第2節 インフラ・交通の着実な復旧・復興

第2節 インフラ・交通の着実な復旧・復興

(1)総論
 国土交通省が所管する公共インフラについては、応急復旧段階から本格復旧・復興段階へ移行し、復興の事業計画及び工程表に基づき、着実に整備を推進している。今後も、被災地の要望を踏まえつつ、東北の復興を一日でも早く実現するよう取り組んでいく。

(2)海岸対策
 海岸堤防等の本復旧・復興工事は、平成28年3月末時点において、復旧・復興工事を行う677の地区海岸のうち、550地区で着工、152地区で完了している。その内、国施工区間(国が災害復旧を代行する区間を含む)約40kmについては、約36kmの区間において施工を完了し、おおむね29年3月末までの完了を目指している。また、復旧に期間を要する湾口防波堤についても、まちづくりや産業活動に極力支障が生じないよう、計画的に復旧を進め、おおむね31年3月末までの完了を目指している。
 これらの工事を進める際には、津波が越流した場合であっても堤防の効果が粘り強く発揮できるような構造を、可能な限り取り入れることとしており、宮城県岩沼市において堤防と一体的な盛土や植生を配置した「緑の防潮堤」を整備している。また、災害廃棄物を堤防盛土材として積極的に活用するとともに、周辺の景観や自然環境にも十分配慮することとしている。

(3)河川対策
 被災した国管理区間の河川管理施設については、被災前と同程度の安全水準を確保する本復旧工事が完了している。引き続き、本復旧工事に加えて必要な地震・津波対策を実施する。

(4)下水道
 被災した下水処理場122箇所(福島県内の避難指示区域等内に位置する7箇所を除く)については、被害が甚大であった仙台市南蒲生浄化センターが平成27年度末に復旧し、汚水の発生がない2箇所を除くすべての被災処理場120箇所が、27年度末までに通常レベルの処理まで復旧済である。また、福島県の「避難指示解除準備区域」に位置する処理場のうち、2箇所は本復旧済みである。被災した下水管680kmについては、28年3月末現在、669kmの本復旧が完了している。引き続き、復興計画と整合を図りつつ、耐震化、耐津波化の実施と合わせ、早期の復旧・復興を目指すこととしている。

(5)土砂災害対策
 阿武隈川水系等の地域における被災地の復興に不可欠な重要交通網等を保全するための土砂災害対策については、平成27年度までに完了した。引き続き、東日本大震災で土砂災害が発生した箇所等における土砂災害対策を推進していく。

(6)道路
 道路については、1)高速道路は、平成27年3月1日に全線開通した常磐自動車道について、全線開通後、多くの区間で交通量が1万台/日以上となるなど、堅調に利用が図られているとともに、福島県浜通りを中心とした常磐自動道沿線地域において企業立地の増加、雇用拡大に貢献している。さらに、追加ICの大熊IC、双葉ICについては、同年6月12日に事業化した。2)直轄国道は、24年度末までに本復旧をおおむね完了(なお、国道45号の橋梁等大規模な被災箇所については、復興計画等を踏まえて復旧)、3)復興道路・復興支援道路についてはトンネル、橋梁等の主要構造物に本格着手しており、新たに事業化した区間を含め、民間の技術力を活用した事業推進体制(事業促進PPP)を活用しつつ、工事の全面展開を図っている。震災後に事業化された復興道路・復興支援道路のうち15区間・110kmにおいて開通見通しが確定した。

(7)鉄道
 東日本大震災により被災した路線のうち、三陸鉄道については26年4月、石巻線については27年3月、仙石線については同年5月に全面復旧した。また、大船渡線及び気仙沼線については、当面の公共交通を確保するため、仮復旧としてBRT注1が運行されてきたところ、復旧方針についてハイレベルで議論するため、27年6月に国土交通副大臣を座長とする沿線自治体首長会議を開催した。同年7月の第2回会議において、JR東日本から、BRTによる本格復旧の提案があり、同年12月の第3回会議において、大船渡線については、BRTによる本格復旧の受け入れが合意され、気仙沼線については、南三陸町と登米市においてはBRTによる本格復旧を受け入れることで合意し、気仙沼市においては引き続き議論を継続することとなった。その後、28年3月に気仙沼市が受け入れを表明したことから、気仙沼線についても、BRTによる本格復旧がなされることとなった。これにより、運休区間が残っているのはJR東日本の2路線(JR山田線、常磐線)となった。
 山田線については、27年2月にJR東日本から三陸鉄道への運営移管についてJR東日本及び地元自治体等関係者が合意、同年3月に復旧工事に着手し、30年度末の復旧を目指して工事が進められているところである。
 常磐線については、27年3月に『将来的に全線で運行を再開させる』との方針を決定し、28年3月には、開通時期が明らかとなっていなかった浪江〜富岡駅間について、31年度末までの開通を目指すこととした。これにより、常磐線の全線開通の見通し注2が明らかとなった。

(8)港湾
 港湾については、産業・物流上、特に重要な港湾施設の災害復旧事業が平成26年度でおおむね完了した。引き続き湾口防波堤等の復旧を計画的に推進するとともに、経済復興の礎となる岸壁・防波堤等の港湾施設の整備を行った。海上保安庁では、東日本大震災により被災した航路標識158基のうち、復旧が完了していない16基(28年3月時点)については、今後、港湾や防波堤の復旧に合わせて復旧していくこととしている。
 また、東日本大震災により発生した災害廃棄物の処理を進めるため、仙台塩釜港石巻港区と茨城港常陸那珂港区において海面処分場を整備し、仙台塩釜港石巻港区においては、25年2月より、茨城港常陸那珂港区においては、24年7月より災害廃棄物等の埋立処分を実施した。


注1 Bus Rapid Transitの略で、バス専用道路を走行することにより通常の路線バスより速達性・定時性を向上させた交通システム
注2 JR常磐線の開通の見通し
 浜吉田〜相馬駅間…平成28年12月末までに運転再開(27年11月26日JR東日本公表)
 原ノ町〜小高駅間…2016年(平成28年)春までに開通(27年3月10日「JR常磐線の全線開通に向けた見通し等について」)
 小高〜浪江駅間…遅くとも2年後(平成29年春)の開通を目指す(同上)
 富岡〜竜田駅間…2017年(平成29年)内の開通を目差す(28年2月23日浜通りの復興に向けたJR常磐線復旧促進協議会にてJR東日本報告)
 浪江〜富岡駅間…2019年度(平成31年度)末までの開通を目指す(28年3月10日「JR常磐線の全線開通の見通しについて」)


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