追部 平成28年(2016年)熊本地震への対応

■3 被災者支援の取組み

(1)物流事業者と連携した支援物資輸送
 国が被災地方公共団体からの具体的な要請を待たないで、避難所避難者への支援を中心に必要不可欠と見込まれる物資を調達し、民間事業者の協力を得て、被災地に物資を緊急輸送する「プッシュ型支援」を実施した。
 熊本地震における物資支援では、熊本県をはじめ、物流事業者、自衛隊とも連携し、プッシュ型支援を含め263万食の食料をはじめとした支援物資の輸送が行われ、佐賀県鳥栖市及び福岡県久山町の民間の支援物資搬入拠点を経て、支援物資が各避難所等へと運び込まれた。

(2)船舶を利用した飲料水の提供や物資の輸送
 調査観測兼清掃船「海輝(かいき)」及び「海煌(かいこう)」の2隻により、2016年4月16日から同年5月2日にかけて、熊本港にて、3,583名に合計112,340リットルの飲料水を提供し、巡視船(海上保安庁)10隻も、2016年4月16日から同年5月13日にかけて、熊本港・三角港・八代港において、合計189,766リットルの飲料水を提供した。
 また、各地方整備局の船舶が、物資(飲料水、食糧、医薬品、衛生用品等)の提供のため、別府港、大分港、博多港などの九州各港に相次いで入港した。さらに、民間フェリー事業者も、熊本港可動橋そば岸壁にて合計 87,000リットルの飲料水の提供や、物資の輸送を行った。

(3)空港における捜索救難等に対する支援
 航空機による捜索救難業務を支援するため、管制業務を24時間運用注7し、災害派遣医療チーム(DMAT)輸送を含め、捜索救難業務や支援物資配送に従事する航空機(自衛隊機、米軍機、民間機貨物便)等の運航を支援した。

(4)二次的避難所の確保及び生活支援
 国土交通省は、宿泊関係団体等に対し旅館・ホテル等への被災者の受入れについての協力を要請した。同年5月16日現在では、熊本県、福岡県、佐賀県、長崎県、宮崎県、鹿児島県の旅館・ホテル等において、1,768名の受入れが決定済みとなっている。
 防衛省の事業として、防衛省がPFI方式により契約している民間船舶「はくおう」を、同年4月23日より八代港において、防衛省・自衛隊の支援の下、休養施設として、宿泊、食事、入浴サービスの提供を開始した。同年5月17日までに2,092名が利用している。国土交通省としても利用者の募集・連絡や入港等支援を実施し、取組みを支援した。さらに、熊本港・三角港・八代港にて、巡視船(海上保安庁)による6,323名に対する入浴提供を行ったほか、大型浚渫兼油回収船も三角港にて入浴提供を実施した。
 また、避難所のトイレについては、国土交通省等が巡回・点検し、不具合のあるものは応急措置を実施するなど、避難所のトイレ環境の改善を図った。

(5)建築物の応急危険度判定や宅地の危険度判定
 国土交通省は、建築物の応急危険度判定や宅地の危険度判定を行う被災自治体を支援するため、全国の地方公共団体等に対する専門家の派遣の要請や、自らの職員の派遣を行い、建築物については18市町村で54,028件の判定が実施注8(同年5月16日時点)されている。また、宅地については5市町村で15,656件が実施注9(同年5月15日時点)されている。

(6)応急的な住まいの確保
 国土交通省は、避難生活の一刻も早い解消を図るため、応急仮設住宅について、(一社)プレハブ建築協会に対し、県からの要請があり次第、速やかに対応できるよう対応準備を要請した。13市町村(西原村、甲佐町、益城町、嘉島町、宇土市、宇城市、御船町、南阿蘇村、大津町、山都町、熊本市、阿蘇市、氷川町)において1,192戸の建設に着手(同年5月16日時点)しており、市町村からの要望に応じて速やかに建設に着手予定である。
 民間賃貸住宅については、同年4月17日に、不動産業界団体に対し、被災者に対する民間賃貸住宅の情報提供等に関して必要な協力を要請した。さらに、同年5月9日に、応急仮設住宅としての民間賃貸住宅の借上げについての必要な協力を再度要請した。民間賃貸住宅の空室提供については、県からの協力要請を受けた不動産業界団体において情報提供が進められており、被災者の申し込みを受けた2,526戸が熊本県内で順次提供(同年5月16日集計)されている。
 公営住宅等については、同年4月18日に、全国の都道府県等に対し、被災者の一時的な住まいとして、公営住宅等の空き住戸の提供への協力を要請した。公営住宅等の空き住戸の提供については、全国で10,905戸(熊本県内では988戸、熊本県を含む九州全県では4,822戸)を確保し、1,025戸(熊本県内では442戸、熊本県を含む九州全県では913戸)の入居が決定している(同年5月16日集計)。


注7 熊本空港では2016年4月14日〜28日まで24時間運用。大分空港では同年4月16日〜19日まで24時間運用した後、4/22まで運用開始時間を1時間前倒し。
注8 2016年5月16日時点で6,505人・日が対応。
注9 2016年5月15日時点で2,138人・日が対応。


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