第2節 国際交渉・連携等の推進

■3 個別の分野における多国間・二国間の取組み

(1)国土政策分野
 韓国との間で定期的に局長級の二国間会合を開催し、国土政策、地域振興政策、適正な土地利用の促進等、両国間の類似課題に関する情報交換等を実施している。フランスとの間では、国土政策、地域振興政策について、仏国土整備・地域競争力庁(DATAR、現CGET、国土平等委員会事務局)と意見交換を実施している。また、平成25年より、クウェートの国家開発計画策定支援のための政策対話を開始し、同年8月には新しい国家開発計画策定に係る政策対話促進について覚書を署名し、26年10月の計画開発担当大臣訪日に際して、政策対話を実施した。

(2)土地・建設産業分野
 土地・建設産業分野における関係企業の海外進出に対する支援を目的として、ベトナムにおいて建設会議を実施した。また、拠点国の政府・企業と連携したインフラ分野での第3国展開等を促進するため、シンガポール及びトルコにおいて建設会議等を開催した。
 さらに、ASEAN諸国における建設・不動産企業のビジネス環境の整備のため、日本の関連制度の紹介等を目的として、ベトナム及びミャンマーにおいてセミナーを開催した。

(3)都市分野
 環境共生型都市開発、都市交通システム及び立体駐車場の海外展開を推進するため、「(一社)海外エコシティプロジェクト協議会」及び「都市交通システム海外展開研究会」による官民連携の取組みや、アジア新興国等へのトップセールス、フィリピン及びインドネシアで「都市交通セミナー」の開催等を行った。
 また、日本の都市のシティセールス等を推進するため、国際的な不動産見本市である「MIPIM」の日本版である「MIPIM JAPAN」の平成27年5月の第1回開催に対する支援を行った。さらに中国及び韓国との間で都市政策に関する二国間会合を開催した。

(4)水分野
 水問題は地球規模の問題であるという共通認識のもと、国際会議等において問題解決に向けた議論が行われている。平成26年10月に日本で「第23回国連水と衛生に関する諮問委員会」における水循環・水災害特別セッション、同年11月にフランスで「OECD水ガバナンスイニシアチブ会合」、27年3月に日本で「第3回国連防災世界会議」等の国際会議での議論に積極的に参画し、水と衛生、防災に関する取組みの強化についてメッセージを発信した。
 また、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)やアジア河川流域機関ネットワーク(NARBO)と連携し、水問題解決のための有効な手法とされている統合的水資源管理(IWRM)計画の策定支援のため「河川流域におけるIWRMガイドライン」等の作成、研修等を通じてIWRMの普及・促進に貢献している。
 また、韓国及び米国とは、河川・砂防・水資源管理等に係る二国間会合を開催し、情報交換、技術協力等を推進している。
 ベトナムとは、農業農村開発省と24年6月に署名した水資源施設管理の協力に関する覚書に基づくワークショップを26年12月に開催し、水分野に関する協力を推進している。建設省との間では、22年に署名した下水道分野に関する協力覚書を26年3月に更新し、27年1月に第7回政府間会議を開催するとともに、下水道推進工法の規格策定、下水道関連法制度整備及び管路更生工法の普及を支援している。
 インドネシアとは、26年11月の「日尼建設次官級会合」において下水道分野に関して意見交換を行うなど、協力関係を深めている。
 このほか、北九州市、大阪市、東京都、横浜市、神戸市、福岡市、川崎市、埼玉県、日本下水道事業団、滋賀県、国土交通省等からなる連合体である、「水・環境ソリューションハブ」が、セミナーや現地調査、研修を通じて、途上国に下水道事業の経験、ノウハウを提供している。

