第2節 技術の進歩

コラム 「人工知能(AI)」の歴史

 「人工知能(AI)」はいつごろから存在するのでしょうか。紀元前8世紀、ギリシャの叙事詩「イーリアス」では、人間の姿をした生命体を作り出す描写があり、また、17世紀、フランスの哲学者パスカルは、19歳で機械式計算機を完成させたと言われています。初めて、「人工知能(AI)」という言葉を現在のように「人間の脳に近い機能を持ったコンピュータープログラム」と定義したのは、1956年、アメリカの計算機学者ジョン・マッカーシーでした。
 最初の「人工知能(AI)」ブームは、1960年代、アメリカやイギリスで起こりました。迷路やチェスなどの簡単なゲームをさせることができるなど様々な開発がなされましたが、人々が期待していた「現実に起きている問題を自分で解決」するまでには至らず、1970年代になると冬の時代を迎えます。
 1980年代になると、第二次「人工知能(AI)」ブームがはじまります。コンピューターが、知識を与えられ、それを元に問題解決をする「エキスパートシステム」の研究・開発が行われました。しかし、コンピューターが自ら知識を蓄えることまではできず、人間が大量の知識そのものをインプットしなければなりませんでした。
 第三次「人工知能(AI)」ブームは、2000年頃から現在まで続いています。とりわけ2010年以降は「人工知能(AI)」が自らインターネット上にあふれた膨大な情報を学習・推論する「ディープラーニング」が可能となりました。この技術により、「人工知能(AI)」は、2012年にはプロの将棋士に、2016年にはプロの囲碁棋士に勝利し、世界中の注目を浴びました。さらに、ディープラーニングを利用してアシスタント業務を行う、「AI弁護士」や「AI秘書」まで登場しています。AI弁護士は過去の膨大な判例の中から相談内容に適したものを選ぶこと、AI秘書はスケジュール管理以外にも、多くの顧客情報から過去の取引情報を見つけ出したりすることなどができます。
 現在、「人工知能(AI)」は、既に私たちのパートナーとして、医療・交通・物流・災害対策など、多岐にわたり社会全体を支えています。パソコンやスマートフォン、インターネットの普及もあり、社会の至る所に「人工知能(AI)」が浸透してきていることは、これまでのブームと大きく異なる点です。17世紀に発明された自動車が、現代の生活に欠かせないものとして存在しているように、今後、「人工知能(AI)」は、私たちの生活にとって、ますます重要なものとなるのではないでしょうか(図表I-1-2-28)。
 
図表I-1-2-28 AIを構成する分類図
図表I-1-2-28 AIを構成する分類図


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