第2節 官民連携によるインフラの効率的な整備と運用

■1 国内のPPP/PFI市場

(1)PPP/PFIの活用状況
 PPP(Public Private Partnership)とは、公共サービスの提供において何らかの形で民間が参画する手法を幅広くとらえた概念であり、民間の関与の仕方によって多様な分類がある。代表的なものとしてPFI(Private Finance Initiative)や包括的民間委託等がある(図表2-2-1)。
 
図表2-2-1 主要なPPP手法
図表2-2-1 主要なPPP手法

 モニターアンケートにて、地方公共団体によるインフラの管理が、人材の不足や財政的な理由から難しくなっていることについて国民の認識を尋ねたところ、77.3%の人が聞いたことがあると回答した(図表2-2-2)。また、インフラ整備に民間資金を利用することについて、重要、やや重要と考える人が79.5%を占めており、国民の間でも、官民連携の必要性が認識されていると言える(図表2-2-3)。
 
図表2-2-2 インフラ管理体制の維持が困難な状況への理解
図表2-2-2 インフラ管理体制の維持が困難な状況への理解
Excel形式のファイルはこちら

 
図表2-2-3 インフラ整備への民間資金活用に関する意識
図表2-2-3 インフラ整備への民間資金活用に関する意識
Excel形式のファイルはこちら

 代表的な官民連携の手法であるPFIでは、事業に関わる資金調達を民間が行う。1999年7月に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)」が制定されて以降、PFIの事業数、事業費は年々増加しており、2014年度の事業数は489件、事業金額は4兆5,015億円にのぼる。国土交通省関連の事業実績は、2016年1月1日時点で累計151件あり、事業主体別では地方公共団体の事業件数の伸びが大きい(図表2-2-4)。
 
図表2-2-4 事業件数の推移(累計)
図表2-2-4 事業件数の推移(累計)
Excel形式のファイルはこちら

 これまで、我が国のPFIを利用した国土交通省関連事業は、庁舎や公営住宅等が中心であり、道路や下水道事業等への活用事例はまだ少ない。また、投資回収別の事業形態では、民間が整備した公共施設等の費用や維持管理・運営費用等を公的主体が対価(サービス購入料)として支払う形態である「サービス購入型」が114件と、全体の75%を占める(図表2-2-5)。
 
図表2-2-5 事業類型別事業件数(2016年1月1日時点)
図表2-2-5 事業類型別事業件数(2016年1月1日時点)
Excel形式のファイルはこちら

 PFIの事業類型には、前述のサービス購入型のほか、施設の利用料収入のみで資金を回収する独立採算型、サービス購入料と施設利用料の両方から資金を回収する混合型がある。独立採算型では、運営リスクを民間が負担する一方で、民間による利用料金の設定やサービス内容の決定が行われることがあり、一般的にサービス購入型に比べ、創意工夫の余地が大きい。

(2)PPP/PFI導入の取組み
 インフラやその提供するサービスに対するニーズの多様化を受け、各事業の目的や地域の実情に合ったPPPの手法を取り入れていくことが重要となっている。以降では、効果的なPFI手法の代表例であるコンセッション方式(公共施設等運営権制度)と、包括的民間委託等による地方におけるPPP導入の取組みについて紹介していく。

(コンセッション方式(公共施設等運営権制度))
 コンセッション方式は、2011年のPFI法の改正により導入された方式で、利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を公的主体が有したまま、民間が施設の運営を行う(図表2-2-6)。施設利用者からの料金収入にて資金回収を行う独立採算型の事業で、公的主体が所有権を有することで、一定の公共性を保ちながら、民間による安定的で自由度の高い運営を可能とし、利用者ニーズを反映した質の高いサービスを提供することができる。主に、空港、下水道、有料道路にて導入が進められている。
 
図表2-2-6 日本のコンセッション方式のスキーム
図表2-2-6 日本のコンセッション方式のスキーム

■仙台空港
 国が管理する仙台空港は、2006年度をピークに乗降客数、貨物取扱量ともに伸び悩んでいたが、2011年3月の東日本大震災の復興のシンボルとして、仙台空港にかける期待は高まっていた(図表2-2-7、図表2-2-8)。そのため、空港の運営に民間のノウハウを取り入れながら、空港と周辺施設を一体的に運営し、東北地方の持つポテンシャルを最大限発揮することや、地域と空港が一体となった運営を行うことで、東北地方の活性化を目指していた。
 
