第6節 領土・領海の堅守
(1)近年の現況
近年、尖閣諸島周辺海域においては、中国公船等による領海侵入や中国・台湾活動家等による領有権主張活動が発生しており、特に平成24年9月以降、中国公船が荒天の日を除きほぼ毎日接続水域を航行し、毎月3回程度の頻度で領海侵入を繰り返している。加えて、同海域では外国漁船の活動も続いている。このような状況を受け、海上保安庁では、現場海域に巡視船を配備するなどし、我が国の領土・領海を断固として守りぬくとの方針の下、事態をエスカレートさせないよう、冷静に、かつ毅然とした対応を続けている。28年2月には、尖閣諸島周辺海域における中国公船への対応に万全を期すため、大型巡視船14隻相当による尖閣領海警備専従体制を確立した。
図表II-2-6-1 尖閣領海警備専従船(巡視船たらま・いけま・いらぶ)
また、小笠原諸島周辺海域においては、26年9月以降、多数確認された中国サンゴ漁船は27年1月下旬を最後に確認されていないが、その後も、九州西方の我が国排他的経済水域において、検挙事案が発生するなど、依然として予断を許さない状況であることから、海上保安庁では、水産庁等の関係機関と連携の上、引き続き、警戒を緩めることなく厳正な監視取締りを行っている。
さらに、東シナ海等の我が国排他的経済水域においては、外国海洋調査船による我が国の同意を得ない調査活動等も確認されており、海上保安庁では、関係機関と連携しつつ、巡視船等による中止要求や継続的な監視等、その時々の状況に応じて適切に対応を行っている。
海上保安庁では、尖閣諸島周辺海域における領海警備や外国漁船取締りに万全を期すため、28年2月に尖閣専従体制を確立するとともに、離島・遠方海域を含めて全国の海上における様々な不審事象、不法行為等に隙のない十分な対応を行うため、戦略的海上保安体制の構築を着実に推進することとしている。
図表II-2-6-2 中国公船による接続水域入域・領海侵入隻数
(2)海上保安政策課程の創設
国際社会全体の平和と繁栄のためには、平成25年12月に閣議決定された「国家安全保障戦略」にうたわれているとおり、「力ではなく、法とルールが支配する海洋秩序」の強化が極めて重要である。そのため、海上保安庁が各国海上法執行機関の能力向上を効果的に支援し、相互理解を深めることが、法とルールが支配する海洋秩序の強化に大いに貢献することとなると期待されている。
このため、27年10月、海上保安庁及びアジア各国の海上保安機関の若手幹部職員を対象として、世界で初となる海上保安政策に関する修士レベルの教育を行う海上保安政策課程を開講した。
図表II-2-6-3 海上保安政策課程 開講式