第2節 観光先進国の実現に向けた取組み

■3 すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に

(1)最先端技術を活用した革新的な出入国審査等の実現
 関係省庁と連携の下、入国審査の待ち時間を活用して個人識別情報を事前取得するバイオカートの配備空港を15空港から17空港に拡大したほか、日本人出帰国手続のための顔認証ゲートを羽田、成田、中部、関西、福岡空港に本格導入した。
 さらに、仙台など13空港に新たにボディスキャナーを導入するとともに、高性能な爆発物自動検出機器類について、成田空港をはじめ一部の主要空港等に導入した。

(2)民間のまちづくり活動等による「観光・まち一体再生」の推進
 拠点駅周辺の案内サイン、バリアフリー交通施設、歩行空間等の整備を支援し、わかりやすく使いやすい歩行空間のネットワークの構築を推進している。
 また、インバウンド需要の取り込み、都市開発の海外展開につなげるため、日本の都市の魅力の発信に係る取組みを実施した。

(3)訪日外国人旅行者受入環境整備
 公共交通機関、観光案内所等における多言語対応、無料公衆無線LAN環境の整備や公衆トイレの洋式化等に対する支援を行った。
 また、旅館・ホテル等の宿泊施設におけるインバウンド対応の取組みへの支援を実施した。
 平成30年7月より一定の条件(特殊包装等)の下、一般物品と消耗品の合計金額が5,000円以上となる場合も免税販売の対象とするとともに、外国人旅行者向け消費税免税制度について引き続き周知徹底を図り、地方も含めた消費税免税店の拡大に取り組んだ。また、地域のイベント等における特産品等の外国人旅行者への販売機会を増やし、令和元年7月より、既に消費税免税店の許可を受けている事業者が、地域のお祭り等に臨時出店する場合において、事前の手続により免税販売を可能とする制度を創設した。
 また、「道の駅」について、観光案内所の設置や無料公衆無線LAN(「道の駅」SPOT)等のインバウンド対応を促進し、地域の情報発信の拠点とする取組みを推進した。
 
図表II-3-2-1 消費税免税店数の推移
図表II-3-2-1 消費税免税店数の推移
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(4)急患等にも十分対応できる外国人患者受入体制の充実
 「訪日外国人旅行者受入れ可能な医療機関」について、平成30年度に約1,600の医療機関をリスト化し、多言語で情報発信を行った。また、引き続き外国人旅行者が医療費の不安なく治療が受けられるように、入国前・入国中・入国後の様々な段階において旅行保険への加入を促進した。

(5)「地方創生回廊」の完備
 「ジャパン・レールパス」の国内販売箇所について、平成30年7月よりJR東日本浜松町駅が、31年3月からはJR西日本の富山、三ノ宮、奈良駅が追加され59駅・空港79箇所に拡大した。
 さらに、多様な交通モードが選択可能で利用しやすい環境を創出し、人とモノの流れや地域活性化のさらなる促進のため、バスを中心とした交通モード間の接続(モーダルコネクト)の強化を推進している。28年4月に開業したバスタ新宿では、待合環境の改善及び渋滞対策として、土産ショップの設置や国道20号線の線形改良等を行った。引き続き、さらなる利便性の向上や、渋滞対策の強化を推進していく。今後計画されている品川駅及び神戸三宮駅等をはじめとして、官民連携を強化しながら、道路事業による戦略的な集約交通ターミナルの整備を展開していく。
 訪日外国人旅行者をはじめ、すべての利用者にわかりやすい道案内を実現するため、整備の進む我が国の高速道路ネットワークにおいて、路線名に併せ、高速道路に路線番号を付す「ナンバリング」を導入し、令和2年までの整備概成に向けて、各道路管理者と連携して全国的に整備を推進した。また、全国の主要観光地49拠点等において、各機関の案内看板等とも連携し、道路案内標識の英語表記改善を推進するとともに、著名な観光地や名所等において交差点名標識への観光地名称の表示を推進した。
 高速道路会社が、レンタカーを利用する訪日外国人旅行者向けに、全国の各エリアを対象とした高速道路の周遊定額パスを実施している。
 船旅に係る新サービス創出の促進を図るため、平成28年4月から3年間、「船旅活性化モデル地区」制度を設け観光利用に特化した航路の旅客船事業の制度運用を試験的に弾力化した。この結果を踏まえ、31年4月からは「インバウンド船旅振興制度」を創設し、インバウンド等の観光需要を取り込む環境整備を図っていく。
 過疎地域等における観光客の交通手段を確保するため、「自家用有償旅客運送制度」の対象を国家戦略特別区域において訪日外国人旅行者をはじめとする観光客に拡大し、30年5月より兵庫県養父市において運行が開始された。