図表2-2-7 仙台空港乗降客数推移
図表2-2-7 仙台空港乗降客数推移
Excel形式のファイルはこちら

 
図表2-2-8 仙台空港貨物取扱量推移
図表2-2-8 仙台空港貨物取扱量推移
Excel形式のファイルはこちら

 本事業は、2012年頃より宮城県の呼びかけで官民一体となった検討が開始され、2013年3月には、官民共通の指針となる「仙台空港及び空港周辺地域の将来像」が策定され、仙台空港の民間運営委託の実現からおおむね30年後の目標として、乗降客数600万人/年、貨物取扱量5万トン/年が掲げられた。また、2013年6月に「民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律」が策定されたことで、空港におけるコンセッション方式導入の枠組みが明確となり、本格的に検討が進められた。こうした官民協働による明確な空港の運営ビジョンの形成と、法律の整備が進み、2014年6月にコンセッション方式による公募が開始された。
 2015年12月1日に東急前田豊通グループが設立した仙台国際空港(株)に、当初30年、最長65年の運営権が設定された(図表2-2-9)。同社の事業提案では、国際線の拡充、エアラインの就航意欲を喚起する料金体系の導入により就航路線を拡大することや、東北ブランドの積極的な発信により航空需要を拡大すること等が計画されている。また、仙台空港を起点とした交通ネットワークの整備により、東北各地へのアクセス向上と、経済効果の波及を目指している(図表2-2-10)。本件は、空港におけるコンセッション方式導入の第1号案件であり、今後も官民及び地域が一体となった空港運営により、東北地方の活性化が期待される。
 
図表2-2-9 仙台空港のコンセッション方式スキーム
図表2-2-9 仙台空港のコンセッション方式スキーム

 
図表2-2-10 仙台国際空港(株)の事業実施方針(主なもの)
図表2-2-10 仙台国際空港(株)の事業実施方針(主なもの)

■関西国際空港・大阪国際空港
 関西国際空港(関空)及び大阪国際空港(伊丹)については、「関西国際空港及び大阪国際空港の一体的かつ効率的な設置及び管理に関する法律」(平成23年法律第54号)に基づき、コンセッションにより民間事業者のノウハウを最大限活用することを通じ、関空の整備に要した費用に係る債務の早期かつ確実な返済を図りつつ、関空の国際拠点空港としての再生・強化及び関空・伊丹両空港の適切かつ有効な活用を通じた関西全体の航空輸送需要の拡大を図ることを目指していた。
 
図表2-2-11 関西国際空港の発着回数と外国人旅客数の推移
図表2-2-11 関西国際空港の発着回数と外国人旅客数の推移
Excel形式のファイルはこちら

 まず2012年4月に新関西国際空港(株)(新関空会社)が設立(国出資100%)され、同年7月に関空・伊丹両空港の経営統合が行われた。新関空会社は、コンセッションの実現に向けて、「経営戦略」及びそのアクションプランである「中期経営計画」を策定し、両空港の更なる事業価値の向上に取り組むとともに、2014年7月、「関西国際空港及び大阪国際空港特定空港運営事業等実施方針」を策定・公表するなど、民間事業者の公募に係る手続きを開始した。2015年11月にオリックス(株)及びフランスの空港運営会社であるヴァンシ・エアポートを主要構成員とするコンソーシアムが優先交渉権者として選定され、同年12月、同コンソーシアムが設立した関西エアポート(株)に運営権が設定され、新関空会社との間で実施契約が締結された。
 コンセッションの期間は2016年4月から2060年3月までの44年間であり、運営権対価等は、関西エアポート(株)が着陸料・商業売上等の空港運営収入から毎年度支払う(図表2-2-12)。また、関西エアポート(株)は、空港運営に支障をきたさないよう、実施契約及び新関空会社が示した要求水準等に従い事業を実施することとなる一方、新関空会社は、適切な空港運営が確保されているかモニタリングを行うこととなる。
 
