第2節 自然災害対策

コラム 海岸法が15年ぶりに大幅改正されました

 今後30年以内の発生確率が70%と切迫する南海トラフの地震等による大規模な津波等に備え、海岸の防災・減災対策を強化するとともに、高度成長期等に集中的に整備された海岸堤防等の海岸保全施設の老朽化に対応し、海岸の適切な維持管理を推進するため、平成26年6月に海岸法を15年ぶりに改正しました。

◯今回の改正のポイント

1.減災機能を有する堤防等の海岸保全施設への位置付け
 東日本大震災では、堤防を越えた津波により、堤防が壊れ、背後地に甚大な被害が発生しました。東日本大震災以降、海岸保全施設の整備に当たっては、比較的発生頻度の高い津波を対象に防護することを基本としています。一方で、設計津波を超える津波に対しては、海岸保全施設の効果が粘り強く発揮できる減災機能を有する構造と
 することとなり、今回の改正では施設と一体的に設置された根固工又は樹林(「緑の防潮堤」)等の「粘り強い構造」の堤防等を法律上明確に位置付け、津波、高潮等に対する減災対策をより一層推進することとしました。
 また、関係者が、海岸の防災・減災対策に係る事業間調整等について協議を行うための協議会を組織することができることとしました。

2.水門・陸閘(こう)等の操作規則等の策定等
 東日本大震災で、水門等の操作に関係していた多数の方が犠牲になったことを踏まえ、施設管理者に、水門・陸閘等の操作方法、訓練等に関する操作規則等の策定を義務付けました。また、災害時に障害物があり陸閘を閉鎖できない場合などに、海岸管理者が障害物の処分等を行う緊急措置等の規定を整備しました。

3.海岸保全施設の維持・修繕基準の策定
 今後、急速な老朽化が見込まれる海岸保全施設を良好な状態に保つよう、海岸管理者の海岸保全施設に係る維持・修繕の責務を法律上明確化するとともに、計画的に点検とその結果を踏まえた的確な修繕を行う等の予防保全の観点に立った維持・修繕の基準を策定しました。

4.座礁船舶の撤去命令
 これまで、海岸保全区域内の海域に座礁した船舶を放置等された場合に、海岸管理者は船舶の撤去等の命令ができませんでしたが、座礁等した船舶が海岸保全施設を損傷等するおそれがある場合は、船舶所有者に対し、船舶の撤去等を命令することができることとしました。

5.海岸協力団体制度の創設
 近年、民間の法人・団体が海岸において多種多様な活動を実施しています。地域の実情に応じた海岸管理の充実を図るため、海岸保全に資する清掃、植栽、希少な動植物の保護等の様々な活動を自発的に行い、海岸管理を適正かつ確実に行う法人・団体を海岸管理者が海岸協力団体として指定することができることとしました。
 
減災機能を有する堤防等の海岸保全施設への位置付け
減災機能を有する堤防等の海岸保全施設への位置付け

 
海岸保全施設の維持・修繕基準の策定
海岸保全施設の維持・修繕基準の策定

 
水門・陸閘等の操作規則等の策定
水門・陸閘等の操作規則等の策定

 
座礁船舶の撤去命令
座礁船舶の撤去命令

 
海岸協力団体制度の創設
海岸協力団体制度の創設


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