(6)地方空港のゲートウェイ機能強化とLCC就航促進
 国際線就航を通じた訪日誘客誘致の促進のため、平成29年7月に全国27の空港を「訪日誘客支援空港」として認定し、国際線の新規就航・増便、旅客の受入環境高度化への支援等を実施している。
 このほか、日本政府観光局において、国際航空見本市へ出展し、商談を実施するとともに、新規就航・増便に合わせ、共同広告を実施した。
 また、民間の知恵と資金を活用して空港の活性化を目指すため、福岡空港、熊本空港、北海道内7空港、広島空港について、空港運営の民間委託に向けた手続き等を進めた。
 さらに、羽田空港の飛行経路の見直しや、成田空港の高速離脱誘導路等の整備、中部空港のLCC専用ターミナルの整備、福岡空港及び那覇空港の滑走路増設事業等、空港発着容量拡大等の取組みを進めた。

(7)クルーズ船受入の更なる拡充
 観光ビジョンに掲げた「訪日クルーズ旅客を2020年に500万人」という目標の実現のため、既存ストックを活用して大型クルーズ船を受け入れるための係船柱、防舷材等の整備を行うとともに、クルーズ旅客の利便性、安全性の確保等を図る事業を行う地方公共団体等に対する補助制度(国際クルーズ旅客受入機能高度化事業)を活用し、クルーズ船寄港の「お断りゼロ」に向けた取組みを行った。
 また、国土交通大臣が指定した港湾において、旅客施設等を整備し一般公衆の利用に供する民間事業者に対し、岸壁の優先使用などを認める協定制度を創設し、平成29年度までに指定した6港に加え、30年6月に1港(鹿児島港)を指定した。
 さらに、インドネシアにおける現地旅行会社等を対象としたセミナーや、上質な寄港地観光プログラムの造成を促進するためのクルーズ船社と寄港地側関係者の意見交換会及び「全国クルーズ活性化会議」と連携したクルーズ船社と港湾管理者等との商談会を開催したほか、港湾施設の諸元や寄港地周辺の観光情報を一元的に発信するウェブサイトの充実を図った。

(8)公共交通利用環境の革新
 全国の公共交通機関に係る経路探索の充実に向けて、バス事業者と経路探索事業者との間で簡単にデータの受け渡しが可能となるよう定めた「標準的なバス情報フォーマット」に、バスの遅延情報・運行情報等の動的データを追加した。
 訪日外国人旅行者のニーズが多い、鉄道車両の無料Wi-Fiについて、平成30年5月からのJR東日本の東北新幹線を皮切りに、すべての新幹線でサービスを開始した。また、バスナンバリングが既に導入された系統の改善及び未導入系統における導入促進に向け、同年2月に設置した関係者からなる検討会において議論を実施した。また、訪日外国人旅行者を含めたすべてのバス利用者にとってわかりやすいバスの利用環境を整備するため、平成30年10月に「乗合バスの運行系統のナンバリング等に関するガイドライン」を策定した。
 タクシーについて、アプリを活用し30年10月から11月にかけて需要に応じて迎車料金が変わる変動迎車料金、30年10月から31年2月にかけて事業者が利用可能区域、利用回数等の条件を定めた上で、条件の範囲内で一定期間、定額で乗り放題とする運賃の実証実験を実施した。
 訪日外国人旅行者が鉄道等で大きな荷物を持ち運ぶ不便を解消するため、空港・駅等で荷物の一時預かり、空港・ホテル・海外の自宅等へ荷物を配送する手ぶら観光を推進した。(「手ぶら観光」共通ロゴマークの認定数:31年3月末現在296箇所)
 平成30年4月に「外国人観光旅客の来訪の促進等による国際観光の振興に関する法律」の一部改正法が公布され、公共交通事業者等に努力義務として課されていた多言語による情報提供促進措置が拡充され、Wi-Fi整備、トイレの洋式化等、幅広いニーズへの対応を促す観点から、新たに外国人観光旅客利便増進措置が定められた。

(9)2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けたユニバーサルデザインの推進
 平成29年2月に決定した「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づき、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の確実な成功及びその先を見据え、大規模駅等のバリアフリーの高度化に取り組むとともに、全国各地における高い水準のバリアフリー化、心のバリアフリーを推進していくこととされた。これに関連して、30年5月、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、必要な政省令等を公布した(30年11月1日施行。ただし、一部の規定は31年4月1日施行。)。
 空港では、旅客ターミナルビル毎に数値目標を設定しており、成田空港及び羽田空港国際線ターミナルではすべてのトイレにフラッシュライトを設置した。
 バス・タクシーのバリアフリー車両導入促進を図ったほか、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会関連駅へのエレベーターの増設やホームドアの整備などのバリアフリー化について支援した。
 また、旅館・ホテル等の宿泊施設におけるバリアフリー化への改修の支援を実施するとともに、「宿泊施設におけるバリアフリー情報発信のためのマニュアル」を作成・公表した。
 さらに、28年1月に東京都内における「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた道路標識改善の取組方針」を、同年9月に千葉、埼玉、神奈川県内における同様の取組方針を策定した。これらの取組方針に基づき、英語表記改善、路線番号の活用、ピクトグラム・反転文字の活用、通称名表記・文字サイズ拡大、歩行者系標識の充実等による道路標識の改善に取り組んだ。アクセシブルルートを含む競技会場周辺の道路についても、連続的・面的なユニバーサルデザイン化を推進した。


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