図表2-2-12 関西国際空港・大阪国際空港のコンセッション方式スキーム
図表2-2-12 関西国際空港・大阪国際空港のコンセッション方式スキーム

 関西エアポート(株)が示した事業実施方針によると、マーケティング機能の強化、戦略的料金設定による更なる路線誘致やLCC事業等を促進することで航空系事業を強化するとともに、非航空系事業では、商業施設のレイアウト変更等による収益増加を目指すなど、自社のノウハウを活かした収益拡大策を示している(図表2-2-13)。
 
図表2-2-13 関西エアポート(株)の事業実施方針(主なもの)
図表2-2-13 関西エアポート(株)の事業実施方針(主なもの)

 空港の運営には、本来の目的である旅客や貨物の輸送に加え、商業施設や宿泊施設の運営等、多様な能力が必要とされる。本件は、空港運営の経験を有する海外企業と、オリックス(株)をはじめ、地域を代表する国内企業とが連携して取り組む事業であり、民間事業者の柔軟な創意工夫による空港ビジネスの展開を可能とするものである。それにより、両空港がこれまで以上に発展することで関西の航空需要の拡大に貢献し、我が国の産業、観光等の国際競争力の強化及び関西経済の活性化に寄与することが期待される。

■浜松市公共下水道終末処理場(西遠処理区)
 2005年の市町村合併で、静岡県が管理する西遠流域下水道事業が浜松市へ移管されることが決定し、2016年4月に移管とされたが、浜松市では職員減少による維持管理の技能承継等に課題を抱えていた。また、同事業は今後老朽化に伴う施設の適切な維持更新が必要であり、人口減少に伴い使用料収入も減少すると見込まれていたことから、官民連携を利用した事業の効率化が検討された。
 
図表2-2-14 浜松市西遠下水道の概要
図表2-2-14 浜松市西遠下水道の概要

 長期契約による効率的な管理と、民間の創意工夫を活かした運営が期待できるとして、コンセッション方式の導入が検討され、最終的に、浄化センターとポンプ場について運営権を設定する部分型コンセッションの導入が決定されている。業務範囲には、施設の維持管理と改築に加え、新たな処理工程の導入や太陽光発電等の独立採算事業も認められている(図表2-2-15)。
 
図表2-2-15 運営権者の業務範囲
図表2-2-15 運営権者の業務範囲

 また、改築を行う際は、民間による対象設備のリストアップに基づき、市が改築計画を作成することや、改築費用は市による企業債注46や国費を主要財源としつつ、民間も負担を負うことで、事業費抑制のインセンティブが働く仕組みとなっている。
 今後は、移管後2年間は業務委託にて対応し、2018年より同制度による運営を開始する方針である。
 我が国の下水道施設は老朽化により大量更新の時期を迎えており、浜松市同様の課題を抱える地方公共団体も多い。一方で、下水道事業は採算性が厳しく、管理やリスク分担が難しいとされており、コンセッション方式を柔軟に活用することで、民間の創意工夫を取込み、地方公共団体の財政負担の縮減を図っていくことが望まれる。

■愛知県道路公社
 地方道路公社が実施する有料道路事業へのコンセッション方式の導入に向けて、2015年通常国会において、民間事業者による公社管理有料道路の運営を可能とする構造改革特別区域法一部改正法が成立・施行された。
 2015年8月に愛知県が国家戦略特別区域に指定され、9月に国家戦略特別区域計画注47が認定された。その後、愛知県道路公社において、同年10月に実施方針、11月に募集要項が公表された。愛知県有料道路運営等事業の範囲は、運営権設定8路線(図表2-2-16)の維持管理・運営業務のほか、改築業務や既存パーキングエリアにおける売店の営業等の附帯事業等からなる。現在、事業者の選定手続き等を実施している。
 
図表2-2-16 事業対象となる有料道路と料金徴収期間
図表2-2-16 事業対象となる有料道路と料金徴収期間

(地域づくりにおける官民連携)
 地方では、財政制約への対応と地域経済活性化の手段として、積極的にPPPが導入されている。また、その形態は様々で、地域特性と事業の目的に合った手法が導入されており、その過程では、民間事業者や住民とのコミュニケーションが重要になっている。以下では各地の取組みについて紹介を行う。

