第2節 経済動向とインフラ整備

コラム 地域の活動とインフラが一体となった魅力ある地域づくり

 前述の「手づくり郷土(ふるさと)賞」を受賞した地域の取組みの中には、身近なインフラを利用した地域活性化の取組みも多く見られます。
 秋田県仙北市では、NPO法人癒しの渓流・里・まちネットが主体となり、砂防施設を利用した地域の活性化に取り組んでいます(図表1-2-20、図表1-2-21)。2005年に完成した生保内(おぼない)川の大暗渠(あんきょ)砂防えん堤は、事業計画策定時から防災機能に加え、環境、景観配慮、住民参加型の施設として計画されました。ユニバーサルデザイン施設として設計が行われたことで、すべての方が見学・利用のしやすい施設となっています。同NPO法人は2005年より「癒しでウォーク」を毎年開催し、車いすの方、幼稚園児を含め水辺や森林ウォークを楽しむ100名以上の人たちが交流を深めています。また、多数の学校や団体の活動の場になるとともに、環境と災害をテーマにした市民フォーラムを開催するなど、自然との触れあい、地域防災への意識の向上に努める活動が行われています。
 
図表1-2-20 砂防えん堤周辺のユニバーサルデザイン化により、幅広い方が交流
図表1-2-20 砂防えん堤周辺のユニバーサルデザイン化により、幅広い方が交流

 
図表1-2-21 砂防えん堤の上を見学する園児達(遊びと学習の場に)
図表1-2-21 砂防えん堤の上を見学する園児達(遊びと学習の場に)

 また、佐賀県鹿島市では、1989年頃より、疲弊した町に元気を取り戻したいと地域住民が活動を始めたのをきっかけに、江戸時代から続く「肥前浜宿(ひぜんはましゅく)のまちなみ」を利用して、まちづくりに取り組んでいます(図表1-2-22、図表1-2-23)。現在は地元有志によるNPO法人肥前浜宿水とまちなみの会が中心となり、古くからある酒蔵を活かしたコンサートや展示会の開催、「酒蔵ツーリズム」の展開等による観光産業の振興に取り組み、2015年度の「鹿島酒蔵ツーリズム・肥前浜宿花と酒まつり」では7万人の来場者で賑わうなど、先進事例として全国の注目を浴びています。こうした知名度の向上に伴い移住者が増加しており、同NPO法人では移住希望者への対応や地域の課題となっている空き町家対策にも取り組むことで、更なる地域の活性化に取り組んでいます。
 
図表1-2-22 肥前浜宿花と酒まつり(鹿島酒蔵ツーリズム)
図表1-2-22 肥前浜宿花と酒まつり(鹿島酒蔵ツーリズム)

 
図表1-2-23 酒蔵を利用したイベント(地元高校生のファッションショー)
図表1-2-23 酒蔵を利用したイベント(地元高校生のファッションショー)


注 2006年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された


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