第1節 ICTの利活用による国土交通分野のイノベーションの推進

■5 ICTの利活用による高度な水管理・水防災

 近年情報技術が伸展する中、新たな技術を現場にあてはめることにより水管理・水防災の高度化を進めている。
 河川・流域の監視のため、雨量観測においては、局所的な雨量をほぼリアルタイムに観測可能な新型レーダXRAIN(国土交通省XバンドMPレーダネットワーク)の整備を行っているほか、流量・水位観測においては、ADCP(超音波のドップラー効果を応用した流速計)やCCTV等の映像を活用した画像解析(図表II-10-1-3 図-1)といった新たな技術の導入・実用化を進めている。また災害時の浸水範囲の把握にあたっては、合成開口レーダ(SAR)やSNSへの投稿や様々な位置情報等のビッグデータの活用を検討している。
 また、航空レーザ測量(LP)による高精度の地形データの取得に加え、モービルマッピングシステム(MMS)による画像情報を活用した維持管理の効率・効果の向上を図る取組みを進めている。
 こうして得られた雨量・水位情報や高精度の地形データ等を用いて、従来よりも高度な洪水予測モデルである「分布型流出モデル」による洪水シミュレーション・リスク把握(図表II-10-1-3 図-2)に取り組む等、更なる危機管理を進めている。
 
図表II-10-1-3 高度な水管理・水防災のためのICTの利活用例
図表II-10-1-3 高度な水管理・水防災のためのICTの利活用例

 また、豪雨等により発生する土砂災害に対しては、平常時より広域的な降雨状況を高精度に把握する雨量レーダ、火山監視カメラ、地すべり監視システム等で異常の有無を監視している。また、大規模な斜面崩壊の発生に対し、迅速な応急復旧対策や的確な警戒避難による被害の防止・軽減のため、発生位置・規模等を早期に検知する大規模崩壊監視警戒システムの整備を推進している。
 下水道分野においては、センサー・ロボット等による現地調査の高度化・効率化、ビッグデータの集約・分析技術等による効率的な下水道経営、シミュレーション技術・予測技術等による的確な施設運転を実現するための検討を進めている。


注 大規模崩壊監視警戒システムとは、1)斜面崩壊に伴い発生する地盤振動から崩壊発生位置や規模を推測する振動センサー、2)崩壊位置の確認や規模の計測を行う衛星画像解析、3)雨量レーダの技術等を組み合わせて活用することで大規模な土砂災害の発生を早期に把握し、関係機関への情報配信を行うシステム(図表II-10-1-3 図-3)


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