■4 先手を打っての「攻め」の受入環境整備
急増する外国人旅行者を万全な体制で迎え入れるとともに、外国人旅行者が日本に来てよかったと満足して帰国し、リピーターとして再度訪日するためには、外国人旅行者の快適・円滑な移動・滞在のための環境整備を図ることが極めて重要である。
(1)宿泊施設の供給確保
訪日外国人の急増に伴い、都市部のホテルを中心として宿泊需給が逼迫する状態が続くようになったことを受け、稼働率に余裕のある旅館及び地方部への誘客を図る一環として、Wi-Fi環境の整備、宿泊施設のトイレ洋式化など、外国人を受け入れるための環境整備を図った。また、観光案内所や集客施設などにおける空室情報の提供を強化するとともに、JNTOのウェブサイトに設けた宿泊施設の総合案内サイトを通じて、外国人旅行者向けに日本の多様な宿泊施設の情報を発信した。「民泊サービス」については、平成27年11月に厚生労働省とともに「「民泊サービス」のあり方に関する検討会」を立ち上げ、28年6月中に結論を得、必要な法整備に取り組む。
(2)多言語対応・観光案内の強化
平成26年3月に策定・公表した美術館・博物館、自然公園、観光地、道路、公共交通機関など幅広い分野で共通する多言語対応ガイドラインに従って、関係省庁と連携し、表記の統一性・連続性の確保を図るための取組みを推進した。例えば、道路案内標識については、訪日外国人への適切な案内誘導のため、全国の主要観光地49拠点等において、各機関の案内看板等とも連携し、英語表記改善を推進した。加えて、道路案内標識と国土地理院が作成予定の英語版地図(100万分1)に用いる「道路関連施設」や「山等の自然地名」の英語表記の整合を図るため、各都道府県の道路標識適正化委員会において、観光関係者を含む関係機関との調整を実施した。
また、JNTOによる認定外国人観光案内所の一層の充実を図るため、働きかけの結果、27年度、すべての都道府県に広域観光情報を提供するカテゴリー2以上の外国人観光案内所が設置された。
(3)通訳案内士制度の見直し
通訳案内士制度については、地域のニーズに応えられるよう、平成27年9月に構造改革特別区域法を改正し、地域特例ガイド制度を創設、京都市や高山市などで導入された。
(4)無料公衆無線LAN環境の整備促進など、外国人旅行者向け通信環境の改善
外国人旅行者が一人歩きできる環境整備を図るため、総務省と連携して「無料公衆無線LAN整備促進協議会」を設置し、無料公衆無線LAN環境の更なる整備促進、共通シンボルマークの導入による周知・広報、認証手続の簡素化に関する取組みを推進した。併せて、平成27年12月よりSIMカードやモバイルWi-Fiルーターの利用促進を図るため、入手場所の拡大や認知向上に向けたキャンペーンを行った。
(5)外国人旅行者の安心・安全確保
外国人旅行者を受入可能で幅広い症例に対応できる医療機関について、観光庁と厚生労働省が示した要件に基づき、都道府県が選定を行った。平成28年3月にこれら約320の医療機関をリストとして取りまとめ、発信を行っている。また、外国人旅行者が医療費の不安なく治療が受けられるように、外国人旅行者が訪日後に加入可能な旅行保険の開発の働きかけを行った結果、損害保険会社において開発の取組みが進んでいる。
(6)クルーズ船の受入環境整備
外国クルーズ船社からの要望に対応して、「全国クルーズ活性化会議」と連携して、港湾施設の諸元や寄港地周辺の観光情報を一元的に発信するウェブサイトの充実を図った。また、クルーズ船社、港湾管理者等が参加する商談会を開催するとともに、「クルーズ埠頭における臨時の免税店届出制度」の活用促進等を図った。これらの取組みにより、「クルーズ100万人時代」を5年前倒して実現した。
(7)ムスリム旅行者の一層の受入促進
イスラム圏からの訪日を促進するため、「ムスリムおもてなしガイドブック」を平成27年8月に公表するとともに、ムスリム旅行者の受入れに意欲ある地域の取組みを支援した。
これらに加え、CIQ体制の強化に向けた空港や港における出入国手続の迅速化・円滑化、二次交通の充実、海外発行クレジットカードに対応したATMの設置の促進等決済環境の改善、「手ぶら観光」サービス拠点を明示するロゴマークの導入とマークを活用した拠点拡大の促進等による「手ぶら観光」の促進、災害時における訪日外国人旅行者への情報提供の充実等に取り組んだ。