、防災に貢献している。

(14)研究分野
 我が国の優れたインフラ関連技術等のアジア諸国への普及を見据えて、ベトナム、インドネシア、インド等との研究連携ロードマップに基づき、国土交通省は現地政府研究機関と連携して現地適応性を高めた環境舗装等の建設技術の基準類の共同研究等を行っている。平成25年度においては、ベトナム及びインドネシアと共同ワークショップを開催し、研究連携プロジェクトにおける技術的討議、研究協力に関する意見交換を行った。また、現地JICA専門家との連携、中堅・若手研究者の招へい等も推進している。

(15)海上保安分野
 北太平洋海上保安フォーラム(日、加、中、韓、露、米6箇国)及びアジア海上保安機関長官級会合(アジア18箇国・1地域)並びにロシア、韓国及びインドとの二国間長官級会合、連携訓練等を通じて、捜索救助、海上セキュリティ対策等の各分野で海上保安機関間の連携・協力を積極的に推進している。
 また、国際海事機関(IMO)の航行安全小委員会において作業グループの議長を務めているほか、国際水路機関(IHO)の各委員会等における海図作成に関する基準の策定、コスパス・サーサット機構における北西太平洋地域の取りまとめ、国際航路標識協会(IALA)の各委員会等における次世代船舶自動識別装置(AIS)の開発に係る検討、アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)に基づく情報共有センターへ当庁職員を派遣するなど、国際機関へ積極的に参画している。このほか、開発途上国における海上保安分野の能力向上支援の取り組み等を通じて、国際貢献を果たしている。


注1 地球規模の地理空間情報管理に関する国連専門家委員会
注2 地球環境問題の分析等に必要な基盤的な地理情報データベース(地球地図データ)を世界各国の地理空間情報当局の自主的協力の下で整備するプロジェクト
注3 国連地球規模の地理空間情報管理に関するアジア太平洋地域委員会
注4 国際連合地名標準化会議
注5 国際水路会議
 


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