■函南町地域活性化・交流・防災拠点整備事業(BTO注48方式、混合型)
 静岡県の函南(かんなみ)町は、観光資源の豊富な伊豆半島の北部に位置し、2013年度には東駿河湾環状道路が函南塚本ICまで延伸したことで、東名高速道路及び新東名高速道路からの交通利便性が向上していた。函南町では、同環状道路の整備に合わせ、伊豆半島の玄関口となり、伊豆全体の「観光拠点」となることを想定するとともに、静岡県東部・伊豆半島全体の情報発信拠点を整備し、賑わいのあるまちづくりを推進していた。また、同町周辺はマグニチュード8クラスの東海地震や南海トラフ巨大地震の発生が想定されており、同町を通る国道136号は緊急輸送道路に位置づけられている。
 
図表2-2-17 函南町周辺図
図表2-2-17 函南町周辺図

 このような背景を踏まえ、「交通安全機能」、「観光振興・地域活性化機能」、「防災機能」を兼ね備えた施設の整備・運営を、官民協働で行うことが検討された。2012年度には事業化に向け、国の先導的官民連携支援事業を利用した事業の委託調査が実施され、災害内容に応じた官民のリスク分担や、地域活性化につながるように官民の役割を最適化する事業スキームについて検討が進められた。また、町長を座長とした函南「道の駅・川の駅」整備推進協議会小委員会による検討も進められ、同事業のPFI方式での実施が決定された。
 2014年8月に実施方針が公表され、事業方式はBTO方式が採用された。事業期間は2015年11月から2032年4月までの16年5ヶ月で、施設整備期間が約1年5ヶ月、維持管理・運営・運営期間を15年としている。函南町は、施設の整備費や維持管理・運営費を事業者側へ支払うが、物産販売所や飲食施設等の運営事業は、民間の創意工夫が働くよう、事業者が直接利用者より収入を受け取る独立採算型を採用している(図表2-2-18)。これにより、行政による適切な運営管理が行われるとともに、民間による地場産品や観光資源等を利用した、地域の賑わい創出や観光産業の活性化が期待される。
 
図表2-2-18 函南町PFI事業スキーム
図表2-2-18 函南町PFI事業スキーム

 募集に当たっては、民間事業者の応募意欲を高めるため、実施方針公表前に民間のアイディアを募集しており、実際の審査では民間事業者へのヒアリングを重視するとともに、事業提案の配点を高くした。また、業務が多岐に渡ることから、構成する企業体(SPC)の出資について設計・建設期間及び維持管理・運営期間の各段階において、最もふさわしい企業が代表企業となれるよう出資者間の株式の譲渡を可能としている。このような取組みにより、2つの企業体より応募があり、2015年7月に事業者が選定された。選定された事業者(SPC)は、地元企業とPPP/PFIのノウハウを有する都市圏の企業から構成されており、効率的な運営が可能になるとともに地元企業のノウハウの蓄積や地域の活性化が期待される。
 本件は、事業の計画段階から官民の対話が行われることで、民間事業者及び地域住民の関心が高まり、地域が一体となった交流拠点の形成と地域の活性化が期待される取組みと言え、現在、事業化に向けた整備が進められている。

■宮崎県西口拠点整備事業(公的不動産の有効活用)
 宮崎県と宮崎市は、未整備となっていた宮崎駅前の県と市の公有地を活用し、商業施設と住民サービス施設、中心市街地の結節点となる交通センター等を整備し、中心市街地の活性化を検討していた。商業施設等の整備・運営には、官民連携の手法が導入され、地元企業十数社が出資する宮崎グリーンスフィア特定目的会社(TMK)が実施主体となった。
 事業期間は2010年3月から2030年2月までの20年間とされ、整備・運営を行う施設には、バスターミナルや広場等の公共施設と、ホテル、商業施設、オフィス等の入る複合施設や立体駐車場等の民間施設があり、官民が分担して整備・運営を行っている(図表2-2-19)。
 
