第3節 日本人の感性(美意識)の変化

コラム 赤ちゃんの「名前ランキング」にみる日本人の感性(美意識)

 30年間続いた平成の時代が幕を閉じました。ここでは、本文の内容から少し離れて赤ちゃんの名前の変化から、平成の日本人の感性(美意識)を眺めてみたいと思います。
 明治安田生命は、その年に生まれた赤ちゃんに命名された「名前ランキング」を毎年、発表しています。それによると、例えば、1989(平成1)年から1995(平成7)年にかけて、男の子の名前の人気ベスト3は「翔太くん」、「拓也くん」、「健太くん」が占めていますが、この時期の注目すべき点として、「翔」「樹」「海」などの漢字を使うケースが増えてきたことがわかります。これらは、いずれも「自然」を連想させるものです。
 その後も、例えば、平成10年代には、「さくらちゃん」や「陽菜(ひな)ちゃん」が女の子の名前として最も人気を集め、直近の平成30年では、男の子の名前では「蓮(れん)くん」、女の子の名前では「結月(ゆづき)ちゃん」が第1位となっているなど、こうした「自然」を感じさせる命名の流れは続いています。赤ちゃんの名前には、日本人の感性(美意識)が現れているとも、とらえられるのではないでしょうか。
 過去を遡ると、元号の変わった年は、その元号から一字を取った名前がランキングの上位にくることもあったようです(正一[大正1年の1位]、昭二[昭和2年の1位])。今年は、事前に改元を行うことがわかっている非常に珍しい年ですので、新たな年号の「令」「和」の二文字はもちろんのこと、もしかすると去りゆく「平」「成」の二文字を使った名前も多くなるのかもしれません。今年、そして、これから続いていく令和という新しい時代において、人気を集めるのは一体どのような名前になるのでしょうか。
 
図表I-1-3-22 平成時代に人気のあった名前ベスト10
図表I-1-3-22 平成時代に人気のあった名前ベスト10


注 大正から昭和に元号が変わったのは、1926年12月25日であり、「昭和1年」は7日間しかなかった。


テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む