第2節 我が国のイノベーションの現状

第2節 我が国のイノベーションの現状

■1 我が国のこれまでのイノベーション政策

(1)総合科学技術・イノベーション会議
(総合科学技術・イノベーション会議)
 2001年1月の中央省庁再編に伴い、「重要政策に関する会議」の1つとして内閣府に「総合科学技術会議」が設置された。同会議は2014年5月に「総合科学技術・イノベーション会議(CSTI注6)」と改組され、イノベーション創出にかかる機能等が強化された。内閣総理大臣、科学技術・イノベーション政策担当大臣注7のリーダーシップの下、科学技術イノベーション政策の推進のための司令塔として、我が国全体の科学技術を俯瞰し、総合的かつ基本的な政策の企画立案及び総合調整を行っている。

(CSTIの任務)
 CSTIの任務として、以下のものが挙げられる。
 1)科学技術に関する基本的な政策についての調査審議
 「科学技術基本計画」(5年ごと)、「科学技術イノベーション総合戦略」(1年ごと)
 2)科学技術予算・人材の資源配分などについての調査審議
 「科学技術イノベーション総合戦略」(1年ごと)
 3)国家的に重要な研究開発の評価
 大規模研究開発の評価及びフォローアップ、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」
 4)その他の科学技術の振興に関する重要事項の決定
 「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP注8)」、「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT注9)」などの決定

(2)科学技術基本計画
 我が国では、1995年に制定された科学技術基本法の下、長期的展望を視野に入れた科学技術戦略が「科学技術基本計画」(基本計画)として5年ごと注10に策定され、科学技術の推進が図られてきた。
 経済の低迷、国際競争の激化、地球規模問題の深刻化等を背景に、2000年代後半から従来にない枠組みで新たな価値を生み出そうというイノベーション創出への期待が高まり、第3期基本計画においては「科学の発展と絶えざるイノベーションの創出」との言及がなされた。
 第4期基本計画においては、基本方針の一つとして「科学技術とイノベーション政策の一体的展開」が掲げられ、この基本方針の下、イノベーションを総合的に推進することを目的とした「科学技術イノベーション総合戦略」の策定が、2013年より毎年行われている。
 CSTIとして初めての計画である第5期基本計画においては、「科学技術イノベーション政策」を強力に推進することとされており、同計画を、政府、学界、産業界、国民といった幅広い関係者が共に実行する計画として位置付け、我が国を「世界で最もイノベーションに適した国」へと導くとされている。
 なお、この20年間の諸外国のイノベーション政策の状況を概観すると、米、英、仏などでは、1990年代後半から科学技術イノベーション政策を国の重要政策と位置付け、一層の強化を図ってきている(図表1-2-1)。
 
図表1-2-1 諸外国の科学技術イノベーション政策の変遷と動向
図表1-2-1 諸外国の科学技術イノベーション政策の変遷と動向

(3)科学技術イノベーション総合戦略
 「世界で最もイノベーションに適した国」を創り上げることが掲げられ、基本計画が示す中長期的な方向性の下、毎年度の状況変化を踏まえ、その年に特に重点を置くべき施策を示す「科学技術イノベーション総合戦略」が2013年度より毎年策定されている。この総合戦略に基づき、CSTIが司令塔となり、予算と直結した年間PDCAサイクルの実現、重要課題解決に向けた取組み、府省横断で基礎研究から事業化までを見込む「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の創設、ハイリスク・ハイインパクトなイノベーション創出を目指す「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」の創設などが実施されている。
 「科学技術イノベーション総合戦略2016」(2016年5月24日閣議決定)では、2016年度が第5期基本計画の初年度であることを踏まえ、第5期基本計画を基に、2016年度から2017年度に向けて取り組むべき施策を掲げており、その中でも、今後、特に検討を深め、具体的な実行のため特に梃子(てこ)入れすべき項目として、以下の5項目を挙げている。
 1)Society 5.0の深化と推進
 第5期基本計画で新しく掲げた概念である「Society 5.0」を初年度から強力に推進し、我が国の産業競争力の強化と社会的課題の解決を両立。
 2)若手をはじめとする人材力の強化
 3)大学改革と資金改革の一体的推進
 早急に対処しなければならない若手育成、大学改革を強化し、先行きの見通しが立ちにくい大変革時代において柔軟かつ的確に対応。
 4)オープンイノベーションの推進による人材、知、資金の好循環システムの構築
 産学官の本格的連携やベンチャー企業の創出強化を通じ、世界を先導する我が国発のイノベーションが次々と生み出されるシステムを構築。
 5)科学技術イノベーションの推進機能の強化
 司令塔機能の強化をはじめとする科学技術イノベーションの推進機能を強化し、基本計画及び本総合戦略に位置付けられた政策や施策を効果的かつ柔軟に実行。

(4)科学技術基本計画20年の実績と課題
 科学技術基本法に基づき、第1期基本計画が策定されて20年が経過した。基本計画20年の実績と課題について、第5期基本計画で述べられている内容をまとめると、以下の図の通りとなる(図表1-2-2)。
 
図表1-2-2 基本計画20年の実績と課題
図表1-2-2 基本計画20年の実績と課題


注6 Council for Science, Technology and Innovation
注7 正式には「内閣府特命担当大臣(科学技術政策)」
注8 Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program
注9 Impulsing Paradigm Change through Disruptive Technologies Program
注10 これまで、第1期(1996〜2000年度)、第2期(2001〜2005年度)、第3期(2006〜2010年度)、第4期(2011〜2015年度)の基本計画を策定し、2016年1月22日、2016〜2020年度の第5期基本計画が閣議決定された。


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