図表2-2-19 官民の業務分担
図表2-2-19 官民の業務分担

 また、TMKが整備・運営を行う施設については、底地となる市と県の所有地に事業用定期借地権を設定し、施設の所有権はTMKに設定されている(図表2-2-20)。
 
図表2-2-20 公的不動産と民間施設の位置づけ
図表2-2-20 公的不動産と民間施設の位置づけ

 こうした民間の資金やノウハウの取り込みにより、周辺住民や施設へ配慮したゆとりある空間の整備や、オフィス施設では効果的なテナントの誘致が計画され、新たな雇用や商業の場の創出が行われている。この整備を含めた宮崎市による中心市街地活性化の取組みにより、2011年9月に本施設が開業した後の宮崎市の商業環境や魅力に対する市民の満足度も総じて改善している(図表2-2-21)。
 
図表2-2-21 商業及び産業に関する「商業等満足度(DI値)」
図表2-2-21 商業及び産業に関する「商業等満足度(DI値)」

 また、本件では県・市は民間より定期借地権に基づく地代収入も得られており、未利用となっていた公的不動産を効果的に整備することで、公的主体の財政負担が軽減されるとともに、民間需要の創出と地域の活性化につながっている。

■福島県国道4号及び県道の維持管理事業(包括的民間委託)
 福島県は、インフラの維持管理に関して、今後老朽化等による費用の増大や、人口減少等に伴うニーズの多様化に応じるため、維持管理業務の生産性向上が必要と考えていた。また、2016年4月に国道4号が国から県へ移管されることに伴い、職員が不足することへの対応や、業務の効率化を図るため、包括的民間委託の導入等、官民連携を拡大した手法の導入を検討していた。
 事業スキームの構築に当たって、維持管理を行う民間が適切な利益を享受することや、業務の内容自体を高度化し魅力ある事業とすることが検討されるとともに、官側の職員作業の軽減、維持管理コストの低減等、官民各々にメリットがある仕組みを構築・導入することが基本方針とされた。これにより、業務の包括的な民間への委託が検討され、初年度となる2016年度は、契約期間を1年とし、国道4号と交差する県道の一部について、道路維持やパトロール、除雪等道路系の業務を包括して発注することが決定された(図表2-2-22)。今後は業務プロセスやコスト等のモニタリングを行い、次年度以降の委託内容について検討が進められる。
 
図表2-2-22 2016年度の委託範囲と対象路線
図表2-2-22 2016年度の委託範囲と対象路線

 また、2015年11月に実施した民間事業者との意見交換では、民間側よりエリアの拡大や事業規模の拡大、契約期間の複数年化等の意見が出ており、福島県は、将来的に委託する業務について、河川等の道路以外の分野への拡大や、エリアの拡大、複数年契約の導入等を検討している。その他、地域に精通した企業の参画が必要といった意見や、さらに、それらの企業を統括する監理監督者の設置が望ましいといった意見等もあり、福島県は、これらの意見に対して、2016年度に包括的民間委託の試行を実施しながら、その導入の可能性とその効果について検討を進めていく(図表2-2-23)。
 
図表2-2-23 福島県が検討している将来の維持管理の全体像
図表2-2-23 福島県が検討している将来の維持管理の全体像

 現状、我が国では維持管理における包括的民間委託の事例が少なく、業務のノウハウ、地方公共団体間の情報共有が不足していることから、国土交通省では福島県・三条市・宇部市等の維持管理における包括的民間委託の実施を目指す地方公共団体と協力して、各種課題の共有や改善策の具体的な検討を行っている。
 以上のように、効果的な官民連携を進めていくためには、官民の対話と、双方がwin-winとなるようなスキームづくりが重要である。それにより、民間需要が喚起され、官民それぞれが強みを活かした、インフラの整備・運営が可能になると言える。


注46 管路や施設の建設・改良事業等の資金に充てるために、国等から借りる長期借入金のこと。
注47 構造改革特区の規制の特例措置について、国家戦略特区計画に記載し総理の認定を受けることで活用が可能。
注48 Build Transfer Operateの略称。民間事業者が施設等を建設し、施設完成直後に公共施設等の管理者等に所有権を移転し、民間事業者が維持・管理及び運営を行う事業方式のこと。


テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む