(5)防災分野
 我が国が過去の災害経験で培った防災に関する優れた技術や知見を活かし、相手国の防災機能の向上及びインフラの海外展開に寄与する取組みを進めている。
 具体的には、防災面での課題を抱えた新興国等を対象に、両国の産学官で協働し、互いのニーズに適合した技術や解決策を追求する「防災協働対話」の取組みを関係機関とも連携しながら、様々な機会を捉えて、国別に展開することとしており、「インフラシステム輸出戦略」にも位置づけられている。これまでに、平成26年4月及び7月にはトルコと、同年11月にはインドネシアと、同年12月にはベトナムと、27年2月にはミャンマーとそれぞれ「防災協働対話」の一環として官民のワークショップを開催した。
 また、26年6月に、産学官が連携し、防災分野における、国際競争力を持つ製品・サービスの開発や海外への売り込みを図ることを目的とした「日本防災プラットフォーム」が設立された。本組織は「防災協働対話」の国内の受け皿としても活動しており、民間各団体で連携し、我が国技術を相手国政府へ紹介、提案等を行っている。
 他方、世界の水災害被害の軽減に向けて、災害予防が持続可能な開発の鍵であるという国際共通認識を形成するため、我が国の経験・技術を発信するとともに、水災害予防の強化に関する国際連帯の形成に努めている。また、UNESCOの協力機関として認定を受けている(独)土木研究所内の水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)では、衛星情報を活用した総合洪水解析システム(IFAS)や降雨流出氾濫モデル等の開発及び途上国におけるリスクマネジメントの研究を行うとともに、これらの成果を活用して博士課程、修士課程をはじめ各種短期研修を行い、途上国における人材育成に取り組んでいる。また、UNESCOやアジア開発銀行とともに、主にアジアで水災害に脆弱な国・地域を対象に、洪水予警報システムの構築やワークショップの開催等を通じた、技術協力・国際支援を実施している。
 この他、25年3月には日EU双方の防災対策の充実を目的として、EU防災総局と国土交通省の間での防災協力に関する書簡の交換を実施し、これに基づき27年2月には実務者級会合を開催した。また、26年12月にスイスで開催された「第3回日・スイス科学技術合同委員会」において、土砂災害のリスク管理をテーマに議論し、本分野における技術的な発展のため両国の協力の重要性を確認した。同年12月に開催された「OECDハイレベルリスクフォーラム」に参加し、防災投資と災害被害の算出について我が国の事例を紹介し議論に貢献した。さらに、国土交通省から派遣した専門家が、災害状況の把握や今後の対策等について技術的助言を実施している。

(6)道路分野
 ASEAN地域への日本企業が進出しやすい土壌を形成するため、国際的道路網を支える舗装技術やITSによる大型車両管理の共同研究を、日ASEAN交通連携の枠組を活用して平成26年8月に各国に提案し、技術基準の策定に向けた検討を開始した。加えて、日本の道路技術に対する各国の理解と信頼性の向上を目的として、マレーシア、ミャンマー、ベトナムを対象にITS技術、交通安全対策及び舗装管理システムのモデルプロジェクトを実施した。また、我が国が得意とする道路技術の活用が想定される新規案件発掘のため、ミャンマー及びフィリピンで調査を実施した。さらに、インド、インドネシア、ミャンマー、ベトナム等アジア各国と、高速道路会社や道路関係の民間企業の協力の下、道路分野の政策・技術に関する二国間会議を開催し、各国のニーズに対応する我が国の道路技術をPRした。このほか、世界道路協会(WRA)では、総会・各技術委員会等に積極的に参画し、今後の方針策定をリードするとともに、政策及び技術の各分野において世界各国との技術交流・情報共有を推進している。

(7)住宅・建築分野
 国際建築基準協力委員会(IRCC)等の国際会議へ出席し、建築基準等に係る最新動向について関係国間での情報交換を行った。
 二国間としては、韓国、中国、フランス、ミャンマー、インドネシアとの会合を開催し、住宅政策、省エネ建築、高齢者向け住宅等に関する情報交換等を行った。
 ミャンマーに対しては、この他緬国建築基準セミナーや政府職員等の招聘などを通じ、幅広く技術協力を行った。
 さらに、モンゴル及びラオスにおいて、相手国大臣からの要請に応じ、建築基準セミナーを開催した。

(8)鉄道分野
 高速鉄道分野においては、インド、マレーシア・シンガポール等において新幹線技術の導入に向けた取組みを進めており、都市鉄道についても海外展開の推進に取り組んでいる。平成26年度には、太田国土交通大臣がマレーシア、インド等を訪問し、我が国鉄道システムの導入に向けたトップセールスを行った。また、訪日した各国要人にもセールスを行ったほか、現場視察などを通じて働きかけた。さらに国土交通副大臣・大臣政務官も、アジア諸国等各国の要人に対して働きかけを実施した。このほか、26年度は、マレーシア、シンガポール、インド等において官民が連携して鉄道セミナーを開催した。

(9)自動車分野
 平成26年1月、オーストラリアと自動車の安全基準等に関する協力に合意した。これに基づき、同年9月に第1回二国間会合を開催し、両国の自動車認証制度、輸入車取扱制度及びリコール制度について情報交換を行った。27年1月には、マレーシアとも同様に協力について合意し、今後自動車基準認証分野における二国間協力を深化させていくこととした。また、26年8月、中国と第5回日中自動車交通交流促進会議を実施し、事業用自動車・危険物輸送に関する法的枠組み・安全基準、バス高速輸送システム(BRT)の現状・導入促進策をテーマに意見交換を行った。

(10)海事分野
 海事分野では、IMOにおける世界的な議題への対応の他、局長級会談等を通じた二国間の議題への対応を行っている。平成26年度には、米国、パナマ及び韓国との間で局長級会談を開催し、新たなエネルギー海上輸送ルート、パナマ運河拡張、内航旅客船の安全対策等について情報共有や意見交換を実施した。この他、ASEAN諸国との間ではマラッカ・シンガポール海峡における水路再測量及び海図整備プロジェクトやクルーズ振興プログラムが同年11月に日ASEAN交通大臣会合で承認されるなど、協力する取組みを充実させた。

(11)港湾分野
 ミャンマー、ケニア及びモザンビークでの港湾整備・運営参画、ミャンマーでの海外港湾EDIシステムの導入、ベトナムでの港湾技術基準の導入等のプロジェクトを推進するため、人材育成の充実、「海外港湾物流プロジェクト協議会」を通じた意見・情報交換等を推進している。また、平成26年11月、日中韓による「第15回北東アジア港湾局長会議」を開催し、クルーズの促進等、最近の港湾行政に関する情報交換等を行った。その他、国際航路協会(PIANC)や国際港湾協会(IAPH)等の国際会議の場を通じて、我が国の技術基準の海外展開の推進や情報交換を実施している。

(12)航空分野
 平成26年5月、フランスと「民間航空分野における技術協力に関する覚書」に署名し、今後の定期的な会合の開催など、協力を進めていくこととした。同年11月には、「第51回アジア太平洋航空局長会議」において、「緊密な連携・協調を通じた民間航空における将来の課題への対処」をテーマに航空交通容量の拡大、航空分野における環境対策をはじめ、航空全般に関するアジア太平洋地域各国の取組みについて意見交換を行った。

(13)物流分野
 平成26年8月に「第5回日中韓物流大臣会合」を横浜で開催した。当該大臣会合の枠組みのもと、シャーシの相互通行の拡大、北東アジア物流情報サービスネットワーク(NEAL-NET)のサービス開始等、日中韓3国間の物流分野における協力を推進している。
 また、日ASEAN交通連携の枠組みのもと、二国間政策対話において物流環境の改善に係る協議等を行っており、同年12月にはベトナムと、27年1月にはミャンマーと、物流政策対話を開催した。同年3月には、ASEANにおける優秀な現地人材の確保のため、学生等を対象とした人材育成事業をベトナムにおいて実施した。さらには、我が国の質の高い物流システムの海外展開に向け、アジア物流パイロット事業として、ミャンマーにおける貨物鉄道のコンテナ化に向けた調査をはじめ、3件の実証事業を実施した。

(14)地理空間情報分野
 国土交通省においては、地球規模の地理空間情報管理に関する国連専門家委員会(UNCE-GGIM)や国際測量者連盟(FIG)に積極的に参画し、地球規模の測地基準系の構築に貢献するとともに、国連地球規模の地理空間情報管理に関するアジア太平洋地域委員会(UN-GGIM-AP)の事務局長を務めて、関係各国と協働で地殻活動監視を推進している。また、地球地図プロジェクト推進のため、途上国への技術支援、国際会議等の場を通じた普及活動を実施している。また、国際連合地名標準化会議(UNCSGN)及び国際水路会議(IHC)における地名表記に関する議論等に政府代表団として参加し、韓国等による「日本海という名称を東海(East Sea)に改称するか併記すべき」との主張に対しては、外務省等関係省庁と連携し、国際社会に呼称「日本海」への正しい理解と支持を求めている。

(15)気象・地震津波分野
 世界気象機関(WMO)の枠組みの下、気象観測データや技術情報の交換に加え、我が国の技術を活かした台風情報等を提供している。また、国際連合教育科学文化機関・政府間海洋学委員会(IOC)の枠組みの下、北西太平洋における津波情報を各国に提供している。

(16)研究分野
 我が国の優れたインフラ関連技術等の普及を見据えて、ベトナム及びインドネシアにおける現地政府研究機関と連携し、現地適応性を高めた交通安全、環境舗装等の基準類を作成するため、ロードマップに基づく共同研究等を行っている。平成26年度には、ベトナム及びインドネシアと共同ワークショップを開催し、技術的討議、研究協力に関する意見交換を行った。また、現地JICA専門家との連携、中堅・若手研究者の招へい等も推進している。

(17)海上保安分野
 北太平洋海上保安フォーラム(日本、カナダ、中国、韓国、ロシア及び米国6カ国)及びアジア海上保安機関長官級会合(アジア18カ国・1地域)並びにロシア及びインドとの二国間長官級会合、連携訓練等を通じて、捜索救助、海上セキュリティ対策等の各分野で海上保安機関間の連携・協力を積極的に推進している。
 また、我が国はIMOにおける船舶自動識別装置(AIS)信号所に関するガイドライン策定のほか、国際水路機関(IHO)の各委員会等における海図作成に関する基準の策定、コスパス・サーサット機構における北西太平洋地域の取りまとめ、国際航路標識協会(IALA)の各委員会等におけるAISの開発に係る検討、アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)に基づく情報共有センターへ当庁職員を派遣するなど、国際機関へ積極的に参画している。このほか、開発途上国における海上保安分野の能力向上支援の取組み等を通じて、国際貢献を果たしている。


注 地球環境問題の分析等に必要な基盤的な地理情報データベース(地球地図データ)を世界各国の地理空間情報当局の自主的協力の下で整備するプロジェクト


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